第13話 空の青さ
「先生、今日は遠いところを来ていただいてありがとうございました。徳山さん、最後に何か言っておきたいことある?」
と、MCの方がやさしく振ってくださる。
「折角の機会だよ。」
「次いつ会えるか分からないよ。」
周りの人も背中を押してくれる。
「私、実は先生の離任式を体調不良で欠席してしまって。もう会えなくなるなんて思わないまま転校してしまわれたので、すっごく心残りだったんです。」
先生は高3に上がる春、他校へと離任された。私が離任式を休んだために、最後のお別れもできないままだった。
「なので、今日はお会いできて本当に幸せでした。だいぶ伝えるのが遅くなりましたが、あの1年間ほんとにお世話になりました。今の私があるのは先生のおかげです。
気軽にお会いできる距離ではないですが、また同窓会とかするときは声かけるので絶対来てください!」
収録後。
先生たち一般の方の楽屋は個人部屋ではなく大部屋だったので、申し訳ないがマネージャーさんに言って先生に楽屋へと来てもらった。収録はあっという間だったので、できなかった話や近況とかをもっと聞きたかった。
トントン。
これから先生と話そうというときに扉がノックされる。
「はーい。」
誰だろう?スタッフさんかな?マネージャーさんが出てくれる。
「失礼します……って、お邪魔だった?」
スタッフさんではなく宮手先輩だった。さっきお話したのに、どうしたんだろ?
「いえ、全然です。どうかされました?」
「ごめんね。愛弓ちゃんというより、そっちの先生に用があって。」
「え?」
「実はね、私も彼と知り合いなの。もちろん私の先生ではないよ(笑)大学の先輩なんだ。」
「えーーー!」
うそ。憧れの先生と先輩がお知り合いだなんて。しかもスクールメイト。
「すっごい偶然ですね!驚きませんでした?」
「そりゃあもう、倒れるかと思ったわ。
お久しぶりです、先輩。お元気そうで何よりです。」
「久しぶり。おかげさまでぼちぼちやってるよ。」
「先輩は今日私と会うこと知ってたんですね、いけずな人だ。」
「一応出演者さんが誰か教えてもらっていたから。自分から聞いたわけじゃないし、そんな責めないでよ。」
「いいですけど……。
それはそうと、長崎にいるだなんて、なんでまたそんな遠くに?」
私も、それは気になっていた。教師を続けるなら東京でも良かっんじゃないか、って。
「これ言うと誰にも分かってもらえないけど……。なんていうか、空が青かったからかな。」
「五島列島の空がですか?」
と、私が尋ねる。行ったことはないけど、空がきれいな場所だっていう印象だ。
「いや東京の空がでしょ?」
なぜか、先輩が答えた。先生も頷いている。同じ楽屋にいるはずなのに何だか私だけが違う空間にいるような、そんな錯覚すら起こしそうになる。




