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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第三章
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チート、一分クッキング1


 教会に入り、その中の一つの扉を開けて入ると、沢山のエプロン姿の人達が調理場で料理を作っていた。魚を焼いていた人が扉の方を向くとチャカさんに声をかける。

 

「チャカ、おかえり! 噂のチートさん連れてきた??」


「うん! バッチリだよ!!」


 どうやら最初から俺に頼る気満々だったらしい。まぁ、特に用事がある訳でもないし料理が嫌いな訳でもないからいいけど。でも俺が現実世界に帰る目的からドンドンずれていくんだよなぁ……。


「お願い、チートさん!! チャカが担当していたスープを作ってくれる? レシピは机の上に置いてあるから〜」


 小さなお皿に料理を盛り付けている女の人が、忙しそうに俺に声をかけてきた。


「あっ、わかりました〜」


 俺が返事をすると、続けて説明をはじめた。


「大きい鍋がそんなにないから、何回かにわけて作らないといけないと思う!! よろしくねーー!!」


 そう言うと女の人は盛り付け作業が忙しいのか静かになってしまった。多分、繊細な作業で神経をつかうから喋れないのだろう。


「どれどれ……レシピを見てみるか」


 レシピを見てみると、それ程難しくもなく俺にも出来そうな感じだった。


「でも、大きいサイズの鍋がない。困ったな……」


 調理器具が置いてある所を探してみたけど、中サイズの鍋しかない。俺が困っていると自信満々でマタメンテエルフが言った。


「安心しろよ! ほらっ!!」


――ボンッ!!


 凄く大きくなった錬金釜が現れた。なんだコレ!!でかすぎだろ!!本当に何でもアリだよな。毎回毎回。


「うわぁ〜大きい!! 錬金釜、こんなに大きくなる事も出来るんだねぇ!!」


「あぁ、そうみたいだな。なんかもう……段々驚かなくなってきたよ」


 地雷さんが錬金釜をジロジロ見ている間に、俺はレシピに書いてある材料を集めはじめた。野菜とか肉とか……あとは調味料を少々……。


「とりあえず、こんなもんかな。おい、マタメンテエルフ!! 野菜を洗ってくれ!!」


「えっ!? 俺もやるの!?」


「当たり前だろ!!」


 俺が言うとマタメンテエルフは渋々と野菜を洗い始めた。身体が小さい為、野菜を大きく感じるみたいで大変そうだけど、しっかり働いてもらおう。


「地雷さん、野菜とか肉とかを切ってくれる?? 俺も一緒にやるから!!」


「わかった〜!!」


 地雷さんは野菜を切りはじめた。スピードはゆっくりではあるけれども、一応一通りは包丁を使えるみたいでよかった。


「チート殿! 私は……私は、何をやればよいのだ??」 


 キラキラした瞳でチャカさんがこちらを見つめてくる。野菜を切ってたら、なぜか爆発した!!……なんて事はないとは思うけど。用心するに越した事はないかなぁ〜。


「大きい鍋が足りないから海で釣ってきてくれないか?」


「わかった!!」


 チャカさんは置いてあった投げ槍な釣り竿を担ぐと、意気揚々と扉に向かっていった。


「鍋が釣れたら拳銃で鍋の強度も調べてくれ!! 穴が空いたら大変だ!!」


 俺がチャカさんに向かって叫ぶと、元気のいい声で返事を返してくれた。


「おぉおぉおおぉ!! わかった!! では鍋の中央を狙って命中率も上げてこよう!!」


「えっ!? あっ……うん。頼んだよ〜」


 今、このタイミングで命中率は関係ないと思うんだけど……まぁ、話が長くなるからその事については触れないでおこう。

 チャカさんを海に送り出した後、淡々と材料を切って錬金釜に入れ続ける。


「よし!! 肉とか野菜はこんなもんかな? 後は調味料と水を入れて……っと」


 材料を入れ終わった後に気付いたけど……錬金釜だから完成するのは二日後になるのか??


「なぁ……錬金になるから出来上がりは二日後になってしまうんじゃないか?」


 俺が不安な顔をしてマタメンテエルフに尋ねると、マタメンテエルフはニヤリと笑いながら答えた。


「これは錬金ではなく料理だ。よって錬金作業には該当しないのさ。まぁ〜簡単に言うと、電気圧力鍋みたいなもんだな」


「錬金釜なのにそんな事まで出来るのかよ。なんでもアリすぎて俺……もう理解が追いつかないわ。でもまぁ、安心したよ。二日もかかったら式に間に合わないだろうし」


 そう言って蓋を閉めたら自動的に調理が開始された。中からボコボコ材料を煮詰めている音が聞こえる。ボタン操作とかしてないけど大丈夫なのか??時間の設定とかもしてないし……。


――ピピピピピピピ!!


「おい!! 錬金釜から音がするぞ」


「あぁ。もう出来たんじゃないか??」


「はぁあああぁああ!? 一分しかたってないのに!?」


 俺がマタメンテエルフと漫才みたいな会話をしてる間に、錬金釜の蓋が自動的に開いた。中から美味しそうな匂いが漂ってくる。スープが出来た様だ。


「わぁ!! 美味しそう!!」


 地雷さんがおたまでスープをすくって味見をはじめた。


「……なにこれ!! めっちゃおいしい!!」


「待て待て!! 流石に一分じゃ野菜とか肉が煮えてないんじゃないのか!?」


 俺は不安になって鍋から具材を取り出した。いくら圧力鍋っていったって普通は一分じゃ出来ないだろ!?だいたい鍋の圧力が抜けるのに時間がかかるんだ。


「嘘だろ……煮えてる。凄い美味い」


「おいおいお前……これはただの圧力鍋じゃねーんだぞ? 知ってるだろ??」


 呆れた顔でマタメンテエルフがつぶやく。神の力を使える錬金釜って……偉大だな。現実世界でも欲しいくらいだ。


「とりあえず他の鍋に移し変えるか」


 あっ、そういえば大きいサイズの鍋ないんだった。ある意味チャカさんに鍋を頼んでおいて正解だったな。

 そんな事を思っていると、錬金釜の蓋が自動的に閉まった。


「あれっ?? 蓋が勝手に閉まっちゃったよ〜」


 地雷さんがつぶやいた後、再度錬金釜の蓋が開いた。なんと中身が空になっている。


「おい!! 中身がなくなったぞ!?」


「えっ……そんな筈はないだろ??」


 皆で不安がっていると、再び錬金釜の蓋が自動的に閉まり、何秒か後に再び蓋が開いた。


「あれっ……スープ戻ってる!!」


「これはあれだ!! 一つの鍋……いや、錬金釜の中に沢山の料理をストックしておけるって事だ!!」


「なんだその便利機能」


 マジで現実世界でも欲しくなってきた。料理って時間もかかるし、後片付けも大変だったりするからなぁ〜。


「こうなるとスープも作り終えてしまったし、暇になってしまったな……。他に手伝える事はあるんだろうか??」


「誰かに聞いてみれば??」


 俺は盛り付け作業をしていた女の人に声をかけた。盛り付け作業に夢中でちょっと気がひけるけど。


「すみません。あの〜……スープ出来たんですけど」


 俺が言うと視線は料理に向けたままつぶやいた。


「そう……ありがとう。……って、えぇえぇぇえ!? そんな訳ないでしょ!! だってまだそんなに時間たってないじゃない!!」


 女の人はびっくりして俺の顔を見る。……まぁ、それが普通の反応だよね。


「まぁ……普通はそう思いますよね」


 おれは一言そう言うとスープの入っている錬金釜を差し出した。


「いやいや流石に出来てる訳ないでしょ〜?? ちゃんと煮えてるのぉ??」


 苦笑いをしながら女の人が錬金釜から具材と汁を小さなお皿に移すと味見をし始めた。……すると、びっくりした顔をしながらつぶやいた。


「……なにこれ?? ちゃんと煮えてるし、美味しい」


 女の人はしばらく呆然としながら立ち尽くしていた。まぁ……理解が追いつかないよね。俺だって追いついてないもん。


読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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