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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第三章
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特訓再開


「きたか……今朝も……」


 俺は一枚の手紙を床から拾い上げると複雑な想いを抱きながら封を開けた。


『愛しのチート様へ』


 そう書かれており、その後甘ったるいポエム調の長文が続いている。なんていうか、読んでいるこちらが恥ずかしくなってくる様な内容だ。なんとなくモザイクをかけてあげたい……。


「凄いな。恋する乙女のパワーは……」


 手紙は二、三日に一回のペースで届けられた。俺の部屋の床下に、ドアの隙間から差し込まれる。宛先人は毎回書かれてはいないが……文面からすると地雷さんだろう。


「なんていうか……やっぱちょっと罪悪感が……」


 俺がポツリと独り言を言うと、明るいノリノリの感じでマタメンテエルフの声が聞こえてきた。


「まぁまぁ、仕方ないっしょ!! 毎回特訓も頑張ってくれてるし、結果オーライ!!」


「……はぁ」


 まぁ、俺に恋してるのはマンドラゴラの効果であって。それがなければ恋心なんてないんだろうけどさ!!男ではあるけど、嫁の姿だし。だからそっと……俺の心の中だけにしまっておこう。


「おい!! ボーっとしてると訓練遅れるぞ!!」


「おぉ!! 急がないと……」


 足早に訓練所に向かうと、もう門の前に地雷さんが待っていてくれていた。


「あっ!! チートさん!! おはよう!!」


「おはよ〜!!」


 毎朝、学院の授業が始まる前と放課後に特訓する事になっていた。朝練と部活みたいな感じだ。あんなに嫌がっていたのに地雷さんは休まず特訓を頑張る様になった。


「地雷さん!! 前に突っ込みすぎ!! 体力がなくなったら距離をとって!!」


「……わかった!!」


 訓練所では特訓用のモンスターと戦う事が出来る。地雷さんと二人で特訓する事もあれば、チャカさんやパンツkids少年(そういえば名前聞いてないな……)と一緒に訓練する事もあった。

 でも、地雷さん以外とはなかなかタイミングあわないから二人でやる事が多かった。……まぁ、仕方ないよね。


「うぅ……もう、ダメ……」


「地雷さん!! あと少し踏ん張って!! 今、回復するから!!」


 お世話にもやはり地雷さんは戦い方が上手とは言えない。敵に猪の様に突っ込んでいく傾向がある。回復補助やバフ、デバフ効果をつけながら自らも敵の体力を削る火力としての役割が必要になる。


「うぅ……忙しいな……」


「チートさん!! ごめん!! ありがとう!!」


「オケ!! 気にしないで〜!! 訓練に集中!!」


 正直……やる事は多いし危うい部分もあったりはするけれど、なんとかやれている感じだ。

 俺は錬金釜を使って優秀なアイテムを作る事が出来る利点を使って『アイテムの範囲化』というスキルをとった。要するに俺がアイテムを使用すると、ある一定の範囲にいる近くの味方にもアイテム効果を届ける事が出来るスキルだ。底上げスキルには『アイテムの効果率アップ』スキルを優先的に選んだ。

 こうして俺は無駄なく効率的なスキルを選び、味方をフォローしながら戦うスタイルに落ち着いた。ただ……。


「なんで回復効果のあるものが魔法か食べ物なんだ??」


「チートさん??」


 普通RPGの戦闘中の回復方法ってさ。魔法とか回復薬とかじゃない??だいたい……このゲームのメインの方は回復薬の設定だし。やっぱり恋愛ゲームで学院って設定だからパンとかクッキーとか……そういう設定のがイメージにあうからかな??


「甘い!! 凄い……あっま!!」


「チートさん!! 口にクリームついてるよ!!」


 まさか戦闘中にパンをかじったり、クッキーかじったりする事になるとは思わなかったな……。やたら地雷さんが体力なくなるからクリームパンをひたすら食べて口の中がパサパサする……。


「あぁ……お茶飲みたい……」


「大丈夫?? でもなんかかわいいかも!!」


 男で女の子にかわいいって言われてもなぁ……。まぁ、今、嫁の姿だけどさ……。

 やたら食べ物を食べなくてはいけない為『早食い』というスキルもとってしまった。……出来るなら違う所にスキルを振りたいが仕方ない。食べ過ぎで太らないか心配だ。


「ほれ!! チート!! お茶!!」


「……ありがとう」


 マタメンテエルフが俺に冷たいお茶を差し出す。動いた後ってスポーツ飲料飲みたくなるイメージだけど……やたら甘いものばかり食べるからお茶が欲しくなる。

 まぁ……甘いもの嫌いじゃないし、韋駄天大会が終わるまでの事だから辛抱するか。


「ふぅ……ちょっと休憩しようか?? 俺、ちょっと外の空気吸ってくるね」


「うん!! わかった〜!!」


 俺は地雷さんとマタメンテエルフに声をかけると訓練所の外に出た。外に出ると冷たい風があたって気持ちいい。


「あぁ〜……疲れたぁああぁ〜〜〜!!」


 動きすぎて疲れているのか、甘いものの食べ過ぎで胃が疲れているのか、問題児ばかり相手にしてて精神的に疲れているのか……もう、俺にはよくわからない。


「はぁ……戻るか。訓練所……」


 訓練所の扉を開けると、凄い勢いで回転しながらはしゃいでいる地雷さんが目に入った。


「あぁ〜!! お代官様〜!! あ〜れ〜!!」


「ギャハハハハ!!」


 呆気にとられて様子を見ていると、どうやら腰に紐を巻きつけて二人で遊んでいる様だ。長い紐をぐるぐる腰に巻きつけた後、思いっきり引っ張って回転させるらしい。


「簀巻きみたい!!」


「あはは!! 簀巻き!! 簀巻き!!」


「……なぁ、一体、何してんだ??」


 俺が二人に声をかけると、ちょっとびっくりした感じで俺の顔を見た。やっぱり俺に気付いてなかったか。

 ちょっとした沈黙の後、マタメンテエルフが明るい声で俺の質問に答えた。


「何って見ればわかるだろ!? 悪代官ごっこだよ!!」


「悪代官ごっこ??」


 まったく意味がわからん……。時代劇でもやるつもりなのか??まぁ、休憩中に何したっていいけど……。

 なぜか地雷さんが焦った感じで俺に言い訳をはじめた。


「違うんです! 違うんですこれは! チートさん!!」


「違う??」


「えっと……これは……そう!! 三半規管を鍛えているんです!! 三半規管を鍛える訓練です!!」


「三半規管……」


 そんなもん鍛えてどうすんだ??鍛えるならもっと違う所鍛えてくれ〜〜〜!!あぁ〜ぁああぁ〜またなんかドッと疲れてきたぁあああぁぁ!!

 

読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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