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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第二章
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愛は伝わる(もう一人のライルside)


「ねぇ……本当に大丈夫??」


 心配そうに地雷戦士が僕に声をかける。


「大丈夫です。色々、ありがとうございました。無事、彼女も落ち着きましたし……後は、僕と彼女の問題です」


 そう言うと地雷戦士は、安心して笑顔を見せながら僕に言った。


「そっかそっか!! 了解、了解!!」


「彼女にあなたを会わせる事が出来て、本当に良かったです……」


 そう言ったらなんだか少し寂しくなった。これでもう、懐かしい仲間達とはお別れになってしまう。彼女の事で頭が一杯だったので再会の喜びも束の間だったが……みんなに会えて本当に良かった。寂しいが、本来なら会う事も出来ない人達だ。良しとするべきであろう。


「久しぶりに皆さんに会えて良かったです。どうか皆さん、身体には気をつけてどうぞ幸せに……」


 なんだかしんみりした感じで言ってしまったら、地雷戦士が僕の肩をバンバン叩いた。


「ちょっと何しんみり言っちゃってんのーー!! 大丈夫、大丈夫!! 私達は離れてても大事な仲間よ〜!!」


 後ろでレストさんとぽたんさんも笑っていた。どんなに離れていても、僕達が仲間である事には変わりはない。


「そうですね。しんみりはやめましょう。帰りはその傘を使って帰って下さい」


「傘を使って??」


 地雷戦士はスティックになっている傘を見つめた。


「はい。その傘をパラシュートの様に使って船を降りる事が出来ます」


「おぉおおおーーー!! そんな使い方がっ!!」


「三人で手を繋いで降りれば大丈夫です」


「……なるほど」


 地雷戦士は傘を見ながらうなずいていたが、ある事を思い出して僕に問いかけた。


「ちょっと待って!! うちのライルンは??」


 あっ……忘れていた。


「大丈夫です。後で蹴り飛ば……いえ、僕が無事に帰しておきます」


「わかった!! 自分自身だし、大丈夫そうだね!!」


 僕達の話が終わった後、彼女が僕の後ろからおずおずと出てきて三人に謝った。


「あの……本当にごめんなさい」


 申し訳なさそうに言う彼女に、地雷戦士は言った。


「大丈夫! 大丈夫! 人生色々あるよね!! あっはっは〜〜!!」


 彼女の張り詰めていた空気が、一気に緩んだ気がした。地雷戦士のこういう所に、みんな救われるのかもしれない。


「ありがとう、許してくれて……」


「私も同じ様な事してきたから……お互い様!!」


 地雷戦士は傘を開いて、ぽたんさんと手を繋いだ。ぽたんさんは反対側の手でレストさんと手を繋ぐ。


「じゃあライルン!! またね!!」


「ライル!! 元気でいるんだぞ!!」


「達者でな」


 笑顔で手を振る三人に、僕は言った。


「えぇ……皆さん、お元気で……また!!」


 さよならは言わなかった。三人はゆっくりと……船を降りていった。



 ◇



「あの……ごめんなさい。迷惑かけて……」


 彼女が僕にぽつりと言った。


「いえ……悪いのは僕ですから、あなたは何一つ悪くありません。どうか自分を責めないで下さい」


「……」


 彼女は無言になった。何も言わず、抵抗もせず……目を閉じてその時を待っていた。

 けれど、僕が動いて物音がすると……彼女はビクッとして震えはじめた。目から涙が溢れる。


「このままお別れになったとしても……あなたを忘れたくありません……やっぱりダメですか??」


 彼女の苦しそうな声を聞くと、僕の心も苦しくて辛くなった。でも、僕がここで気弱になってはいけない。心を強く持って……僕は彼女に告げた。


「正確には、記憶を封印するだけです。潜在意識……そう、魂の記憶を消す事は神にも出来ないのです」


「……えっ?」


 彼女は顔を上げた。


「なので一時的に、記憶を封印するというか……」


 僕はこういう時に言葉が続かない。なんて言おうか考えていると、彼女は言った。


「わかりました。私……絶対にあなたを忘れません!! 何年かかっても……あなたとの記憶を思い出してみせます!!」


 僕は彼女を抱きしめると……自分の気持ちを伝えた。


「僕の物語と、僕自身を好きになってくれてありがとう。あなたが誰と一緒になって……どういう選択をしたとしても構いません。ずっとあなたを見守っています。ただどうか……幸せでいて下さい」


「……」


「あなたを愛しています。もし来世で生まれ変わって……僕達が『人と人』か『神と神』になって、また僕を好きになってくれたら……その時は僕のお嫁さんになって下さい」


「はい……」


 僕は抱きしめたまま、彼女の記憶を封印した。もう、彼女が辛くない様に……苦しくない様に……祈りを込めて。

 ……しばらくすると、彼女は顔を上げた。


「あらっ? 私……なんで泣いているのかしら??」


 僕に抱きしめられていると気付くと、恥ずかしがって僕から離れた。


「やっ、やだ!! なんかごめんなさい!!」


 状況が飲み込めないでいるのだろう。


「憧れの人に会って気持ちが舞い上がってしまったのでしょう。あなたに地雷戦士を会わせる事が出来て良かったです」


 僕が言うと、彼女は興奮しながら喜んだ。


「えぇ!! 憧れのお姉ちゃんに会えて幸せだった!!」


 瞳をキラキラ輝かせて言う彼女を、僕は笑顔で見つめていた。彼女は僕の方に振り向くと、僕にワクワクしながら言った。


「ライルさん!! 第ニ章……続き、楽しみにしています!!」


「そう言って頂けると嬉しいです。本当に……ありがとうございます」


 きっと今世で彼女が第二章を読む事はないだろう。けれど、いつか彼女が大好きな地雷戦士の物語が読める様に、僕はこの話を完結させてみせる!!そう……ハッピーエンドの物語を……。僕は心に誓った。 

 

読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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