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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第一章
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止まない雨はない


 地雷は虹色の傘を先生に差す。雨でずぶ濡れになっていた先生が顔を上げた。一瞬、雨が止んだから気になって顔を上げたのだろう。

 地雷と先生の目が合う……。これはなんとなく、救いを求めている目だと思う。私と一緒の目……。


「先生……私、決めたよ」


 一緒に指輪を求めて冒険してて、なんとなく感じていた事がある。先生も現実世界で、あまりうまくいってないんじゃないかも知れないって。

 地雷はちょっと緊張ぎみに言った。


「私、履歴書書いて……就職する。履歴書、白いけど」


 先生はびっくりした顔をした。そりゃそうだよね!!いきなり現実世界の話をするんだもん。


「……そっか」


 先生は一旦下を向いてそう答えた。でもその後、顔を上げて……ちょっと笑っていた。


「頑張ってね」


「うん、私……頑張るよ」


 先生が現実世界でどうかなんて、地雷の想像の中での話だから『一緒に頑張ろう!』とか言えなかったけど、私なりの気持ちは伝わったと思う。


 いつの間にか、雨が止んでいて……綺麗な青空の世界に虹が出来ていた。凄く綺麗な虹だった。


 

「絶望じゃない……。なんて綺麗な虹なんだ」


 呆然と魔法使いがつぶやいた言葉が聞こえた。


 

 しばらく虹を見ていたら、いつの間に先生の家に戻っていた。先生の心が晴れたから戻って来られたんだと思う。


「皆様、色々すみませんでした……」


 先生が頭を下げて謝ったけど、誰も先生を咎めたりしなかった。ぶっちゃけ先生はまったく悪くないし。操られていたんだから仕方なかったと思う。

 安心したらなんだか急に気が抜けて、疲れがドッと出てきた。それは地雷だけじゃなくて、みんなもそんな感じだったみたい。


「あ〜……、なんか眠くなってきた」


「ゲーム世界でも睡魔ってあるんだなぁ」


「当たり前だろ〜。とりあえず帰ってみんなで休もうぜ!これからの事はその後だ」


 他の冒険者の面々とも合流して、それぞれの家に帰った。考える事は一杯あるけれど、自分の家に着いたらもう意識が半分くらいなかった。

 とりあえず寝てから考えよう……。ベッドにダイブしたら意識が途切れた。なぜか遠くで落雷の音が聞こえたような気がする……。


 

 ◇



  こうして14名の冒険者と、協力してくれた沢山の冒険者によって世界は救われた。


 彼らの戦いを知る者、イベントだと思っている者、まったく知らない者それぞれだ。


 

 戦いが終わり、Now loadingはバンの店でうなだれていた。自分と魔法使いの力量の差を目の当たりにしてしまったからだ。


「走りにしても、魔法にしても、俺はアイツに勝てる気がしない……。一体、俺の何がいけないんだ……」


 Now loadingが愚痴をこぼすと、バンが元気づけた。


「あの黒い服のまま走った奴だろ? あいつは異常だ! 比べる方がおかしいって! マジ人間じゃねーわ!」


 表で相談会をやっている間、ミユキとアキは裏の方でヒソヒソ話をしていた。


「アキさん、戦いの最中、私になり変わってくれてありがとう!」


「うふふっ! 噂のセレブアイドルに変装するのは大変だったけど、ちょっと楽しかったわ!!」


「そう言って貰えると助かる!」


 その後、ミユキは一番重要な事をアキに聞いた。


「それで……。私のチームリーダーの先生の事だけど」


「あぁ、彼ね!! 調べはついているわ!!」


 アキは笑顔でミユキに言う。


「操られていた先生の事は、バンから運営警察に話をつけたから大丈夫よ!」


「そっか……なら、良かった!!」


「彼をバンしたら……誤バンになるからね!」


 二人の安心をよそに、表ではバンとloadingがギャーギャーと何かを騒ぎ始めていた。


「お前!! 戦ったばかりでランニングマシーンなんかに乗るな!! 4ぬぞ!!」


「嫌だっ!! 俺はアイツを超えるんだ!!」


 Now loadingはランニングマシーンに挑戦したが程なくして力尽きた。





 チムリは魔法使いと一緒に家に帰った。疲労からあまり言葉をしゃべれない……家に着いたらそのままベッドに倒れ込んだ。


「うぅ〜……もう、無理ぃ〜……」


「大丈夫ですか?」


 あんな事があったのに魔法使いは元気そうだ。彼が持ってきた水を受け取って飲み干すと聞いてみた。


「お水ありがとう。ライルは大丈夫なの?」


「僕は大丈夫です」


「マジか〜……」


 若さかな?と、チムリは思う。魔法使いはコップを台所に置くと外に出ていこうとした。


「どこいくの?」


「外の花壇にお水をやってきます」


「そっか。あまり無理しないようにね! 俺は寝るわ! もう限界〜!! おやすみ〜!! あぁ〜明日からどうなるんだろう……」


「……大丈夫ですよ」


「……えっ?? 何か言った??」


 魔法使いの言葉が聞き取れなくて、思わず聞き返す。


「いえ、なんでもありません。おやすみなさい」


「おやすみ〜!」


 その後、一分もかからずにチムリは寝た。



 チムリが寝た後、魔法使いは青い空を高く高く飛んだ。普通の人間には出来ない芸当だ。空の高い部分にたった一人で到着するとつぶやいた。


「いでよ……神の雷! えっと……サンダーレイン?」


 空から無数の雷が降りて来た。まさに、晴天の霹靂だ。

 雷は眠りに入った冒険者達に直撃していく……。


「ぐはっ!!」


 雷が直撃すると、アバターから魂が飛び出してきて高い空に登って消えていった。魂は、本来あった場所にそれぞれ戻っていく……。


「さて……、今回の僕の大仕事はこれで終わりですね」


 

読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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