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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第一章
8/125

憧れの大怪盗


 スーパーアイドル、ミユキはある防具鍛冶がいる店へと向かった。街外れにある小さなお店だ。店の扉を開けると一人の男が彼女を待っていた。


「よぅ! あいかわらず元気そうだな!! 俺と熱い夜を過ごす気になったか??」


「名前みたいに世界から抹消されないといいですね。バンさん……」


「つれないなぁ〜ミユキは〜」


 軽い冗談(?)を言っていると二階から足音が聞こえてきた。紫色の髪をした美しい女性が顔を出す。


「こんばんは! お久しぶりです。ミユキさん」


 その後、バンの方を向いて言い放つ。


「4ね!!」


 ここは表向きはバンが営む防具鍛冶の店だが、裏は訳ありの何でも屋となっている。



「じゃあ、仕事の話をしようか……」


 バンの表情が変わる。


「依頼人はルノールという男だ。大切にしている聖剣が盗まれたらしい。盗んだ奴の検討はついてる……。きっと聖剣の美しさに魅了されてしまったのだろうな……」


「……ちょっと待って。聖剣ってあの伝説の?? 持ち主がピンチの時に神の力を使う事が出来るってあの有名な??」


「……そうらしい。本物か偽物かは俺にはわからないが」


「一種の都市伝説って言われるくらい聖剣については謎に包まれているけど……。まぁ、わかったわ! 盗んだ人の為にも、依頼人のためにも、その依頼は私が引き受けましょう」

 

「お前ならそう言うと思ったぜ!! 報酬も依頼人がたんまりくれそうだし、頼んだぜ!!」


 依頼を受け、ミユキは店から出た。

 


 ◇

 

 

 『ルノールの美術品』って新しいお店が出来た。有名な芸術家が作る芸術品の数々を購入する事が出来るらしい。 

 地雷はセンスのカケラもないのであまり興味もなかったがフレ(友達)が行きたいというの付いて行った。


 街の中でひときわ電気がピカピカしてて派手で悪趣味……じゃなかった。個性的な佇まいの店だった。

 中に入ると、悪趣味な佇まいのわりに綺麗な髪飾りやブローチ、装飾品が沢山売られていた。間違いなく店の外観で損をしている。


「いらっしゃい! うちに置いてあるものは世界に二つとない物だけなんだ。君だけの世界に一つだけの物をぜひ見つけてくれ」


 言っている事はまともだが、格好と態度がちょっとおかしい店主が話しかけてきた。服装が派手!!原色シマシマの服着てて笑顔が気持ち悪い。ニタニタニタニタしててなんだかゾッとした。

 この店は外観と店主で損をしている!絶対!!


「あっ、ありがとうございますぅ……」


 フレと後退りしながら挨拶を返す。

 ロングヘアのそるとちゃんに髪飾りでもプレゼントしようかなぁ〜ってお店をキョロキョロしてたら、壁際に一際目をひくクリスタルの剣を見つけた。


「凄い綺麗な剣……」


「あぁ、この剣は声剣なんだ。綺麗でしょ?」


「……聖剣!?」


 フレがびっくりする。……なんだ?聖剣って??


「この剣が欲しいです! いくらですか??」


「ごめんね、これは飾り物で売り物じゃないんだ……」


「……そこをなんとか」


 珍しくフレが食いついている。こんなに欲しいなら売ってあげて欲しいけどやっぱりダメみたい。

 がっかりうなだれるフレ……。なんだかちょっとかわいそうになった。

 

「もういいよ! 帰ろ帰ろ!」


 フレを半強制的に店から追い出す。


「あんな気持ち悪い店主が売ってるものなんてロクなものじゃないよ!!」

 

 フレを元気づけたけどあんまり効果がなかった。

 


 後日、地雷はフレの家に遊びに行った。そして見てしまったのだ。あの悪趣味な店にあった聖剣がなぜかここにある……。

 ちょっと転んで机にあたってしまった時に布に巻かれていた聖剣の柄らしきものが見えた。

 まさかと思って好奇心で覗いてしまった。


 とりあえず素材を買いに行っているフレが戻って来る前に布に巻いて元に戻しておいた。

 

 店に置いてあるものは世界に一つだけのものだとあの店主は言っていた。

 ……きっと盗んでしまったんだろう。


「どうしよう……」


 結局、フレが戻ってきた後もその事を言い出せなかった。

 ……でも、聖剣はやっぱり返すべきだと思う。


 人は手に入らない物を欲しがる。恋人だったり、お金だったり、力だったり。でも、そういうのを手に入れている人だってそれなりの努力をしている。だから……盗むなんて事はしてはいけないんだ。

 ……わかってはいるけど。羨ましく思ってしまう気持ちもわかるから、どうにか穏便に事を進めたい。

 

 地雷は考えに考えた。そして……フレの家に入り、聖剣を盗み、こっそり店主に返す事にした。

 そるとちゃんが知ったら激怒するだろうな……。



 夜になってフレの家の前まで来た。フレが今冒険に出かけているのは知っている。これはフレの為、これはフレの為、これはフレの為……。

 わかってはいるけど足がすくんだ。ガクガクと震える。


 ――そんな時だ


「こんばんは! 何をしてるの?」

 

 びっくりした!!普通、こんな時間に人なんかいない。フレの家に入る前でよかった……。

 声の方を向くと……そこには世間で有名な大怪盗フロストがいた!!


「大怪盗フロスト!? うそぉ!!」


 つい叫んでしまった。本当にいるなんて……。

 大怪盗フロストの手には、あの聖剣があった。


「あなたが狙っているこの剣は私が貰っていくわ。あなたはこんな事でその手を汚してはいけない。その為に私がいるのだから……」


「その剣をどこに持っていくの?」


「あるべき所に返すだけよ」


 地雷はホッとした。そして、怪盗って凄いなって思った。


「怪盗って凄いね。私は何も出来ない……」


 そしたら彼女は不敵の笑みを浮かべながら、優しい声色でこう言った。


「そんな事ないわ。あなたは私の心を盗んだのだから……」


 ???

 地雷は言っている意味がわからなかった。



 大怪盗フロストに会ってから数日たった。ちゃんと聖剣が戻っているか気になって、あの悪趣味な店の近くに来てみたけど、なんだか一人だと入りずらい……。

 どうしようかなって思っていたらフレが強張った表情で店を見上げていた。

 ……きっと色々思う事があるんだろう。


「やっほー! 地雷、そるとちゃんの髪飾り買いに来たの! 一緒に入ろう!!」


 フレと一緒にお店に入った。聖剣がちゃんと戻っているか気になって店内を見回すが……聖剣はなかった。


「やぁ、よく来たね! いらっしゃい!」


 ニタニタしながら店主が話しかけてきた。この人は普通に話す事が出来ないんだろうか……。



「……ごめんなさい」


 ずっと静かだったフレが泣きながらつぶやいた。店主の顔を見てもう我慢出来なかったんだろう……。


「私はあの聖剣がどうしても欲しくて……それで……」


「あっ、コレ??」


 気持ち悪い店主がカウンターから出てくる。腰には、あの聖剣がささっていた。


「……えっ? えっ??」


 フレは困惑している。……そりゃそうだ。自分が盗んだはずの聖剣が戻っているんだから。

 間髪いれず気持ち悪い店主がしゃべり続ける。


「そぉ〜んなにこの声剣欲しい? まぁ、便利だしね!!」


 ……便利??強いからって事か??


 店主は聖剣を腰から抜き取ると剣の裏側を見せた。よく見ると小さいボタンがついている。

 店主はそのボタンを何回か押した。


「そぉ〜んなにこの声剣欲しい? まぁ、便利だしね!!」


「そぉ〜んなにこの声剣欲しい? まぁ、便利だしね!!」


「そぉ〜んなにこの声剣欲しい? まぁ、便利だしね!!」


 綺麗な剣から気持ち悪い声が響いてくる……。なんだか残念な気持ちになった。聖剣じゃなくて声剣かよ……。

 店主は気がすんだのか声剣を腰に収めた。


「僕、そのうちプリンスコンテストに出るんだけど、時期的に体調崩して声が出ない時があって……。その時に自己PRを録音しようかと思ってねぇ〜。あはは〜」


 プリンスコンテスト!?変人コンテストじゃなくて!!?まず、鏡を見てから考えた方がいいと思うが……。それでも駄目なら目ん玉を拭くべきだ。

 

 フレは複雑な気持ちで下を向いていた。そのフレを見て、店主はニヤニヤニヤニヤしている。なんだろう……この店主。なんか腹立つなぁ……。

 むしゃくしゃしたので店主の足のすねを蹴った。


「あ〜。足が滑った〜」


「ぎゃっ!!」


 もやしみたいな店主が、何回もジャンプしている。そしてよろけてカウンターに横から激突した。その衝撃で声剣がポキッと折れた。


「あぁああー!! 声剣がぁああぁあー!!」


 声剣よっわ……。


 

読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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