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第1話 会いたい人

「今、会いたい人はいますか?」


 バラエティ番組の打ち合わせでスタッフさんにそう聞かれた瞬間、私−徳山とくやま 愛弓あゆみはある人を思い出した。高校2年生のとき、担任だった先生。


 別に密かに恋心を抱いていただとか、アイドルになる夢があった私の背中を押してくれただとか、そういうわけではない。高校3年生の時は自習の時間が大半で、大学もに進まなかった私にとって最後の先生とも呼べる彼は、特筆すべきことは何もないような至って普通のいい先生だった。

 でも私は週に1度、先生が色んな話をしてくれるホームルームが大好きだった。人柄がよく出ていたあのホームルームで聞いたことは、高校を卒業してからも何度も私を支えてくれた。


「高校2年生のときの担任の先生なんですけど、卒業してから一度もお会いしたことがなくて……。連絡先も分からないんですけど探していただくことってできますか?」


「もちろんです。責任を持ってお探しします。その方とのエピソードなどはおありですか?」


 当時のホームルームでのこと、そして先生のお名前や知っている情報をお伝えし打ち合わせを終えた。



「この前打ち合わせした番組から、その後何か連絡ありました?」

 マネージャーさんに聞いてみる。

「まだきてないです。異動とか転職とかで、探すの苦労されているのかもしれません。

 ちなみに、探せなかった場合他に会いたい人っていますか?」


 うーん。申し訳ないが全く思いつかない。先生のときはパッと思い浮かんだのに。


「これはあるあるですけど、疎遠になった友だちとかお世話になったご近所さんとか。」


「いやー、頑張れば思い出せないことはない気がするんですけど、先生じゃないともしお会いできたときにいいリアクションが取れる気がしないです。」


 探し出せたとして、会えるかどうかは分からない。スタジオまで来てくれた場合はその場で対面できるが、来られなかった場合は手紙などが読まれるらしい。


「だから、スタッフさんにはご苦労おかけすることになりますけどもう少し待ってみたいと思います。無理だと連絡が入ったらまた教えてください。そのときは、別の人を考えるので。」



 スタッフさんから連絡があったと聞いたのはそれから間もなくしてのことだった。

「見つかるには見つかったみたいなんだけどちょっと状況が複雑みたいで、もう一度打ち合わせしたいってことなんだけどどうかな?」


 私は二つ返事でOKし、数日後マネージャーさんとともに再度スタッフさんの待つテレビ局へと向かった。

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