地雷戦士の過去
「なぁ、ランタンとか明かりになる様な物持ってるか?」
「ごめん……ないや」
「急だったしな……困ったな……」
ぽたんちゃんはポケットからタロットカードを取り出すと沢山あるカードの中から一枚ひいた。
多分、困った時にカードをひくのがクセになっているのだと思う。
「『星』のカードか……。希望はあるな」
突然、カードからモンスターが飛び出してきた。予想してなかったから、びっくりして変な声が出た!!
「うをぉおおおぉ!!」
「ぎゃあああぁああ!!」
出てきたモンスターは、星のカンテラを照らしながらニコニコ笑っていた。
「ぽたんちゃん、モンスター召喚したの??」
なぜだろう……。ぽたんちゃんは悲しい様な、寂しい様な、曇った表情を見せた。
「いや、私がやった訳ではない。おそらくこのカードをひいた時に自動的に召喚される様になっていたんだ」
「そうなんだ」
なんとなく、悲しい気持ちになった理由は聞かないでおこうと思った。
野外になっている部分から室内に入ると、モンスターは星を散りばめて室内を明るくした。めっちゃ綺麗だ!!
「プラネタリウムみたいだなぁ〜」
「おいおい……感動している場合か??」
「おっと、そうだった!そうだった!」
ライルンがいるかもしれないんだ!!しっかり探索しないと……。でも、船の中は最低限の物しかなくて探索する様な箇所がない。
「何もない船だな。この船は何のために存在しているんだ??」
「う〜ん……。ライルンを繋ぎ止めたいから存在しているんじゃないかな??」
地雷が言ったら、ぽたんちゃんはなんだかびっくりした顔をした。
「お前……いつからそんなまともな事を言う様になったんだ!?」
「えっ……女の子ってみんなそうなんじゃないの?? 普段言わないだけでさ」
そんな会話をしていたら、地雷のドッペルゲンガーが現れた!!
「うわっ!!」
「なっ……何だ!?」
よく見たら古びた鏡だった。心臓が飛び出るかと思ったよ……。
「ごめん……なんか鏡だった」
「脅かすなよ!」
「あははっ!!」
鏡をコンコン叩いて、苦笑いしていたら何かに手を掴まれた。鏡のある方向だから手を掴まれるなんて事は不可能なのだが……。
「えっ……??」
そのまま手を引っ張られて、鏡の方向に身体が傾いていく……。どういう事!?
「ぽたんちゃん……??」
振り向くとそこには……地雷戦士がいた。頭が真っ白で状況が飲み込めない……。
「へっ??」
もう一人の地雷戦士は、盾と剣を持って地雷を見つめている。
「ふぉおおぉおぉおーーー!!」
叫びながら逃げた。多分、目から涙が出ている。
ドッペルゲンガーじゃん!ドッペルゲンガーじゃん!!ライルン、オバケなんて出ないって言ってたのにっ!!嘘つきーーー!!
地雷は一目散に走ってドッペルゲンガーから離れた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
だいぶ走ったから大丈夫だろう……。それにしても薄暗い空間で壁がない。どうなってるんだ、ここは!?!?
ザッザッザッザッ……。
逃げた逆の方向から足音が聞こえる。足音の方を見ると、地雷戦士が剣を振り上げて突っ込んで来た!!
「てぇええぇ〜〜〜い!!」
「うぉっ!! 危ねぇ!!」
間一髪で攻撃を避ける。だが、攻撃がかすって顔に切り傷が出来た。不思議なことに、相手のドッペルゲンガーの顔にも切り傷が出来た。
「ちょっと待って!! あなたも傷ついてるよ!?」
地雷が言うと、ドッペルゲンガーは悲しそうな顔をしながらつぶやいた。
「傷ついても構わない……。私は強くないし、役に立たないし、誰も私を必要としない……」
今にも泣きそうな顔で話を続ける。
「きっと私がこの世界から消えてしまったって、誰も気付かない。私なんて消えてしまった方がいいんだ……」
そのセリフを聞いて地雷は確信した。このドッペルゲンガーは過去の私だ……。間違いない……。
◇
現実世界でも地雷は地雷だった。学生時代から家出を繰り返し、問題児として有名になった。
「親御さんを心配させてはいけません!!」
まわりの人は地雷にそう言った。でも、地雷には耐えられなかった。家に居場所がないのだ。
「お前!! 親をなんだと思っているんだ!!」
怒鳴られながら、殴られて、蹴られた。女の子なのに唇が腫れて酷い有様だ。
「お父さん!! もうよして頂戴!!」
母親が止めに入ってその場は収まったけど、この異様な現状がこれから先、変わる事はない……絶望だ!!
父親の言う事は絶対で、自分の意見を曲げない人だった。例えそれが間違った事だったとしても、父親の言う事は絶対だった。
それでも……大人になればこの現状から抜けられる!!それだけを信じて、子ども時代を過ごした。
「お金はお母さんが管理します」
「えっ……」
働いてお金を稼ぐ様になっても、自由になれる事はなかった。お金を貯めて家を出たかったけど……許される事はなさそうだった。
自暴自棄になって、当時付き合っていた男性と家を飛び出した!!
「自由だ!! 私はこれで自由なんだ!!」
凄く嬉しかった!!毎日楽しくて、これから人生が楽しくなっていく気がした!!……でも、最初だけだった。
「てめぇ!! 言う事を聞け!!」
いつのまにか付き合っている人に殴られる様になった。殴られる相手が父親から恋人に変わっただけだった。
でも……意地でも家には帰らなかった。帰ったら負けだと思っていたからだ。
「……どうしてだろう」
何人かお付き合いしてみたけど、みんな私を殴ったり、お金を盗ったりした……。
「きっと私がいけないんだ……」
そう思わざるを得なかった。藁にもすがる思いで毎日を過ごしていた。ただ、普通に幸せになりたかった。
何年も何年も家に帰らなかったが、とうとうお金が尽きて家に帰る事になった。
その頃には親も丸くなっていたが、正直……根本は変わっていないと思う。
「……疲れた」
誰かに会うのが怖くて、引きこもりになって、ゲームばかりする様になった。
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