愛は伝わる(もう一人のライルside)
「ねぇ……本当に大丈夫??」
心配そうに地雷戦士が僕に声をかける。
「大丈夫です。色々、ありがとうございました。無事、彼女も落ち着きましたし……後は、僕と彼女の問題です」
そう言うと地雷戦士は、安心して笑顔を見せながら僕に言った。
「そっかそっか!! 了解、了解!!」
「彼女にあなたを会わせる事が出来て、本当に良かったです……」
そう言ったらなんだか少し寂しくなった。これでもう、懐かしい仲間達とはお別れになってしまう。彼女の事で頭が一杯だったので再会の喜びも束の間だったが……みんなに会えて本当に良かった。寂しいが、本来なら会う事も出来ない人達だ。良しとするべきであろう。
「久しぶりに皆さんに会えて良かったです。どうか皆さん、身体には気をつけてどうぞ幸せに……」
なんだかしんみりした感じで言ってしまったら、地雷戦士が僕の肩をバンバン叩いた。
「ちょっと何しんみり言っちゃってんのーー!! 大丈夫、大丈夫!! 私達は離れてても大事な仲間よ〜!!」
後ろでレストさんとぽたんさんも笑っていた。どんなに離れていても、僕達が仲間である事には変わりはない。
「そうですね。しんみりはやめましょう。帰りはその傘を使って帰って下さい」
「傘を使って??」
地雷戦士はスティックになっている傘を見つめた。
「はい。その傘をパラシュートの様に使って船を降りる事が出来ます」
「おぉおおおーーー!! そんな使い方がっ!!」
「三人で手を繋いで降りれば大丈夫です」
「……なるほど」
地雷戦士は傘を見ながらうなずいていたが、ある事を思い出して僕に問いかけた。
「ちょっと待って!! うちのライルンは??」
あっ……忘れていた。
「大丈夫です。後で蹴り飛ば……いえ、僕が無事に帰しておきます」
「わかった!! 自分自身だし、大丈夫そうだね!!」
僕達の話が終わった後、彼女が僕の後ろからおずおずと出てきて三人に謝った。
「あの……本当にごめんなさい」
申し訳なさそうに言う彼女に、地雷戦士は言った。
「大丈夫! 大丈夫! 人生色々あるよね!! あっはっは〜〜!!」
彼女の張り詰めていた空気が、一気に緩んだ気がした。地雷戦士のこういう所に、みんな救われるのかもしれない。
「ありがとう、許してくれて……」
「私も同じ様な事してきたから……お互い様!!」
地雷戦士は傘を開いて、ぽたんさんと手を繋いだ。ぽたんさんは反対側の手でレストさんと手を繋ぐ。
「じゃあライルン!! またね!!」
「ライル!! 元気でいるんだぞ!!」
「達者でな」
笑顔で手を振る三人に、僕は言った。
「えぇ……皆さん、お元気で……また!!」
さよならは言わなかった。三人はゆっくりと……船を降りていった。
◇
「あの……ごめんなさい。迷惑かけて……」
彼女が僕にぽつりと言った。
「いえ……悪いのは僕ですから、あなたは何一つ悪くありません。どうか自分を責めないで下さい」
「……」
彼女は無言になった。何も言わず、抵抗もせず……目を閉じてその時を待っていた。
けれど、僕が動いて物音がすると……彼女はビクッとして震えはじめた。目から涙が溢れる。
「このままお別れになったとしても……あなたを忘れたくありません……やっぱりダメですか??」
彼女の苦しそうな声を聞くと、僕の心も苦しくて辛くなった。でも、僕がここで気弱になってはいけない。心を強く持って……僕は彼女に告げた。
「正確には、記憶を封印するだけです。潜在意識……そう、魂の記憶を消す事は神にも出来ないのです」
「……えっ?」
彼女は顔を上げた。
「なので一時的に、記憶を封印するというか……」
僕はこういう時に言葉が続かない。なんて言おうか考えていると、彼女は言った。
「わかりました。私……絶対にあなたを忘れません!! 何年かかっても……あなたとの記憶を思い出してみせます!!」
僕は彼女を抱きしめると……自分の気持ちを伝えた。
「僕の物語と、僕自身を好きになってくれてありがとう。あなたが誰と一緒になって……どういう選択をしたとしても構いません。ずっとあなたを見守っています。ただどうか……幸せでいて下さい」
「……」
「あなたを愛しています。もし来世で生まれ変わって……僕達が『人と人』か『神と神』になって、また僕を好きになってくれたら……その時は僕のお嫁さんになって下さい」
「はい……」
僕は抱きしめたまま、彼女の記憶を封印した。もう、彼女が辛くない様に……苦しくない様に……祈りを込めて。
……しばらくすると、彼女は顔を上げた。
「あらっ? 私……なんで泣いているのかしら??」
僕に抱きしめられていると気付くと、恥ずかしがって僕から離れた。
「やっ、やだ!! なんかごめんなさい!!」
状況が飲み込めないでいるのだろう。
「憧れの人に会って気持ちが舞い上がってしまったのでしょう。あなたに地雷戦士を会わせる事が出来て良かったです」
僕が言うと、彼女は興奮しながら喜んだ。
「えぇ!! 憧れのお姉ちゃんに会えて幸せだった!!」
瞳をキラキラ輝かせて言う彼女を、僕は笑顔で見つめていた。彼女は僕の方に振り向くと、僕にワクワクしながら言った。
「ライルさん!! 第ニ章……続き、楽しみにしています!!」
「そう言って頂けると嬉しいです。本当に……ありがとうございます」
きっと今世で彼女が第二章を読む事はないだろう。けれど、いつか彼女が大好きな地雷戦士の物語が読める様に、僕はこの話を完結させてみせる!!そう……ハッピーエンドの物語を……。僕は心に誓った。
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