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第21話 モトカレとイマカレ

 ピンポーン。

 都内のタワーマンション。彼氏の住んでいる部屋だ。

「いらっしゃい。待ってたよ。」


「遅くなってごめんね。ちょっと道が混んでて。」


「ううん全然。大変だったね。お疲れ様。」



 付き合ってからもうすぐ1年半になる。ドラマで共演して、別にカップル役とかではなかったが私がヒロインで、彼が主人公を取り巻く別のカップルの彼氏役だった。


 それ以前にも共演したことがあり、最初は顔見知り程度だったけど待ち時間とかで一緒になることが多く、徐々に仲良くなっていった。

 ドラマがクランクアップした後も共演者同士仲良くなったこともあり、飲み会で顔を合わせることがしばしばあった。


 何となく、彼から好意を寄せられていることは分かっていた。だから彼に2人での食事を誘われたとき、付き合ってもいいかなというつもりで行った。長いこと彼氏がいなくて寂しい気持ちがなかったといえば嘘になるし、いい加減、夕のことを忘れなきゃっていう思いもあった。


 ホテルの高層階にあるレストランの個室で食事をし、その場で告白された。彼は1つ歳下だったけど、大人で何もかもスマートだった。女性はそういう風にリードされたら、自然とOKを出しやすい生き物だと思う。


 ただ私は結婚はしないと心に決めていたので、それでもいいならと答え、彼がそれに応じたので告白を受けた。

 お互い事務所にも報告し、その少し後に週刊誌に撮られるというわりときれいな流れで交際は始まった。


 交際自体は、わりと順調だったと思う。私自身久しぶりの恋愛で、彼氏のことは好きだったしお互い芸能人だからあまり出かけられないけど、それぞれの部屋でまったり過ごしたりたまに旅行したりした。撮影期間はラインしたり電話したりで、心が離れることもなかった。


 そんな時間を過ごしながら、結婚に対する考えは変わらなかったけど、夕と比べることもなかった。


 でも先日のあの再会で、せき止めていた夕への思いが一気に溢れ出してしまった。あの日あの楽屋で、私の心が、求めている人は今の彼氏ではないと、目の前にいる彼だと叫んでいた。


 このままでは彼氏の前で今までのように笑っていられないと、今日は別れを告げに来た。今の状態だと、浮気をしているのと何ら変わりがない。

 元彼が忘れられなくて今彼を振るなんて、100人中100人から止められそうな決断を私は今からしようとしている。しかも、相手は顔も性格も申し分ない人気俳優だ。それでも、私の気持ちは変わらない。

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