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第22話 愛したかった人

「ごめんね、急に時間作ってもらっちゃって。」


「ううん全然!えりかの頼みなら、何なりと。それで、話って何かな?何か仕事のこと?」


「えっとね。突然で申し訳ないけど、私たち別れたいなと思って。」

 生活感のない、モデルルームのような広い部屋を静寂が包む。


「え……。なんで?何か気に障ることあった?意味分かんないんだけど。」


 まぁ、そりゃそうなるよな。

「付き合うときに話したと思うんだけど、昔結婚を考えた人がいて。その人と偶然再会したんだよね、つい先日。別にまた付き合うとかそういうことではないんたけど、今何をするにもあなたと比べてしまって……。心が浮ついているから、今までみたいにあなたに接することができない。」


 ガバっ。急に抱き留められる。


「元彼の話は聞いてたけど、もう7年も前の話でしょ?会ったって言ったけどなんで?ってか、俺の方が良いって思わない普通?もう1年半も付き合ってんだよ?

 記憶が美化されてるだけだって。最初は結婚しなくて良いって言ったけど、付き合ってるうちに変わるって思うのが普通じゃない?

 そうだよ。結婚しちゃえば、そんな奴のこと忘れられるって。」


 きつく抱かれて、ちょっと痛い。


「偶然、テレビ局で会ったのよ。

 記憶は美化されていると思うわ。でもごめんなさい。あなたと結婚を考えたことは一度もないわ。」


「美化されてないそいつと俺なら、俺を選ぶでしょ。

 一度も……って、それはひどくない?いい感じで付き合ってきてた気がするんだけど。

 それにあのドラマのファンの子たちの間でも俺たちカップルって人気あるからさ、結婚したらみんなに祝福されるよ。結婚生活もきっと楽しいって。子ども作って、休みの日は旅行に行って。」


「ちょっと痛いわ。離して。」


 彼は首を横に振って離してくれず、体を弄られる。


「たしかに、この1年半楽しかったわ。

 でも、これは私の気持ちなの。ファンがどうこうとかは関係ない。あなたの言うように、7年ぶりに再会してこんな気持ちになるなんて思いもしなかったから申し訳ないとは思うけど、あなたとは結婚できないしこれ以上関係を続けることもできない。」


 そう言って、力いっぱいに彼を押した。離れた彼氏の表情は、驚きに満ちていた。


「結婚については分かったよ。でも、今は久々に元彼に会って動揺してるんでしょ?また忘れていくだろうし、もう会うこともないんだろ?じゃあ別れる必要ないじゃん。」


「ごめんなさい。今触られて、はっきりと分かったわ。私が愛しているのはあなたじゃないって。私が逢いたいのはあなたじゃないって。

 今までありがとう。さようなら。」


 彼は、もう何も言わなくなった。私は荷物を持って部屋を出た。

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