緊急事態発生!?
「待っていました! 今、時間ありますか??」
後日、ライルンから再びラブコールが来た。最近不思議な位、よく声をかけてくれる。
「なになに? どうしたの??」
ライルンはとても焦っている様な感じで、地雷に聞いてきた。
「『ルノールの美術品』ってお店、知ってますか?」
「あぁ〜……、気持ち悪い店主の店だよ」
「気持ち悪い店主の店??」
ライルンが不思議そうな声色で言う。
「なんかね〜。品物はいいんだけど店主が残念なの!」
「なるほど! そうですか! わかりました! では現地で落ち合いましょう!!」
「……へっ?」
ライルンにしては珍しい位、強引だ。デートか!?デートなのかっ!?……まぁ、そんな事はないよねー。
久しぶりに『ルノールの美術品』の店に来た。相変わらず電気ピカピカの悪趣味な店だ。店内に入るとルノールがニタニタしながら近づいて来た。
「いらっしゃ〜い。おや、また来てくれたんだね!! ありがとう〜!!」
相変わらず、セリフは普通なのに顔が残念だ。
「すみません! 遅れました!」
ライルンも到着して店に入ってきたようだ。ライルンは店主の顔を見てちょっと後ずさりした。
「あら! そちらもまた来てくれてありがとう!!」
「……いや、僕は初めてこの店に来ました」
「んんんんん〜〜〜???」
凄い勢いでルノールがライルンに迫っていった。後ろに引き気味になるライルン……。急いでライルンに迫った為かルノールは何もない所で躓いた。
「……おっと」
コケてライルンに抱きつく。
「うわぁああぁああーーー!!」
ライルンは凄い悲鳴をあげて、思いっきりルノールをブン殴った。
バキッ!!!
「あはっあはぁ〜あぁああ〜」
凄い音がして店主が宙を舞う。何故かルノールは満足そうな顔をしていた。
「すっ……すみません。なんか反射でつい……」
「あはっあははははは〜」
「……」
ルノールはひっくり返りながら笑っていた。両手で胸を押さえながらつぶやく。
「身体にっ! 身体にっ! 電流が走った!! まさか!! こっ、これがっ!! ……恋??」
「ひっ!!」
ライルンが凄い勢いで壁まで後ずさりした。ライルンは最強の魔法使いなのに……。ルノールはある意味凄い奴かも知れない。ライルンが最強の魔法使いなら、ルノールは最強の変態と言った所か。
「やだなぁ〜……冗談だよぉ〜!! あはは!!」
「あの、ホント、すみませんでした」
壁に背中をつけたまま、ライルンは謝った。
「そういえばライルン! この店で何か探し物でもあったの??」
「はっ! そうだった!!」
ライルンは店内をキョロキョロ見渡すと、壁にかかっていた剣を指さした。
「あっ……あれだ」
あれは声剣だ。前とまったく同じデザインで作られている。やっぱり綺麗な剣だ。
「あの剣、また作ったの??」
地雷がルノールに聞くと彼は興奮ぎみに教えてくれた。
「特別なアイテムを導入する事により、より美しく!!よりクリアな声色を再現可能となった!! 美しいボディーを保つため!! 遠隔操作で声を出せるように、このネックレスから声を届ける事が出来る!!」
「へー」
あんま興味ない。
「なんという事だ!! あれは聖剣だ……。なぜ聖剣が二本も存在しているのだ??」
ライルンが真剣な感じで言っていたので地雷が説明してあげた。
「ライルン! 騙されちゃダメだよ! あれは声って書く声剣で聖なる剣じゃないんだよ。ボイスレコーダー機能付きのネタの剣だよ!!」
「ネタじゃない!! 美術品だ!!」
ルノールがプリプリ怒りながら反論してきたが、至極どうでもいい。
ライルンが地雷の後ろに隠れてルノールに言った。
「失礼を働いた身で申し訳ないのですが、あの剣を譲ってくださらないでしょうか?お金は払います」
「ん〜っ……」
勿体ぶった感じでルノールが悩んでいる。どうせダメって言うんだろうな〜……。
「いいよ。お金はいらない!!」
マジか!?あんなに渋ってたのに!?
「ただ! 一つ条件がある!!」
「……条件??」
ライルンが神妙な面持ちでルノールの話を聞いている。
「僕、プリンスコンテストの受付に行ったんだけど。何故か参加出来なかったんだよね……」
マジで参加しようとしてたのがびっくりだ。
「なんか受付しようとしたら『責任者に確認します』とか言っていつまでも戻って来ないし。やっと戻って来たら『すみません、責任者が不在で……』とか言われて。結局帰って来ちゃった」
受付の人……かわいそう。対応が大変だったはずだ。
「だから……僕の代わりにプリンスコンテストに出てくれないかな??」
「この僕が……プリンスコンテストですか?」
ライルンは少し不安そうな感じでつぶやいている。ライルンが……プリンスコンテスト!?それはぜひ見たい!!
「乗った!!」
ルノールの手を取ってギラギラした目で見つめた。
「ホント!? ありがとう!! なんだか無念でね……」
「大丈夫! 大丈夫! ライルンが仇をとってくれる!」
当の本人の有無は確認されずに話が進んでいく……。
「あの……僕を抜きで話を進めないでいただけますか?」
ライルンの願いも虚しく、地雷とルノールはプリンスコンテストの話でテンションMAXだった。
プリンスコンテストは約一ヶ月後に開催されるそうだ。準備をしっかりしておかないと!!
ちなみに、ルノールは声剣をその日の内にライルンに渡してくれた。目的の剣をゲット出来たというのにライルンは気が重そうだ。
「あぁ……僕は人前に出るタイプじゃないのに……」
「大丈夫、大丈夫!! 地雷も一緒に頑張るからっ!!」
落ち込んでいるライルンを励ます。
「僕は顔出しとか絶対しないですし、そんな奴がプリンスコンテストに出ていいんですかねぇ……。しかも絶対、あがってしまってセリフを上手に言えない気がする……」
「大丈夫! 大丈夫! 地雷にいい作戦があるの!! セリフに関しては地雷に任せてくれれば大丈夫!!」
「……はぁ」
ライルンの心はあまり晴れそうじゃなかったけど、地雷は正直、楽しくて楽しくて仕方なかった。
「るんるんるん〜♪」
「……」
そんな様子を見て、ライルンが地雷にちょっと意地悪そうな感じで言った。
「一緒に頑張ってくださるなら……当日は回復役をやって下さいね」
「……えっ?」
ちなみにプリンスコンテストでは仲間との掛け合いを見るという事で、何回か戦ってもらうらしい。そこでいかにカッコいい姿を見せられるかが鍵だ!!
「……いやぁ、また棺桶にしちゃうかもだし」
「僕は棺桶になりませんよ」
確かにライルンは棺桶にならなそうだ。
「僕が棺桶にならなければ問題ないんで、回復役やってくださいますよね?」
「うっ……」
「一緒に頑張って下さるんですよね? こうなりゃ僕も、もうヤケクソですよ。来るなら来いって感じです」
「あはは……」
そう来るとは思わなかった。地雷のテンションが一気に下がった。
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