気持ちを新たに
地雷はバザーとにらめっこをしていた。
「どのスティックが良いんだか。さっぱりわからん」
どれにすれば良いのか決めかねている部分もあるし、懐が寒いのもある。こんな事ならイケメングッズに手を出すんじゃなかった……。
「万年金欠!! バンザーイ!!」
バザーの前でお手上げしていると、後ろから声をかけられた。
「うははっ!! 相変わらず元気そう」
「あーっ!! サブリ〜〜!!」
そこには珍しく元気なサブリがいた。サブリはいつもフラフラしてて、ちょっとゾンビみたいだったから新鮮だ!しかもお家エリアじゃない場所で会うなんて、今までなかったんじゃないか!?
「良かった!! サブリ、今までで一番元気そう!!」
「元気だよ〜!! ありがとう!! 転職したからね」
「おぉおおお!! 良かった!!」
もう彼は『かいしゃ』に縛られる事なんてないのだ!!これからは自分の時間を、ゆっくり自分の為に使える!!
「じゃあ今度! ゆっくり地雷と遊んで〜〜!!」
「うはは! ホント、そうしたいんだけど……」
サブリはちょっと恥ずかしそうにつぶやいた。
「結婚して、子ども出来たんだ……」
「えーっ!! マジかっ!!」
あまりそんな話をする事もなかったのでびっくりした。びっくりしたと同時に、凄く嬉しかった!!とてもとても優しかったサブリ。現実世界でも護る人を見つけたんだね……。
「だから、子どもの世話とかであまりこっちには来れなくて……」
「そっかそっか!! それは良い事だし、仕方ない!! サブリ、おめでとう!! 幸せにね!!」
「うはは!! ありがとう!!」
サブリの結婚報告の後、サブリは地雷に聞いた。
「そういえば、珍しくバザーに張り付いてどうしたの?」
「いや……それが急遽、回復役をやる事になって」
地雷は今まであった事をサブリに話した。
「なるほど。スティックを選んでた訳か」
「でも正直、回復不安なんだよね。きっと失敗するだろうし……。買ったら後には引けない気がして」
サブリはバザーを一目見ると、まるで飴玉を買うみたいにスティックを購入して地雷に持って来た。
「ほい、スティック!」
「へっ?」
地雷に貰ってくれといわんばかりに、スティックを差し出す。
「いやいやいや! これ最新の奴だよ! 絶対高いよ!!貰えないよこんなの!!」
「失敗してもいいじゃない!! やりたいな〜って思うのを我慢して未練になるより絶対いいよ!!」
答えになっていない所が、なんともサブリらしい。サブリはそのまま言葉を続けた。
「失敗も、時が来ると思い出に変わるんだよ。楽しい思い出に変わっていくんだ。だから、俺の代わりに楽しい思い出を作ってくれ!!そしてその話を聞かせてくれ!!」
「サブリ……」
「これはその話の料金分だよ!」
「わかった! ありがとう!! 頑張ってみる!!」
こうして地雷は、サブリから新しいスティックを受け取った。
◇
自分の家で装備の整理をしていたら、扉をノックする音が聞こえてきた。
コンコンコン!
急いでキッチンの隅に隠れる。扉が開いて誰かが入って来た。
「地雷〜!! いる〜??」
そるとちゃんだった。なんだか久しぶりに会う気がする。安心してキッチンの隅から出た。
「久しぶり、そるとちゃん!」
「久しぶり! あんた、キッチンで何してたの??」
「えっ!? あっうん、ちょっと……」
地雷がごにょごにょしてたら、そるとちゃんが不思議がっていた。
「あっ、そうそう! そるとちゃん!! 一緒にプリンスコンテストに出てくれない?」
「……プリンスコンテスト?」
地雷は今まであった事をそるとちゃんに話した。
「なるほど……。出たいけど、その日は用事があるわ」
「マジか〜〜!! 残念!!」
そるとちゃんがダメなら他は誰にしようかな??みんな優しくて頼りになるから誰でもいいけど……。
そんな事を思っていたらそるとちゃんが言った。
「ぽたんさんを誘ってみたら? 最近、リュウさんが忙しいみたいであまりログインしてないし」
「あーっ! 確かに言われてみれば!!」
そういえば最近、リュウさんを見かけていない。お仕事が忙しいのかな?
「じゃあ、ぽたんちゃん誘ってみよーっと!!」
「そうしなさい」
そんな感じでそるとちゃんとおしゃべりしていたら、再び扉をノックする音が聞こえてきた。
コンコンコン!
再び、キッチンの隅に隠れる。
「……あんた、何してんの?」
「お願いそるとちゃん! 地雷はいないって言って!!」
扉が開いて死神が入って来た。
「あらっ、そるとさん。こんにちは! 彼女を知りませんか?」
「こんにちは。ライル」
地雷は隠れながら二人の会話を見守った。
「地雷ならキッチンの隅にいるわよ」
ぎゃあああぁあああー!!!
キッチンの隅でガクブルしていたら死神がやって来た!ライルンは仁王立ちしながら地雷に言った。
「何、油売ってんですか? コンテストまでもうそんなに時間がないんですよ? しっかり回復役、慣れて貰わないと……」
「そ、そ、そ、そうだけんど……」
「チョップして遊んでる場合じゃありませんよ? さぁ! 練習、練習!!」
ライルンは首の後ろの防具の部分を掴むと、猫をつまむ様にして地雷をキッチンから引きずり出した。
ライルンはスパルタだった。酒場で適当に冒険者を雇って、何も言わせずに回復役をさせる。そしてやっぱり、棺桶を作っては二人で謝った。
「助けてー!! 助けてぇえ!! そるとちゃん!!」
泣き言を言う地雷に、そるとちゃんは笑顔で手を振りながら叫んだ。
「ライル〜!! 地雷を頼んだわよ〜!!」
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