第12話 星降る夜に
GWのデートは、私が前から気になっていた植物園に行った。楽しんでくれるかなと一抹の不安はあったけど、彼も自然が好きみたいで早々にその不安はかき消えた。
写真を撮ったり園内でお茶したり、定番というか牧歌的というか、そんな時間だった。こういうのを幸せっていうんだろなーというのは、ちょっと背伸びしてみた感想だ。
まだお互いに遠慮もありつつ、そういうのも初々しい感じで良かったしいつか気の置けない関係になっていくのかな、なったらいいなと妄想するのも楽しかった。
その日以来、彼とは何度もデートを重ねた。
回数を重ねる度に身を委ねられるようになったし、過信ではなく彼からも身を預けられているような感覚になった。
ご飯に行くだけでも普段以上に化粧を頑張る私は、紛れもなく一人の恋する大学生だった。
丸一日のデートの終わりかけであっても私の買った重い荷物を嫌な顔一つせずに持ってくれる彼は、紛れもなく恋する大学生だった。
そんなこんなしているうちに、季節はすっかり夏へと移っていった。
『七夕のお祭りがあるみたいなんだけど、一緒に行かない?』ある日、彼から届いたライン。
ちょうど同じ日に規模は小さいが花火大会があったので、一瞬そっちの方がいいなと返信しかける。でも七夕祭りの方がなんだか私たちっぽいなと思い直し、打ちかけの文章を削除した。
お祭りは、こじんまりしたものだった。出店が並び短冊が飾れて……そんな絵に描いたような七夕の催しだった。
何より晴れていたのが良かった。
「七夕祭りって、子どもの頃以来かも。」
「俺も。願い事とか書いてたのが懐かしいよ。」
いくつか出店を回って買い食いしたり石段に座ってお喋りしたり、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
「そろそろ帰りましょうか。」
帰り道。花火大会なら混み合っている中、手の一つでも繋げたかもしれないのに……とちょっぴり後悔した。彼を見るとすごい満足そうな表情で、それもちょっと気に食わない。
「まだ時間大丈夫かな?足疲れてない?」
まだ今日は終わらないのね。ちょっと期待してしまう私。
「そりゃ疲れてますけど、それを理由に今から言うことやめないでください。」
「分かった分かった(笑)じゃあ、こっち行こ。」
そう言って彼は私の手を取り、坂道の方へ向かって歩き出した。繋がれた手が、じんじんする。
「せっかく天気の良い七夕だから、ここに来たらきれいな天の川が見られるんじゃないかなーって。」
そこは、少し登ったところにある小さな見晴らし台だった。空一面の星がまるで降り注ぐような、美しい景色だった。
「田舎でもないのにこんなに星がみられるんですね。きゃー、ロマンチックー。」
急にいい雰囲気になり、高まる鼓動を隠したくて、手の熱を隠したくて、おどけてみる。
でも、彼は逃がしてくれなかった。
「えりか、好きです。付き合ってください。」
彼の射るような視線が目に刺さる。私は、気恥ずかしさとうれしさとで声が出なかった。それならばと、私は震える手を彼の首に回す。星降る夜に交わした、私たちのファーストキス。
これからも、そしてこの先もきっとたくさんの出会いがあるのだろう。その中で、この出会いは奇跡のように私たちに降り注いだ。おそらくこの生涯で、二度と起きないであろうという感覚が、私たちの間にたしかにあった。




