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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第三章
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「チェックメイトォオオォ!!」


 海に落ちている『プラトニックラブ』の本を拾いながらふと気がついた。


「一冊はおっさ……いや、少年を助けてくれた男性の物だけど。もう一冊は誰の本だろう??」


「別に……誰の物でもいんじゃね? 穴があいた本なんて返ってきてもどうしようもないしさぁ」


 マタメンテエルフは俺にそう言うと、落ちているもう一冊の穴のあいた本を真剣な眼差しで見つめている。


「まるで俺の心みたいだ……」


「んっ? 何か言ったか??」


「何でもねーよ」


 珍しくあまり喋らない。さっきの復活の呪文とやらを発動して疲れたのかな??マタメンテエルフはもう一冊の本をかかえて持ち上げた。


「お前、そういえばもう大丈夫なの??」


「あぁ、心配させて悪かったな。平気平気!!大丈夫大丈夫!! ほれ、これは心配させたお礼だ」


 そう言いながらマタメンテエルフはニヤニヤしながら俺に何かを渡してきた。


「……」


「ほら、疲れただろう?? 遠慮はいらないぞ??」


「ダブルホイップクリームパンじゃーねか!! ふざけんなよ!! これ以上食えるか!!」


 前言撤回……やっぱりいつものマタメンテエルフだったわ!!ダブルホイップクリームパン見たらちょっとお腹が痛くなってきた気がするし!!トラウマレベルだわ!!

 それにしても……この本どうしようかなぁ。


「この本……持ち主の大事な本かもしれないしなぁ」


「くどいな。落としたか忘れたかって思うっしょ!! だいたい穴あいてる本なんて……」


「なおせばいいんだろ?」


「えっ?」


 キョトンのしているマタメンテエルフを尻目に、俺は穴のあいた本とダブルホイップクリームパンを錬金釜に入れた。


「ほら!! お前のもかせよ!!」


「へっ!? なんでわかったんだ??」


「……何、言ってんだ? その本だよ!!」


「あっ……本。そっか、そういう事ね」


 なんか変に焦っているマタメンテエルフから本を受け取ると、その本も一緒に課金ブーストして錬金してみる事にした。うまくいくといいんだけど……。


「なぁ、チート。課金ブースト使って大丈夫なの?」


「あぁ。人助けで何百回って課金ブースト使ったしな。今更一回分課金が増えたってどうって事ないよ!!」


「まぁ……確かに今更だよな」


 マタメンテエルフとしゃべっていたらものの数分で錬金が完了した様だった。


「おぉー!! すげ〜!! ちゃんと元通りだし、むしろ新品みたいだぜ!! ピカピカ!!」


「……」


「どした??」


 マタメンテエルフがまたしゃべらなくなってしまった。まだバグってんのかなぁ??それともやっぱ疲れてんのか??


「どうもしねーよ!! ほらっ!! 一冊よこせ!!」


 マタメンテエルフは本をぶん取ると、比較的綺麗な場所に本を置いた。その後、何ページか本をめくりはじめる。


「すげぇ!! 本当に全部なおってる。 さすがチートだわ」


 そう言いながら何故か凄く嬉しそう。……何がそんなに嬉しいんだろ。よく……わからないな。


「チート殿!! チート殿!! 私はこの後一体どうすればいいのだ??」


 声のする方を向いたら、少年を抱えたチャカさんが困った顔をして質問してきた。……まぁ、確かにどうすればいいかわからないよね。訳わからない状態だった訳だし。


「もう大丈夫だからどこか綺麗そうな場所に少年を寝かせてやってくれる?? 後、この本を少し先にいる男性に渡してきて欲しいんだ。まだちょっと動けなくて……」


「ふむ、了解した!!」


 チャカさんは法衣を一枚脱いで浜辺に敷いた後、その上に少年を寝かせた。その後、本を持って男性の元に向かっていった。


「チートさん!! 大丈夫?? 怪我はない??」


「あぁ。うん……大丈夫だよ!!」


「なんかよくわかんない内にバグの根源いなくなっちゃった!!」


「うんうん。俺もなんか気持ち的にそんな感じ……」


 地雷さんもあまりの出来事に頭が追いついてないみたいだな。……そういえばラスボスさんはどうしたんだろう?


「地雷さん……ラスボスさんは??」


「なんか用事思い出したから帰るって。そうそう!! チートさんによろしくって言ってたよ」


 魔王だし……あんまり表に出過ぎるといけないとかあるのかな??それにしてもホント助かった……。


「あの……チートさん」


「……んっ?」


「よかったら肩を……貸しましょうか??」


「……」


 地雷さんは頬を赤らめてモジモジしている。まだ、マンドラゴラの効果続いてるんだな。マンドラゴラの効果っていつ消えるんだろ??

 まぁ〜……正直、疲れと食い過ぎで動けないし……お言葉に甘えようかな!!


「ありがとう地雷さん!! この先にチャカさんがいるからそこまでお願い出来るかな??」


「おっ……オッケー!!」


 こうしてちょっとドギマギしている地雷さんの肩を借りながら、俺はチャカさんのいる方に向かった。男性にぶつかってしまった事を謝らなければ……。

 しばらく歩いていると、男性の声が聞こえてきた。


「あのっ!! お礼がしたいんです!! 今度一緒にお茶でも行きませんか??」


「……んっ? 私とか??」


 えっ!?ナンパしてる??しかも相手はチャカさん!?おっさん……チャカさんみたいなのがタイプだったのか。


「チェックメイトォオオォ!!」


 後ろにいたマタメンテエルフがふざけてチャカさんの真似をし始めた。まぁ……確かにおっさんの心をブチ抜いた訳だけど。

 とりあえず、二人の邪魔はしてはいけない。俺達はそのまま事の成り行きを見守る事にした。チャカさん……なんて返事するんだろ??


「すまんが……旦那がいるんだ。悪いな」


「あっ、そうなんですか……。それは失礼しました」


 ……旦那!?チャカさんって結婚してたの!?そんな話する機会もなかったし、わからなくて当然か!!

 それにしても……おっさんショックうけてる顔してるな。まぁ〜仕方ないよね、こればっかりは。相手いるんだもん。


「チェックメイトォオオォ!!」


 またふざけてマタメンテエルフがチャカさんの真似をしている。まったくこいつは……。


「おいおい! おっさんは傷心しているんだぞ?? そんな事言っちゃ……」


「『おっさん』って言ってるぞ?」


「あっ……」


 ――マタメンテエルフにツッコミを入れられた瞬間!!突然、叫び声が聞こえた。


「そんなぁあああぁあああーーー!!」


「えっ!? 何、何、なに??」


 隣にいた地雷さんが突然叫び出した。そんな大きな声で叫んだら二人に聞こえちゃうよ!!しかもめっちゃ耳元で叫ばれたから耳がキーーンってなって凄く痛い……。


「チャカさんは……こっち側の人だと思ってたのにぃいいい!! ちくしょーー!!」


「……」


 なんだかよくわかんないけど……地雷さん、多分それ、チャカさんにめっちゃ失礼!!自覚なさそうだけど……。


「ふざけんな〜〜!! リア充爆発しろっ!! うわぁあああぁああ〜ん!!」


「……」


 地雷さんは叫びながら崩れ落ちた。爆弾娘だけに……爆発しろ!!……ってか??それにしても、地雷さんもショック受けるなんて。

 俺はやっちゃいけないって思ってはいたんだけど、ついつい悪ノリで言ってしまった。


「チェックメイトォオオォ!!」


読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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