彼女探し
激しい魔法の撃ち合いになったと思ったら、片方のライルンに魔法があたって吹っ飛んだ。
おそらく吹き飛ばされた方のライルンが、うちのライルンだ。よそのライルンはうちのライルンを担ぐと、私達の方へやって来て言った。
「お待たせしました。あなた達のライルです。寝てるだけなんで適当にその中で転がしておいて下さい」
転がすって……なんだか軽い感じの言い方だなぁ。
「ちょっとあなた! うちのライルンに失礼じゃない!」
地雷がプリプリしながらそう言うと、ライルンは申し訳なさそうに謝り始めた。
「申し訳ありません。自分自身なので、つい」
頭を下げて謝るので、ちょっと言い過ぎたかなと思う。
「いやいや、気を付けて貰えば大丈夫なんだけどさ!」
地雷がオーバーリアクションぎみでフォローすると、ライルンはつぶやいた。
「僕は未来のライルなので、過去の恥ずかしい自分に耐えられないというか……」
んっ??未来のライルン??……って言った??
「……どういう事だ??」
ぽたんちゃんが質問すると、未来のライルンは答えた。
「僕は彼女と、聖剣の力を使って未来から来ました」
「何それめっちゃファンタジー!!」
チムリが興奮して何か叫んでいる。チムリを放置してライルンは話を続けた。
「彼女は憧れの地雷戦士に会いに来たんです。会いたいという気持ちが、聖剣の力を時間を操る力に変えました」
「……」
ちょっと待ってなにそれ!!なぜそこで地雷戦士が出てくる!?
「どうしてそこで地雷が出てくるん!?」
地雷がライルンに聞くと、ライルンは恥ずかしそうに話はじめた。
「僕は物語を作る時、ハッピーエンドの話を書く事が出来ませんでした。沢山の人間を見てきて、現実を知ってしまったからです……」
確かにライルンは、そう言って悩んでいた。
「だからまず、ハッピーエンドになった人物をモデルにして話を書く事にしたのです。それが地雷戦士です」
「……なるほど。でも、ちょっと待って!?」
地雷の黒歴史が、文字として残されたという事!?それはそれでちょっと恥ずかしい。
「なんかそれはそれでちょっと恥ずかしいかも!?」
地雷が言うと、ライルンは申し訳なさそうにつぶやく。
「すみません……。もうあなた達がいない未来なので、思い出を残したくて書き始めました」
ちょっと寂しそうな感じがした。神様って寿命が長いだろうし、人間の一生を凄い速度で感じるのかも。それは沢山の別れを経験するという事だ……辛い事もあるかもしれない。
「それだけ大事に想ってくれて嬉しいよ!! どんな世界線でも、時間軸でも、ライルンは大事な戦友!!」
握手して繋いだ手をブンブン上下に振ると、ライルンは嬉しそうにつぶやいた。
「ありがとうございます」
状況がわかった所で、ぽたんちゃんがライルンに問いかけた。
「それで……お前の彼女はどこにいるんだ??」
「彼女を眠らせておいたのですが、先程ベッドからいなくなっていたので目を覚ました様です」
「なるほど……この船の中にいるのは確かだけど、場所はわからないという事か」
「はい」
結構、大きい船だ。手分けして探した方が早いかもしれない。
「じゃあ、二手に別れて探す??」
「いや……やめた方がいい。私は先程、攻撃された」
「えっ!?」
「固まって探すのがベターだ」
「もうそこまで暴走しかけているのですね……申し訳ありません」
ライルンは謝りながら彼女の状態を教えてくれた。
「聖剣は本来聖なる力を纏っている剣ですが、彼女の不安定な状況から闇のオーラに変わってしまっています。くれぐれも、闇のオーラが暴走したら近付かないで下さい。闇に呑まれたら魂がこちらに帰ってこれません」
「魂が帰らなかったら、どうなるの??」
地雷の問いかけに、ライルンが恐ろしい返答をした。
「現実世界にも、ゲーム世界にも帰ってくる事が出来ず……永久に暗闇を彷徨います」
「何それこっわ!!」
地雷がビビっていると、ライルンが付け加えた。
「近寄らなければ大丈夫なので安心して下さい。何が起きてもご自身を一番大切に」
「わかった!!」
こうして固まってライルンの彼女探しが始まった。でも、船の中を見回しても人の気配が全然ない。
「ねぇ……本当にこの船にいるの?」
「この船は彼女が乗っていなければ存在出来ません。必ず何処かに彼女はいます」
「あっ、彼女の心の姿なんだっけ??」
「そうです」
話しながら船の外に出ると、髪の長い黒いドレスを着た女性が、赤い三日月をぼんやりと眺めていた。こちらには気付いていない様だ。
「少し、彼女と話をしますのでここで待っていて下さい」
ライルンは私達に言うと、彼女に近付きながら話しかけ始めた。
「……そこにいたんですね」
ライルンが言うと、女性がこちらを振り向いた。眼帯を着けている美しい女性だ。彼女は何だか少し嬉しそうに話し始める。
「やっと話をしてくれましたね。もう……私とは話したくないのだと思っていました」
「すみません……諸事情で話をする事が出来ない状態になっていましたので」
「……そうですか」
何だか少し安心した表情を見せる。あれっ??……このままいけば私達三人、必要ないんじゃない??
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