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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第二章
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百聞は一見にしかず


 プリンスコンテストで、地雷は回復役をやらなければいけなくなった。でも、地雷にはある名案が浮かんでいた。回復役が二人ならば、そんなに大変じゃない!! 

 

「チムリ〜!! お願いがあるの〜!!」


「……何? どうしたの??」


 ライルンの家に凸して、チムリを拘束した。ライルンが来る前にチムリに話をつけなければ!!

 ライルンが来て『彼女を甘やかさないで下さい』なんて言われたら大変だ!!

 さっそくチムリに今まであった事を話した。


「プリンスコンテスト!? あのライルが!?」


「そうだよ!! ライルンが主役なんだよ!!」


「……よく、ライルがOKしたな」


 チムリは信じられないって表情をしながらつぶやいた。


「それでね!! チムリにも参加して欲しいの!! もちろん回復役として!!」


「まぁ、その日は空いているし、全然いいけど」


 やったー!!チムリがいれば安心だっ!!もう棺桶祭りにはならずにすむ!!あとはそるとちゃんを誘えばバッチリだ!!


「チムリ!! ありがとう!!」


 そう言ってニンマリしながら家を出た。家を出た後で、肝心な事をお願いするのを忘れていた事を思い出し、再び家に戻った。


「チムリ!! 回復教えて!!」



 こうしてチムリの、回復職への学びがスタートしたのである。


「教えてって言っても……やる事は以前に教えた事と一緒だよ?? あとはひたすら経験あるのみで……」


「ちょっと待ってチムリ!! 地雷はちょっと変わった視点から回復職をマスターしようと思ってるの!!」


「……はぁ」


「地雷は『デスマーチ』を攻略しようと思って!!」


「……えっ? 即死魔法?」


 回復職は『デスマーチ』という即死呪文を唱える事が出来る。でも、なぜかあまり使っている人を見た事がない。

 チムリは口をごにょごにょさせながら地雷に説明した。


「即死魔法はシステムとしてはあるけど、機能としては死んでるっていうか」


「使えないの!?」


「以前、ヤドカリみたいなモンスターを即死魔法でレベル上げする方法が流行って……下方修正されたんだ」


「え〜!! でもなんかさ!! 必殺仕事人みたいでかっこいいよね!!」


「……」


 なにかを悟ったチムリは、地雷に一枚の札を渡した。


「何これ!?」


「練習札だよ。それで練習してくるといい」


 練習札は初心者向けのシステムらしくて、簡単なボスに気軽に挑戦出来るらしい。名前の通り練習しやすくなっているのでやられる事はそうそうない。


「攻撃力は低いモンスターだけど、やばくなったらスティックで頭を叩くといい。気絶して行動不能に出来る」


「わかった!! 行って来る!!」


 練習札を空に掲げて、地雷はモンスターの元に旅立った。


「……はぁ。まぁ、百聞は一見にしかずって言うし」


「チムリ! お疲れ様です」


 物陰からそるとが現れた。


「……あの子は一体、何をしているんですか?」


 そるとが聞くと、チムリは遠い目をしながら答えた。


「なんか、アサシン目指すってさ……」


「……えっ? 殺し屋??」


 そるとが不思議そうな顔をしながらつぶやいた。





 地雷が練習札を空に掲げると、神殿みたいな場所にワープした。神殿の扉を開けると、ルノールみたいなピエロが地雷を待ってた。だが、地雷を見るなり吐き捨てる様に叫んだ。


「ちょっ! 俺は初心者用のモンスターだぞ!? お前、見た感じ中級冒険者じゃねーか!! やっと出番が来たと思ったらコレかよ……。帰れ帰れ〜!!」


 ピエロの野次に対抗する。


「わっ……私、今夜は帰らない!!」


「……はぁっ?」


 ちなみに今は昼間だ。地雷がいつか運命の相手に言ってみたい言葉である。


「いや、ちょっと言ってみたかっただけ」


「……お前、頭大丈夫か?」


 そして、ピエロにも心配される。


「俺は初心者用になってるから、お前からしたら弱いだろう。俺はお前みたいな奴にゴミクズみたいに倒されるのだけはごめんだ」


「大丈夫! 地雷は回復職を練習する為に来たんだ!」


 練習しに来たという言葉を聞いて、ピエロは安心した様だった。


「そうか! わかった。ならいい。いつでも来い!!」


「おういえ! では地雷戦士! 行きまーす!」


 そういえば今、戦士じゃなかった!!まぁ、細かい事はいいや〜。


「デスマーチ」


「デスマーチ」


「デスマーチ」


 ライルンみたいに反復横跳びしながら『デスマーチ』無双をした。ピエロの攻撃は弱くてあまりダメージにならなかった。体力が減って来たら、ピエロの頭を叩いて行動不能にして回復した。


「デスマーチ」


「デスマーチ」


「デスマーチ」


 そうやってずっと『デスマーチ』無双をしていたら痺れを切らしたピエロが言った。


「……なぁ、いつまでやるんだ?」


「気のすむまで!!」


「……そうか」


 ピエロは何かを諦めた様だった。


 一時間位たった頃、体力を回復しようとしてピエロの頭を叩いたら悲劇が起きた。


 バキッ!!


 チムリから貰ったスティックが折れた……。


「ああぁあああ〜!! 大事に使ってたのに!! スティックがぁあああーーー!!」


 折れたスティックの前で、ショックで泣き出す地雷!! その姿を見てピエロが慌てふためいた。


「ちょっ……なっ、泣くんじゃねーよ!!」


「うわぁあああぁああ〜〜〜ん!!」


 地雷が座り込んで泣いてたら、折れたスティックを紐で縛って補強してくれた。


「ほらっ! これでいいだろ! ハンカチ貸してやる!」


「うぅっ……。 ありがとう」


 ルノールみたいな顔のピエロなのにめっちゃ優しい。ルノールはこのピエロの爪の垢を飲むべきだ。

 ハンカチで涙を拭いて、ついつい鼻水までかんでしまった。


「チーーーン!!」


「汚ねぇなぁ……」


 10分くらいして、地雷が落ち着いてからピエロが言った。


「即死魔法を成功させたいのか?」


「うん! 必殺仕事人みたいにやってみたいの!」


「はぁ……。魔王様に『冒険者には悟られない様に優しくしろ』って言われてるしなぁ……」


 ピエロは地雷に付き合う覚悟を決めた。


「よし、わかった!! 俺はお前を攻撃しない!! だからお前も俺を攻撃するな!! そうすればスティックで叩かなくていいだろ??」


「うん!」


「ただ、俺もモンスターの端くれだ! 俺も『デスマーチ』を使う! どっちがやられても恨みっこなしだ!!」


「わかった!!」


 こうして二人で時計回りしながら『デスマーチ』無双をした。


「デスマーチ」


「デスマーチ」


「デスマーチ」


 一時間位たつとピエロが『デスマーチ』無双を一旦中断する。


「声が枯れて来たぞ!! 水分とれ!! 休憩だ!!」


「わかった!!」


 そうして狂った様に『デスマーチ』を続けて、ピエロとの仲間意識も育っていった。


「もう……スティックみたいに心も折れてしまいそう」


「諦めるんじゃねぇ!! ひたすら呪文を唱えろ!!」


「デスマーチ」


「デスマーチ」


「デスマーチ」


 何時間も何時間も唱えて、何回も何回も時計回りして、ついにその時がやって来た!!


「デスマーチ!!」


 ピエロが叫んだら、地雷の視界が暗転した。

 走馬灯みたいに『デスマーチ』した時間を振り返る。


――あぁ! ピエロさん……ついにやったんだね!!

 我が『デスマーチ』人生に悔いなし!!


 地雷は力尽きた。

 


 

読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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