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第11話 甘夏食堂

「俺もバイト終わりでお腹減ってるんだ。ご飯でも行く?」


「行きたいです!何食べたいですか?」


「後輩が働いてる定食屋が近くにあって、結構おいしいんだ。そことかどうかな?」


「ぜひ!行ってみたいです!」


 お店へと向かう坂道で、自己紹介をした。彼は学年的には2つ上で、1年間浪人しているから歳は3つ上だった。文学部に通っていて、サークルは前に聞いたとおりテニス。小学生の頃からやっているそうだ。


 そんな彼の第一印象は、『木みたいな人』だった。そんなに活発なタイプではないけど同じ大学生とは思えないほどとっても落ち着いていて、そしていつもそこにいてくれるような、離れていかないような、そんな安心感のある人。

 後に彼から『ウッド系の香りが好き』と聞いたとき、『でしょうね。』と言って変な子だなみたいな顔をされたのは、また別のお話。


「いらっしゃいませ!あ、先輩じゃないですか。

お連れ様も、こちらのカウンター席にどうぞ。」


 甘夏食堂。

 店内はお世辞にも広いとは言えないが、内装のデザインや店員さんの笑顔も相まって、何とも言えないあたたかみのある食堂だ。店内から漂うお出汁の香りに思わず食欲をそそられる。

 そういえば、あの店員さんどこかで見たことあるような……。


「後輩さんですか?私、学部で彼女を見かけたことある気がするんですけど。」


「そうそう。2個下の代……で法学部だからちょうど同期じゃない?」


「やっぱり!はじめまして。もり 早矢香さやかっていいます。教室で見かけたことあります。女子少ないし仲良くしましょー!」


「ぜひ!今度一緒に授業受けましょ。」



 森さんは、ほんと見たまんまというか根っから明るい子で、私たちはすぐに仲良くなった。裏表がないから、いまだに彼女には何でも話せちゃう。

 そして彼女は、私と彼の数少ない共通の友人だ。



 食堂からの帰り道。


「美味しかったです!今日はごちそうさまでした。」

 それまで全く喋ったことのなかった彼との初めてのご飯は、とても楽しい時間になった。定食も美味しかったし会話も弾み、初めてとは思えないほどに何だかしっくりときた。

 うぬぼれではなく、彼もそう感じていたんじゃないかと思う。


「美味しかったね。いいえ、こちらから誘ったし。

また一緒にご飯か、出かけるかしたいな。」


「いいですね!先輩はGWこっちにいますか?」


「うん。宮手さんは?」


「私も暇してるんで、どこかで1日デートしださい!」

若さゆえの勢いなのか、断られたら……なんてそのときは思わなかった。


「デート、いいね。行こう。

また行きたいところ考えておくね。」


「いや、私行きたいところあるのでまかせてください!先輩はお財布だけ持ってきてください(笑)」


「おぅ……初デートでフラれないように中身ちゃんと確かめていくわ。」


 その後は連絡先を交換して、解散した。

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