ご要望にお応えして……
二番目、三番目のイケメン達は確かにイケメンだった。ただ、ローズさんのインパクトが強すぎて、イケメン度が霞んでしまっていた。ローズさんが男性だったら優勝だったかもしれない。
「ふぅ〜……ふぅ〜……」
「……ライルン、大丈夫?」
順番が近づくにつれて、ライルンの息遣いが荒くなっていった。どうしよう、そろそろ出番なのに!!
酸素ボンベを背負わせてあげたい位、心配だ!!
「ライルン、大丈夫! 大丈夫! これ飲んで!!」
ラスボスがコップに水を入れて持って来た。なにげにライルンをもう呼び捨てにしている!!地雷は名前を言えるまでが長かったのに!!
「……ありがとうございます」
ライルンはコップの水を飲み干すと急に立ち上がった。
「皆さん、何をしているんですか? もうそろそろ出番じゃないですか!」
「……へっ?」
ライルンは会場裏の隅から移動して、舞台裏のすぐ近くまで歩いて行った。
「……うまくいったようですね」
「……ラスボス! まさか! そんなお約束な事、してないよね!?」
ラスボスは片膝をついて、一本の瓶を地雷に献上した。
「ご要望にお応えして作らせて頂いた『想像酒』でございます」
「要望出してねーよ!」
なんにせよ、ライルンが大丈夫そうになって良かったけど、急に変わりすぎじゃないか!?どういう事だ??
「こちらの『想像酒』は飲んだ者の理想になる事が可能なお酒になっております!! 3分しかもちませんが……」
「3分ってカップ麺かよ!!」
「いや、かの有名なアニメでは3分で怪獣を倒すそうですから上手く使えればよろしいかと……」
アレだ……。そんなに都合良くは出来ていないって事だ!!でも、それでいいと思う……『想像酒』だし。
「さて、創造主様!! ぽたんさんと一緒に我々も参りましょう!! なぁ〜に……ライルンが舞台に上がってしまえば、こちらのものですよ!!」
地雷にウィンクしながらラスボスが言う。あぁっ!!やめろやめろぉ!!イケメンのウィンクはまぶしすぎる!!
そんな事してたら、いよいよ順番がまわってきた!司会のお姉さんが叫ぶ。
「それではドンドンいきましょう!! エントリーナンバー4番! 死神さんお願いします!!」
ライルンは堂々と舞台に上がっていく。……よしよし、その調子だ!!頑張れー!!
私達三人もライルンの後ろについて舞台に上がった。
四人揃ったタイミングで、地雷は首元のネックレスのボタンを押した。声剣から声が響く。
「名は死神としておこう。君達の魂を管理している者だ。間違っても私の顔を見ようなどとは考えない方が良い。魂を吸い取ってしまうぞ? ハハハハ!!」
声が流れ終わったあたりから、ライルンの足がガクガク震えてきた。帽子を深く被って肩も震えてる。
ぽたんちゃんはライルンを哀れんだ瞳で見つめていた。
やばい!酒の効果が切れたんだ!!フォローしなきゃ!!
地雷はちょっと後ろを向いてネックレスに話しかける。
「今、隠された力が暴走している!! ぐぁああぁああ!!」
ライルンの力が暴走している事にした!!
「……あの、次の段階に移っても大丈夫でしょうか?」
司会のお姉さんが困っているみたいだったので、ラスボスがフォローに入る!!
「あっ、大丈夫です! 通常運転ですので! どーぞどーぞ!!」
司会のお姉さんは気を取り直して叫んだ!!
「ではっ!! アピールタイムに入らせて頂きます!! モンスターと戦って下さ〜い!!」
例のごとく、床が開いてモンスターが『こんにちは』して来た!!モンスターを見て、地雷は思わずつぶやいた。
「……ゲッ。マジで??」
それは、地雷の大嫌いな蜘蛛だった。まぁ〜た、害虫駆除かよ……。城でのトラウマを思い出す。しかも今回の蜘蛛は、気持ち悪さパワーアップの光る蜘蛛になっていた!ルノールの店みたいに派手派手ピカピカの蜘蛛で絶対触りたくない!!
「ある意味、回復役で良かった……」
地雷はつぶやいて、ない胸を撫で下ろした。あんな『暗闇でも光るんデス!!』……みたいな蜘蛛に張り付いていたくない。
「ではっ!! 始めっ!!」
司会のお姉さんが叫んだ後、蜘蛛がカサカサ動き出した!!あぁ……もう、ホントきめぇええ!!誰か巨大ハエ叩きで退治して欲しい!!
おっと、そんな事より回復役だった!!集中、集中!!
「補助魔法はやるから、回復だけして」
ぽたんちゃんが地雷に声をかけてくれた!!やはりガチ勢は頼りになるっ!!ぽたんちゃんは蜘蛛を弓で攻撃しつつ、状態異常ガードとか、魔法耐性を下げたりとかしてくれた!!
「私はなんか適当に魔法撃ってますね!」
ラスボスは紫色っぽい魔法とか、黒っぽい魔法とか撃っていた。魔王設定だから闇属性なのかな??
「ヒュ〜……ヒュ〜……」
ライルンは息遣いも荒い感じで、その場に座り込んでブルブルと震えていた。とても前衛出来そうな感じではない。やばい!!めっちゃ緊張しとる!!
「あっ!! やべっ!!」
ライルンに気を取られていたら蜘蛛の糸の攻撃をモロにくらい、縛られて身動きが取れなくなった。
「ああぁああ!! またこのパターン!? 棺桶必須なんですけどぉおおーーー!?」
今回も寝袋みたいな感じで、簀巻きみたいな状態のままジャンプした。
「誰か助けてーーー!!」
いや、回復役が叫ぶセリフじゃないよね??むしろパーティー組んでるメンバーが叫びたいセリフだよ。
ヤケクソになって、ふとラスボスを見たら悪い顔で笑いながら地雷を見つめていた。……ヤバイ!!地雷は直感でそう感じた。
「創造主様。出過ぎた真似とは思いますが……失礼します」
ラスボスは小声で言うと、地雷をお姫様抱っこし始めた。なんだなんだ!?こんな格好でお姫様抱っこされても、ときめかないぞ!?
ラスボスはライルンの前に行くと地雷を献上した。
「主様!! 隠された力を……今!! 解き放つのです!! どうかこちらで怒りをお納め下さい!!」
ライルンは無言でラスボスから地雷を受け取ると、蜘蛛に向かって狙いを定めた。
「ちょっ……ライルン??」
ライルンから、なぜか地雷に向かっての怒りの波動を感じた。ライルンは覚悟を決めて叫んだ!!
「くらぇえええ〜〜!! 核地雷ーーー!!」
凄い力で蜘蛛に向かって地雷を投げつけた!!
「ぎゃあああああぁあぁ〜〜〜!!」
会場に地雷の叫びが響き渡った。地雷がっ……地雷が何したってんだぁああ〜〜!!隠された力とかあるかボケェ〜〜!!ただの緊張からの震えだぁああ〜〜!!
案の定、蜘蛛は一撃で倒れた。
「勝者! 死神!!」
司会のお姉さんが手を上げながら叫んだ。
「なんだあいつら……コントみたいだな!」
「ネタでやってんだろ。いいぞー! やれやれ〜」
「死神……かっこいい!!」
観客は漫才でもやっていると思っているようだ。子供たちは羨望の眼差しでライルンを見つめている。
「ふひゃははははは!!」
ルノールは観客席で腹を抱えて笑っていた。やっぱりなんか腹立つ〜〜〜。
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