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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第二章
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地雷戦士の過去


「なぁ、ランタンとか明かりになる様な物持ってるか?」


「ごめん……ないや」


「急だったしな……困ったな……」


 ぽたんちゃんはポケットからタロットカードを取り出すと沢山あるカードの中から一枚ひいた。

 多分、困った時にカードをひくのがクセになっているのだと思う。


「『星』のカードか……。希望はあるな」


 突然、カードからモンスターが飛び出してきた。予想してなかったから、びっくりして変な声が出た!!


「うをぉおおおぉ!!」


「ぎゃあああぁああ!!」


 出てきたモンスターは、星のカンテラを照らしながらニコニコ笑っていた。


「ぽたんちゃん、モンスター召喚したの??」


 なぜだろう……。ぽたんちゃんは悲しい様な、寂しい様な、曇った表情を見せた。


「いや、私がやった訳ではない。おそらくこのカードをひいた時に自動的に召喚される様になっていたんだ」


「そうなんだ」


 なんとなく、悲しい気持ちになった理由は聞かないでおこうと思った。


 野外になっている部分から室内に入ると、モンスターは星を散りばめて室内を明るくした。めっちゃ綺麗だ!!


「プラネタリウムみたいだなぁ〜」


「おいおい……感動している場合か??」


「おっと、そうだった!そうだった!」


 ライルンがいるかもしれないんだ!!しっかり探索しないと……。でも、船の中は最低限の物しかなくて探索する様な箇所がない。


「何もない船だな。この船は何のために存在しているんだ??」


「う〜ん……。ライルンを繋ぎ止めたいから存在しているんじゃないかな??」


 地雷が言ったら、ぽたんちゃんはなんだかびっくりした顔をした。


「お前……いつからそんなまともな事を言う様になったんだ!?」


「えっ……女の子ってみんなそうなんじゃないの?? 普段言わないだけでさ」


 そんな会話をしていたら、地雷のドッペルゲンガーが現れた!!


「うわっ!!」


「なっ……何だ!?」


 よく見たら古びた鏡だった。心臓が飛び出るかと思ったよ……。


「ごめん……なんか鏡だった」


「脅かすなよ!」


「あははっ!!」


 鏡をコンコン叩いて、苦笑いしていたら何かに手を掴まれた。鏡のある方向だから手を掴まれるなんて事は不可能なのだが……。


「えっ……??」


 そのまま手を引っ張られて、鏡の方向に身体が傾いていく……。どういう事!?


「ぽたんちゃん……??」


 振り向くとそこには……地雷戦士がいた。頭が真っ白で状況が飲み込めない……。


「へっ??」


 もう一人の地雷戦士は、盾と剣を持って地雷を見つめている。


「ふぉおおぉおぉおーーー!!」


 叫びながら逃げた。多分、目から涙が出ている。

 ドッペルゲンガーじゃん!ドッペルゲンガーじゃん!!ライルン、オバケなんて出ないって言ってたのにっ!!嘘つきーーー!!

 地雷は一目散に走ってドッペルゲンガーから離れた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 だいぶ走ったから大丈夫だろう……。それにしても薄暗い空間で壁がない。どうなってるんだ、ここは!?!?


 ザッザッザッザッ……。


 逃げた逆の方向から足音が聞こえる。足音の方を見ると、地雷戦士が剣を振り上げて突っ込んで来た!!


「てぇええぇ〜〜〜い!!」


「うぉっ!! 危ねぇ!!」


 間一髪で攻撃を避ける。だが、攻撃がかすって顔に切り傷が出来た。不思議なことに、相手のドッペルゲンガーの顔にも切り傷が出来た。


「ちょっと待って!! あなたも傷ついてるよ!?」


 地雷が言うと、ドッペルゲンガーは悲しそうな顔をしながらつぶやいた。


「傷ついても構わない……。私は強くないし、役に立たないし、誰も私を必要としない……」


 今にも泣きそうな顔で話を続ける。


「きっと私がこの世界から消えてしまったって、誰も気付かない。私なんて消えてしまった方がいいんだ……」


 そのセリフを聞いて地雷は確信した。このドッペルゲンガーは過去の私だ……。間違いない……。





 現実世界でも地雷は地雷だった。学生時代から家出を繰り返し、問題児として有名になった。


「親御さんを心配させてはいけません!!」


 まわりの人は地雷にそう言った。でも、地雷には耐えられなかった。家に居場所がないのだ。


「お前!! 親をなんだと思っているんだ!!」


 怒鳴られながら、殴られて、蹴られた。女の子なのに唇が腫れて酷い有様だ。


「お父さん!! もうよして頂戴!!」


 母親が止めに入ってその場は収まったけど、この異様な現状がこれから先、変わる事はない……絶望だ!!

 父親の言う事は絶対で、自分の意見を曲げない人だった。例えそれが間違った事だったとしても、父親の言う事は絶対だった。

 それでも……大人になればこの現状から抜けられる!!それだけを信じて、子ども時代を過ごした。


「お金はお母さんが管理します」


「えっ……」


 働いてお金を稼ぐ様になっても、自由になれる事はなかった。お金を貯めて家を出たかったけど……許される事はなさそうだった。

 自暴自棄になって、当時付き合っていた男性と家を飛び出した!!


「自由だ!! 私はこれで自由なんだ!!」


 凄く嬉しかった!!毎日楽しくて、これから人生が楽しくなっていく気がした!!……でも、最初だけだった。


「てめぇ!! 言う事を聞け!!」


 いつのまにか付き合っている人に殴られる様になった。殴られる相手が父親から恋人に変わっただけだった。

 でも……意地でも家には帰らなかった。帰ったら負けだと思っていたからだ。


「……どうしてだろう」


 何人かお付き合いしてみたけど、みんな私を殴ったり、お金を盗ったりした……。


「きっと私がいけないんだ……」


 そう思わざるを得なかった。藁にもすがる思いで毎日を過ごしていた。ただ、普通に幸せになりたかった。

 何年も何年も家に帰らなかったが、とうとうお金が尽きて家に帰る事になった。

 その頃には親も丸くなっていたが、正直……根本は変わっていないと思う。


「……疲れた」


 誰かに会うのが怖くて、引きこもりになって、ゲームばかりする様になった。


読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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