いざ!!韋駄天大会!?
「地雷さん?? 流石に買いすぎなんじゃない??」
「いやいやいやいや! チートさん! 備えあれば憂いなし! 地雷の心の安定の為にも沢山買っておかなくちゃ」
「……そうか」
いよいよ韋駄天大会の日がやってきた。やれる事はやってきたし……後は全力で戦うだけだ。正直、不安がないと言ったら嘘になるが……やるしかない!!
「大丈夫かな!? 足が震えてきた……」
「地雷さん!! 大丈夫大丈夫!! 気楽にいこう!!」
「……でも。やっぱり怖いよ〜〜」
地雷さんは凄く緊張していた。まぁ……戦いが始まって身体を動かせば緊張は少しずつ取れてくるとは思うけど。
彼女は自分を落ち着かせる為に、食堂にある売店でクリームパンをしこたま買い占めていた。
「そんなにリックサックにクリームパンを詰めたら、下に入ってるパンが潰れちゃうんじゃ……」
「大丈夫!! 美味しい事にはかわりはない!!」
「そっ……そっか」
ペルソナさんが言ってたんだっけ??『ラッキーアイテムはクリームパン』だと……。でも、限度ってものがあるんじゃ……。
「チート殿!! おはよう!! 地雷殿は何をしているのだ??」
「あっ、チャカさん!! おはよ〜!! なんかラッキーアイテムがクリームパンなんだって。だから、ゲン担ぎみたいな……」
「おぉ!! なるほど!!」
チャカさんも来たし、後は神ヒーラーのパンツkids少年だけだな。よし……もう一回、アイテムの見直しをしておこう!!
俺がそう思ってアイテムを一つ一つ確認していると、ひどく慌てた顔をした少年が現れた。なんだか……本当に余裕がなくて険しい顔だ。
「おいっ!! 大変なんだ!! ちょっと来てくれ!!」
「キャーーー!! 裸だわ!!」
食堂にいた生徒達が騒ぎ始める。……まぁ、キラキラした学院にパンツ一丁の少年が来たらちょっとびっくりするよね。
「なになに!? どうした??」
「とりあえず何も言わず付いてきてくれ!!」
少年は俺の腕を強引に掴むと思いきり引っ張った。呆気にとられたまま、少年の後に付いていく。俺の後を追いかける様にマタメンテエルフや地雷さん、チャカさんも付いてきた。
なんだか焦ってるみたいだけど、韋駄天大会の時間も近いし……大丈夫かな??
「なぁ……そんなに急いでどこ行くの??」
「海岸だ!!」
「海岸……??」
海岸に行って、韋駄天大会の時間に間に合うかな??多分……ギリギリになりそうだけど。まぁ……走って戻れば大丈夫かな??
そんな事を思っている間に、海岸に着いた。
「…………なんだ?? これは??」
「みんな意識不明の状態で倒れているんだ。戦闘不能状態と一緒だから蘇生魔法じゃないと対応出来ない」
「……マジか!?」
海岸には軽く見て何百人という人達が浜辺に突っ伏して倒れている状態だ。浜辺一杯にプレイヤーが倒れてひしめきあっている。
「……後は頼んだ」
「……えっ!?」
少年はその後、俺にそう告げると蘇生魔法を片っ端からかけはじめた。どう考えても少年一人で手に負えるレベルではない。
「チートさん!! どうしよう!?」
「チート殿!! 私は蘇生魔法はつかえない……」
「おい!! チート!! なんとかしろ!!」
「……」
付いてきた三人は俺に口々に言うけど……俺だってどうしたらいいかわからないよ!!とりあえずわかっている事は、このままプレイヤー達をそのままにしたらまずいって事だ。現実世界に影響が出る事だってあるかもしれない。
「えっと……落ち着こう。まず、学院の生徒達に闇雲に知らせるのはまずいと思う。きっとパニックになる。だから学院の偉い人……学院長に知らせよう」
「その必要はない!!」
後ろから声が聞こえて来たと思ったら、ヒゲを生やしたダンディな男の人が現れた。
「はじめまして!! 私がその学院長だ!!」
「おぉお!! 助かった……」
ナイスタイミングで学院長に出会ったな。まるで予想してたみたいに……。まぁ、いい!!確か学院長って冒険者としても名高い設定だったはずだ。蘇生魔法の類いも使えるかもしれない!!
そんな事を考えていると、淡々と学院長は喋り出した。
「それにしても……ここまで預言通りになるとはね」
「……預言通り??」
「あぁ……学院にピンチが訪れる時!! 伝説の転校生が救ってくれると!! 私は蘇生魔法も使えないし……助かった!! やはりあのリュウという占い師の言う通りだった」
ちょっと待って!?どこまでがイベントシナリオで、どこまでがイレギュラーなハプニング扱いになってる訳??やばい……訳、わかんなくなってきた。
「あの……その占い師のリュウさんって!! 私のフレンドのリュウさんの事ですか?? それともコスプレ大好きのペルソナの事ですか??」
「……うん?? どういう事だい??」
「あの……ちょっと静かにして貰っていいですか!!」
学院長に預言したのが本人だったか、偽物だったかなんてこの際どうでもいい!!……それよりも、この現状をなんとかしなければ!!
そんな事を考えていると、学院長は地雷さんの方を向いて静かに言った。
「頼んだぞ!! 伝説の地雷戦士!!」
「……へっ??」
何を言っているかよくわかっていない地雷さんは、ポカンとした表情のまま固まってしまった。
学院長は呆然とする俺達を横目に、魔法の詠唱をはじめた様だった。なんの魔法をかけるつもりだ??魔法は海岸一帯に広がり、薄いベールの様な膜になった。
「生徒達は韋駄天大会の方に集中して集まっている。好都合だ!!……だが、万一という事もある。他の人にはただの海岸に見える様に弾幕の魔法をはっておこう!!」
なるほど。確かに周りから見て普通の海岸に見えるならわざわざ海岸に来る人は少ないだろう。
「では!! 地雷戦士!! 後は任せた!!」
「…………えっ??」
目を丸くして地雷さんは学院長を見る。学院長はさわやかな笑顔を浮かべたまま……海岸から消えていった。
「……マジかよ」
「……」
「……」
……あんのクソジジイ!!俺達に丸投げしていきやがった!!どう考えたって無茶ブリだろっ!!
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