第18話 結婚できなかった人
「素敵ね。私もこの仕事始める前までは、心のどこかで結婚というものに憧れていたわ。できないまま三十路迎えちゃったけどね。」
「先輩ならいつだってできますよ!私、先輩以上に素敵な女性知らないですもん。」
「ありがとう。あゆちゃんは理想のタイプとかってある?」
「うーん。私は、何か応援したくなる部分を持ってる人がいいです。」
「何か夢を追ってる人ってこと?」
「そんな大層な夢追い人じゃなくていいです。人知れず日々何かを頑張っている人とか誰かのために嫌なこともやって懸命に生きている人とか、そういう人です。」
「というとスポーツ選手か……ベンチャー企業の社長さん?」
「からかわないでください(笑)たしかにアイドルご出身の方々、そういうとこ行きがちですけど。」
「行きがちって(笑)ごめんごめん。すごくいいね。それだけ具体的に語れるんだから、きっといい結婚ができると思うよ。お姉さん祈ってるね。」
「うれしいです。アイドルを始めたのも誰かを応援したいなって、ファンの人の力になりたいなって、そこが出発点でした。
高2のとき、収録のときにも言ったんですけどホームルームで、自己紹介の代わりに先生が私を紹介してくださったんです。
私はこの人生でアイドルになりたいと、そう書きました。本音だけど、私的には結構突拍子もないことを書いたつもりでした。
先生はそれを茶化すでもなく応援するでもなく、ただ一言『なれるよ。』って言ってくれたんです。もちろん色んな人に支えられてここまできたけど、アイドルを目指すうえで背中を押すとはまた違って、そっと寄り添ってくれた言葉でした。
ごめんなさい。何か長々自分語りしてしまって。」
「ううん。素敵な話。私一人が聞くにはもったいないわ。
でも、私が結婚したくて結婚できなかった人。その人柄がよく出ていると思う。
結婚相手って人生の伴走者というか、そんなイメージなんだけど、彼とならそれこそ病めるときも健やかなるときも生きていけるって思ってた。彼は、私がしんどいとき背中を押してこなかった。一緒に立ち止まってくれた。
今の彼氏はいつもポジティブで、私が落ち込んでいると『大丈夫。えりかならやれるよ。俺はそういうとこも好きだよ。』っていう言葉をくれる。ほんと理想の彼氏。でも、だから結婚したいとはならないんだと思う。夫婦になったら、いつか私は取り残されてしまうような気がするから……。
なーんてね。長話の仕返し。」
そう言って、先輩はイタズラな笑みを浮かべた。




