第20話 120点
エピローグ
あの日、夕暮れに染まる教室で。
ガラガラ。
え?先生だ。
私は部活が急に休みになったから友だちと帰りに遊びに行こうって約束をしていて、彼女を待つため一人教室に残っていた。
「田中、どうした?早く帰れよー。」
「先生忘れ物ですか?」
「おぅ。」
先生は、授業が終わるとすぐ出ていってしまうし他のクラスの子にも人気があったから、校内で一人でいるところをほとんど見たことがなかった。
これを逃すと、もうチャンスは巡ってこないかもしれない。瞬時にではあったが、ずっと温めていた想いを伝えようと思った。私は、教室を出ていこうとする先生を通せんぼする格好となった。
「先生。私、先生のことが好きです。落ち着いている雰囲気も顔も、授業も好きです。こういうの迷惑なのは分かってるけど、あと一年で卒業するから、それまで我慢するから卒業後にデートしてください。」
先生は、驚くのも束の間すぐに口を開いた。
「そっか、ありがとう。でもごめんな。まず生徒とは恋愛できないっていうか、そういう目では見れない。仕事だから。
あと先生、忘れられない人がいるんだ。その人のこと、一生忘れられないと思う。不器用で心のスペースがせまいから他の人のことを考えるすき間はないんだ……ってごめんな、急な自分語りして。
恥ずかしいことさせるなよ、問題児。」
そっか。先生好きな人いるんだ。
「こんな優等生に向かって失礼です。」
「どこが優等生だ。告白する勇気があるなら、別の場面でも勇気みせたらどうだ?先生、これでも心配してるぞ。」
最近、愛弓とギクシャクしてることを言ってるんだろう。そっちはまだチャンスがあると思っちゃって、なかなか勇気が出せないのだ。
「じゃ、また明日な。宿題のとこ当てるかもだからちゃんと勉強もしろよ。」
そう言い残して、先生が出ていく。
あっさりフラレちゃったなー。まぁこうなることは予想してたけど、やっぱり辛いは辛いな。こんなとき、愛弓にぶち撒けられたら少しは楽だったのかな。
帰り道、結局友だちとは遊ばずに一人で大盛りのパフェを平らげて、家で失恋ソングを聴きながらめちゃくちゃ泣いた。
「先生、1年間お世話になりました。」
離任式の日、2回目の二人きりのチャンスが訪れた。
「転校されるの、さびしいです。」
「俺もさびしいなー。みんなの卒業まで見届けたかったわ。」
「残念です。私たちも先生に送り出されたかったのに……。こっちが送り出すのは不本意です。」
「何その政治家みたいな話し方(笑)」
「インテリなんで(笑)最後に、先生に1つ聞いてもいいですか?」
「何?答えられることなら。」
「私、男見る目ありますよね?何点くれますか?」
「テストではあげれなかった120点、差し上げます。じゃ、元気でな。」
そう言って、先生は微笑んだ。
先生、あなたよりもちょっぴりいい男掴まえましたよ。どの科目よりも高得点を取った私の結婚相手に、間違いはない。




