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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第三章
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結婚式のお手伝い


 地雷さんが自分の部屋から出てこなくなった。失恋の痛みから抜け出せないのか、ゾーンとやらが来て小説を書いているのかわからないが……どうしたもんか。

 自分の部屋でそんな事を考えていたら扉をノックする音が聞こえた。一体、誰だ??


――コンコン!!


「私だ!! チャカだ!!」


「……どうぞ〜」


 チャカさんか。一体、どうしたんだろう??扉を開けるとチャカさんが困った顔をして立っている。


「どうしたの?」


「折り入って話がある」


「うん?」


「ちょっと頼みがあって……」


 部屋に招き入れると、なんだかモジモジして言いづらそうな雰囲気だ。大丈夫かな……??思わずこちらから声をかけた。


「なんか困ってるの?」


「実は……近い内に教会で結婚式があるんだ」


「おぉ!! それはめでたい!!」


 教会で結婚式って女の子の理想だもんな〜。でも、そんなめでたい話なのに何を困っているんだ??俺が不思議そうな顔をしていると、チャカさんはゆっくり話始めた。


「……実は、結婚式の料理の材料調達を任されていたんだが」


「うんうん」


「最近……拳銃で遊ぶのが楽しくて!! その事をすっかり忘れていて……」


「おぉ……う……」


 ……読めたぞ。


「頼む!! 期日が迫っているんだが間に合いそうにない!! 協力してくれ!!」 


「協力って!? 出来る事ならいいけど……」


 材料調達なんてゲーム世界の話だし、一体どうすりゃいいんだよ!?


「とりあえずチート殿には魚類を調達して欲しいのだ!」


「魚!?」


 ゲーム世界の魚ってどこで調達すればいいの!?どっかで買うとか!?でも……魚屋なんてあったか??


「魚を購入出来る店とかで買えばいいのか? 売ってる場所知らないけど……」


「店はあるそうなんだが、かなり遠い所に店があるらしくて。しかも必要な魚が揃っているかどうかわからない」


「まじか……」


「なのでチート殿に頼もうと思ったのだ!!」


「……」


 この子は俺を便利屋かなんかと勘違いしているのではないか??そんなに何でも『問題解決〜♪』って出来る訳じゃないぞ……。

 どうしようか困っていると、ひょんな所からお馴染みの声が聞こえてきた。


「魚なら……釣ればいいんじゃね?」


 突然錬金釜が空中から現れて、中からマタメンテエルフが顔を出した。


「釣るっていったって、釣り竿ないし……」


「作ればいいじゃん!!」


「あっ……」


 マタメンテエルフが錬金釜をコンコン叩く。錬金すればいいって言っている様だ。でも、釣り竿なんて作れるのかよ……。


「金属の紐なら俺が持ってるから、あとは長い棒でも見つければ……」


「なるほど。ちょっと待っててくれ」


 チャカさんはバタバタと部屋を出ていって、程なくして手に槍を持って戻ってきた。そういえば最近、槍を使っている所を見なくなったな……。


「これを使ってくれ」


「槍!? いいのか??」


「構わない」


 まぁ、最近あんまり使ってないみたいだしな。俺は槍を受け取ると、錬金釜からマタメンテエルフを追い出した。受け取った槍を錬金釜に入れると、槍は不思議と錬金釜に飲み込まれていく……。


「相変わらず底なしだな……」


「でも、二日かかってしまうのでは??」


「課金ブーストするから問題ないよ」


「おぉ!! ありがたい!!」


 課金ブーストっていうのは、現実世界のお金の力を使って錬金にかかる時間を短くする事だ。通常なら二日かかる所を、すぐに錬金完了する事が出来る。俺のお小遣いがちょっと減る事にはなるけど……まぁ、一回、二回ぐらいなら問題ないだろう。


「ほらっ、出来たぞ」


「……おぉ!! なんていうかコレは……」


「槍……だな」


 槍と釣り竿が一緒になったみたいな……謎の釣り竿が誕生した。持ち主が投げ槍だった為なのか、出来栄えも投げ槍な感じに落ち着いた。


「まぁ……魚釣れるならなんでもいいか」


「では、チート殿!! 頼んだ!! 他の材料も調達しなくてはいけなくて……すまないがこれにて失礼する!!」


 チャカさんはそう言うと凄い勢いで部屋から出ていった。ありゃ、相当切羽詰まってんな……他にも調達しなきゃならない物があるんだろう。


「さてと。じゃあ、行くかな。一緒に来るかはわからないけど、地雷さんも誘ってみよう」


「暇だし、俺も行く〜」


 暇してるマタメンテエルフを連れて、地雷さんの部屋の前に行く。扉を二、三回ノックしてから、地雷さんに声をかけた。


「地雷さん! 気分転換に釣りでも行かないか??」


「ごめん。ちょっと気分じゃなくて……」


 扉の前から落ち込んでいる声が聞こえた。失恋がこたえているのかな??そっとしておいてやるか……。扉から離れようとした時、マタメンテエルフが叫んだ。


「あぁ〜あ!! イケメン釣れるかも知れないのに!! イケメンがいるかも知れないのに……残念だなぁぁ!!」


 次の瞬間!!勢いよく扉が開いた。


――バンッ!!


「イケメンがいるなら行く!!」


「……」


 マタメンテエルフよ。イケメンなんて、一体何処にいるんだよ……。地雷さんもイケメンには敏感だな。

 でもまぁ……部屋から出てきたしいいか。地雷さんも外に出て気分転換した方がいいし……。複雑な気持ちを隠しながら、俺は地雷さんに話しかけた。


「イケメン……いるといいな!!」


「うんうん!!」


 イケメンはいないかもしれないけど、まぁ……新しい出会いが待っているかもしれないし、そこに期待って事にしようかな……。そう思いながら俺は話を続ける。


「まぁ……あれだよ、失恋を癒すのは新しい恋っていうしさ!! 前向きにいこう!!」


「わかった!!」


 なんていうか……地雷さんは素直だな。人間だから気分の上がり下がりはあるだろうけど、少しずつでも前を向いていってほしい。


「では、イケメンの元に出発ーー!!」


「あぁ……海岸に向かって、出発〜!!」


 海岸に着いて誰もいない事を知ったら地雷さんは絶望するんじゃないか??まぁ〜着いた時に考えるか……。どうしようもないしな……。


読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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