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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第二章
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ガチ勢の絆2(ぽたんside)


「お前……どうしてここに?」


 リュウは、おぼろげな瞳で剣を構えると、私に向かって剣を振り下ろした。


「なっ!? やめろ!!」


 剣をかわしながら叫んだ。リュウに近づいてみると瞳に輝きがない。明らかにおかしい。


「リュウ! リュウ!! 私だ!! ぽたんだ!!」


 リュウに問いかけてみるが返答はない。どうやら……誰かに操られているらしい。


「……まずいな」


 気が付くと他にも誰かいる事に気付く。軽く10人ぐらいはいそうだ。それは同じ様に瞳に輝きがない冒険者達だった。彼らはそれぞれ武器を持ち、私を攻撃し始めた。


「……くっ」


 激しい攻撃をかわす!私のプレイヤースキルはそれなりに高い方だが、複数人の攻撃をかわすのは至難の技だ!!


「この冒険者達は罪のない冒険者だ。そしてリュウを攻撃するなんて事は……私には出来ない」


 だが、単独で多数を相手にするのはいささか厳しい。体力を回復しながら攻撃をかわしているが、ダメージの方が大きい。ジリジリ体力を削られていく……。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 現状維持で精一杯だ。一体どうしたらいいか決めかねていると、どこからか女性の声が聞こえてきた。


「あなたはガチ勢と言われる程強い冒険者。もし、私の仲間になるのであればリュウと共に助けてあげましょう」


 ……誰だ??もしかしてこの女性が、ライルの彼女というやつか??


「……それは本当か?? 本当にリュウを元に戻してくれるのか??」


「約束します」


「……わかった」


 私を攻撃する手が止まり、リュウと冒険者達がひとつにまとまり始めた。その中に私も一緒に混じる。

 ふと顔を上げて天井を見ると、一際大きい星が光っている。私はさりげなく……剣から弓に武器を持ち替えた。


「なぁ……タロットカードの『星』の意味を知っているか??」


「タロットカード?」


 彼女は少し困惑している様だ。


「『星』のカードの意味は……希望の光という意味があるんだ。ここにいる冒険者達は沢山の世界を守っていく希望の光……絶対に傷付けたりはしない!!」


 私は矢をつがえると、天井にある大きな星を目がけて矢を放った。


「いけっ!! 流れ星!! 沢山の夢を叶えろ!!」


 大きい星が砕けて沢山の流れ星になり、冒険者達に降り注いだ。次第に冒険者達が行動不能になっていく。


「一体、何をしたの!?」


「何って……強制ログアウトだよ。寝落ちってやつ!」


 私はリュウとずっと一緒にいた。カードのモンスターの行動パターン、属性、効果的な戦い方が手に取る様にわかる。『星』のカードのモンスターの属性は睡眠属性だ。

 強制ログアウトさせれば、大事な冒険者達を一切傷付ける事なく、それぞれの場所に帰す事が出来る。


「この私を……ハメたわね」


 彼女は悔しそうに怒りの声をあらわにした。


「何度も言っている。この世界が不具合、バグで世界を武力行使するなら、我々はハメで対抗するしかない。とな」


 彼女は少し悲しそうに私に問いかけた。


「あなたにとっても、リュウと一緒にいられるチャンスだったはず……それなのになぜ??」


 私は目を閉じて、手を胸に当てて言った。


「……それはあなたのモノサシ。例え離れていても、話が出来なくても、私とリュウは繋がっている。あいつはこの世界に私がいるから大丈夫と踏んで違う世界に旅立った」


 目を開けて、自分に言い聞かせる。


「だから、私がこの世界を全力で守らないといけないんだ!! それが……ガチ勢の絆だ!!」


「……絆」


 寂しそうに彼女はつぶやいて、それっきり彼女の声は聞こえなくなった。

 私はゆっくりとリュウに近づいた。腕を組んでいつもみたいに斜に構える。リュウは穏やかな顔をしてスヤスヤ眠っていた。


「……まったく。大方、私をダシにされてこうなったんだろう? 甘っちょろい男だ……」


 私は穏やかに笑いながらつぶやいた。


「ありがとう……ゆっくりおやすみ」


 そのまま、リュウはログアウトしていった。





 鏡の付近を調べてみるが、やはり何の変哲のない鏡だ。地雷がやっていた様に鏡をコンコン叩いてみる。すると、何かが私にぶつかってきた。


「うわっ!!」


「ぎゃあああぁあぁ!!」


 鏡から地雷が出てきて、私に突っ込んできた!!


「なっ……何だっ!! びっくりするじゃないか!!」


「うぇええぇ〜!! ぽたんちゃーん!!」


 鼻水なのか、涙なのかよくわからない……ぐしゃぐしゃの顔で、私に抱きついてきた。


「怖かったぁあああぁああ〜〜〜!!」


「その顔のままで私に抱きつくな!! 鼻水がつく!!」


 とりあえず彼女が落ち着くまでは探索は中断だ。まったく……センチメンタルもくそもない。


「ぽたんちゃんも無事で良かったぁああぁ〜〜!!」


「……とりあえず、鼻をかんで顔を拭け」


 ハンカチを貸したら、思いっきり鼻をかまれた。お気に入りのハンカチだったのに……。


「いいか? 次から鼻をかむのはティッシュだけにしろ!!」


「あっ、ごめん!! つい余裕なくて!!」


 鼻水まみれのハンカチを彼女はポケットにしまった。洗って返すつもりだろうけど、見るたびに彼女のイメージがついてそのハンカチはもう使えない気がする。


「泣いたらなんかスッキリして落ち着いてきた!!」


「……」


 喜怒哀楽が激しいヤツだ……。でも、この明るさがあって助かった。一人だったら、ちょっとブルーだったかも知れない。

 

読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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