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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第一章
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メンテ明け


 しばらくするとブラックホールみたいな穴が消滅した。

多分、現実世界の緊急メンテが終わったのだろう。長い戦いだった。

 そるとちゃんとぽたんちゃん、三人で休んでいたら大活躍だったリュウさんが走って来た。


「はぁはぁ……。死ぬかと思ったぜ!!」


「……お疲れ、リュウ」


 ガチ勢の会話は少なかった。あまり話さなくてもお互い分かり合ってるって感じだ。

 突然、リュウさんがこちらに振り向く。そして、なぜか熱視線で地雷に迫って来た!!なになになになに!?バーチャルバージョンだから余計にイケメン度が上がる!!


「地雷戦士!! 俺は君を探していたっ!!」


 リュウさんに真剣な眼差しで見つめられて、思わず思っている事を口にしてしまった!!


「えっ!? なになに? 愛の告白??」


 人前じゃちょっと……とか思ってたら、少しの沈黙の後に言われた。


「違う! すまんがタイプじゃないっ!!」


「グハッ!!」


 心にダメージを受けて地雷が地面に倒れ込んだ。


「告白もしていないのに、フラれるって……地雷に10000のダメージ!! ぐぁああぁああ!!」


 そのままひっくり返った状態で、殺虫剤をかけられたゴキブリみたいにジタバタする。

 あまりにも酷い有様だった様で、リュウさんが冷めた目で地雷を見ていた。

 ……あぁ、その目、最高です。



「えっと……そろそろ、話をしていいか?」


「あっ、はい、すいません」


 リュウさんは静かに話し始めた。


「まず、バーチャルバージョンは架空の設定だ。今起こっているこの現状は、なぜそうなっているのか不明だ」


「……えっ!? だって、さっき運営警察がこれはドッキリイベントだって……」


「……すまん。アレは俺の嘘だ」


 ガーン!!どおりで声がリュウさんに似ている訳だ。


「なるほど……。冒険者を安心させる為ですね。バーチャルバージョンってシステムにしても、ちょっと納得出来なかったので腑に落ちました」


 そるとちゃんは冷静に分析してたみたい。地雷は信じきってしまったよ。


「このバグを引き起こしている元凶がいる。地雷戦士には、この元凶を解決して来て欲しいんだ」


「……ちょっと待って待って!! 何かと戦うって事?? 自慢じゃないけど強いプレイヤーじゃないよ!?」


 むしろどちらかと言うと足を引っ張るプレイヤーだ。きっとそんな事はリュウさんも知っているとは思うが。

 そんな不安を知ってか知らずか、リュウさんは地雷に語りかける。


「いいかい? 物事というのは、力の強さだけでは解決出来ない事が多い。力でねじ伏せても、それは絶対的な解決にはならない。その時は良くても、後々またトラブルになる」


「ふむふむ」


 それは納得出来るが、その事になぜ地雷が関係してくるんだろうか?


「君には神の加護がある。その力を正しく使って欲しい」


「んっ? 髪の加護? まぁ、ハゲてはいないけど」


 リュウさんがまたちょっと微妙な表情になる。


「なんだか、話が噛み合っていない様だが……」


「えっ? 髪あってない?? ヅラじゃなくてちゃんと地毛だよ!?」


 地雷が髪の毛を引っ張って見せると、なんだか呆れた表情をしていた。……何故だ!?


「えっと。とりあえず……これが行って貰いたい住所だ」


 リュウさんから紙を受け取ると、中には家の住所が書かれていた。

 ……それは地雷がずっと行きたくて、それと同時にずっと行きたくない場所だった。


「……」


 多分、顔に出ていたんだろう。そるとちゃんが言った。


「なるほど……。理解しました。この子一人では心配なので私も行きましょう」


「あぁ、そうしてくれ!! きっとその方が彼女も心強いはずだ!!」


 話がまとまったあたりで、身内の仲間達がボチボチ集まって来た。一番最初に来たのはチムリと魔法使いだった。


「みんな無事で良かった! お疲れ様! 俺、何もしてないけど……」


 チムリは、魔法使いと一緒に違うエリアで戦っていたみたいだ。でも、片っ端から魔法使いが無傷で敵を倒しまくっていくので、ほぼ出番がなかったらしい。


 作戦会議をして、とりあえず地雷とそるとちゃんとチムリ、そして魔法使いが偵察に行く事になった。


「それじゃあ、みんな……行ってきます!!」


 笑顔で言ったけど……正直、気が重い。どんな顔で会えばいいかわからないし……。


「……あんた、大丈夫?」


「うん! 大丈夫! そるとちゃんがいるし!!」


「まぁ、そうだけど」


 本当にそるとちゃんがいて良かったと思う。地雷の心なんて顕微鏡のプレパラートだ。すぐ折れてしまうし、間違った判断をしてしまう。一旦立ち止まって、冷静に物事を判断出来るのは彼女のおかげだ。


 

 紙に書かれていたのはチムリの先生の家だった。家に着いたらあの時と何一つ変わらない家で少し安心した。先生が元凶だなんて嘘なんじゃないの??

 庭でコソコソ様子を伺っていたら、家の中から声が聞こえてきた。


「……どなたでしょうか? そこにいるんでしょう?? お茶でもいかがですか??」


 声を聞いたらなんか気が抜けた。それと同時に、せつない感情が湧いてくる。


「……俺が様子を見てくる」


 チムリが小声で言うと、草むらから出ていった。家から二人の話し声が聞こえてくる。


「こんにちは! お変わりありませんか? こんな状況なので様子を見に来ました」


「あら! 来て下さったんですね! ありがとうございます! とりあえずお茶淹れるので座って下さい」


 これのどこが元凶なんだ??先生は普通だし、拍子抜けだよ。もう、帰りたい……。帰らせてくれ。


「……ところで。庭で一体、何をしていたのですか?」


「あっ、いや、いるかな〜って思って……」


「……そうですか。三人も連れて……」


 いきなり空気が変わった。家の庭にいたはずなのに、黒いモザイクの様な世界が広がっていく……。

 チムリ以外の三人も、先生の前に姿を曝け出された。


「……なんだ、これ??」


 チムリが動揺しながらつぶやくと先生が答えた。


「何って、ただのバグだよ……」


 

読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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