地雷、魔法使いになる
たまにチムリ(仲良くなって呼び捨て)の気まぐれでチーム集会なるものが催される。簡単に言うと親睦会みたいなもので強制参加ではなく、都合のいい人が気軽に参加!みたいな感じだ。
地雷はコレを待っていた!!あの反復横跳びがジワるミステリアスの魔法使いと仲良くなれるチャンスだ!!そるとちゃんと一緒に集会が催されるチムリの家に行くと……いたいた!!
彼は誰とつるむでもなく、一人でぼ〜っとしていた。
「こんにちは! 地雷に魔法を教えくれませんか?」
「……あなた、魔法を使えるのですか?」
トゲのある言い方。この人はそるとちゃんと同じ塩対応属性なのかもしれない!!
「……まぁ、いいですけど」
しぶしぶ了承してくれた感じだった。まわりの目もあるから仕方なく引き受けたのかもしれない。地雷、そるとちゃん、チムリ、魔法使い以外はみんな忙しくて集会が終わったら帰ってしまった。
チムリの家の前で教えて貰う事になった。ぶっちゃけ仲良くなれれば魔法なんて使えなくてもいいけど経験って大事だし頑張ってみよう!!
「じゃあ、やってみてください。」
両手杖がないのでいつも使ってる剣を両手で持ってうんうん唸ってみる。……まぁ、炎なんて出ない。
「……両手杖ないんですか?」
魔法使いが呆れてる感じで言う。いやいや、あなたがそれを言いますか!!
「……はぁ、ちょっと待っていてください。」
魔法使いはそう言うとどこかに消えてしまった。
「ねぇ、いつもあなたが使ってるその剣ってどこで買ったの?実は私、他で見たことないんだよね」
そるとちゃんに聞かれたので考えてみる。……うーん、どこだっけ??よく覚えてない。ただなんとなくお守りみたいな感じで親近感があって、だからこれを使っている。
「うーん。身近にあったみたいな感じでよく覚えてない。結構地味目だし手頃な感じだったんじゃないかな?」
「期間限定武器とかなのかしら……」
しばらくしたら魔法使いが帰ってきた。太い木の枝みたいなのを持っている。
「これを使ってください」
地雷が剣をしまって木の枝を両手で持つとさっきみたいにうんうん唸った。しばらくするとマッチの火みたいな炎が地雷の前に現れた。
「ちっさ……」
そるとちゃんがちょっと笑いながら呟いた。このままでは地雷の格好がつかない!!このままじゃ!!このままじゃいられないっ!!地雷は空に向かって叫んだ!!
「地雷の恋愛小説の読者様っ!! 私に魔力を分けてくれっ!! 頼むっ!!」
すると少〜しだけ魔力が流れてきてマッチの火がちょっとだけ大きくなった。
「読者少な……。てかあんた恋愛小説なんて書いてんの? 付き合う男、付き合う男、ダメ男製造機のくせに?? きっしょ!!」
地雷はダメ男製造機の称号を手に入れた。……そんな称号いらね〜!!(涙)……てか、そるとちゃんマジセリフが塩対応すぎるよ!!
しばらく唸っていたが一向に炎は大きくならない。
痺れをきらした魔法使いが地雷の炎に手をかざす。するとどうだろう。莫大な魔力が流れこんできた。
凄い!!ドンドン炎が大きくなる!!
……んっ!?ちょっと待ってっ!コレはっ!イケメンの匂いだっ!顔が見えないけど絶対コイツはイケメンだっ!
イケメンの匂いを吸っておかないとっ!!スーハースーハースーハースーハースーハー!!
あっ、やばい!!イケメン耐性なくて緊張してキタァアアアーーー!!
緊張して手元が滑った。でっかい炎がチムリの家に向かってとんでいった。
「あぁあああああぁあああぁあああー!! 俺の家がぁあぁあああぁあああああぁーー!!」
チムリの叫びが響いた。
でっかい炎がチムリの家にあたったと思ったら、チムリの家が消滅した。家が塵になったって感じで、まるでマジックみたいだった。
「……えっ」
みんな無言になった。ちょっとした魔法で家が消滅するとかありえる!?ちょっと家が燃えるとかならわかるけど。
「チムリ、ごめんなさい……。隠された地雷の力が右手から疼いてしまったのかも知れない!!」
「隠された能力が今ここに目覚め……」
「中二病はだまりなさい」
そるとちゃんに釘を刺された。
「いや、こんなのは事故だよ……。誰もこんなん予想しないから気にしないで」
顔面蒼白なチムリが言う。とりあえず運営警察に連絡しようという事になった。
――運営警察
この世界の平和を陰で支えるエキスパートである。赤い鎧を身にまとい、三倍のスピードで動くかどうかはわからないが困った時に冒険者を助けてくれたり、サポートしてくれたりする。
普段は優しいが悪い人にはしっかりお仕置きする強い人達で、悪い人は説教部屋に強制連行される!!そして説教部屋でカツ丼が提供されるらしい。
「もしもし、運営警察ですか?」
「はい、こちら運営警察です。事件ですか? 事故ですか?」
「……両方です」
「現場はどちらですか? 怪我人はおりますか?」
「現場は俺の家です。怪我人はいません」
「どうされました?」
「俺の家がなぜか消滅しました……」
「……なるほど。こちらで詳細を確認後、現場に急行いたしますので少々お待ちください。一旦、この通信を切らせていただきます」
しばらくすると赤い鎧を着た運営警察の人が走ってきた。
「うわっ、ホントにねーや……」
「ご苦労様です……。それで俺の家は……」
「今回の件ですがこちらで調べた結果、非常に珍しい案件でして。なにか非常に大きな力が加わり、その結果バグのような何かが起こり今回の件にいたったようです。」
「はぁ……。それで俺の家は戻るんでしょうか?」
「先程も言ったように非常に珍しい案件で、災害扱いとは言い難い部分もあり保険の適用になるかどうかをただいま検討中です」
「いつ、検討は終わりますか?」
「期間については現状で未定となっております」
「……」
「……」
チムリは一息つくと深く深く息を吸った。そして覚悟を決めて運営警察の人をまくしたてた。
「俺の家、最近買ったばっかりなんです!! めっちゃお金頑張って貯めてやっと買ったんです!! 高かったんですよ!! チームリーダーだし、チーム集会とかやるから大きい家にしたんです!! 家具とかも結構こだわっていいの買って……自慢の家だったんです!! ちょっとチムメンが庭で魔法の練習しててそれで家が壊れるってどういう事!? お願いします!! 俺は悪いチームリーダーではありません!! 家を返してください!!」
「心中お察しいたします。……だがしかし、その提案は見送らせていただきます。」
頭を下げてそそくさと運営警察の人は帰っていった。
「あの……僕の家に来て下さい。874番地です」
責任を感じた魔法使いがつぶやいた。こうしてチムリと魔法使いのルームシェアが幕をあけたらしい。
その後地雷は……何を引き起こすかわからないからという理由で魔法職禁止令がそるとちゃんから発令された。
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