チーム集会所
ガチ勢によるガチハウジングが終了し、新しいチーム集会所のお披露目会を迎えた。地雷は壁のおつかいマラソンをしていただけだったので中を見ていない。あのガチ勢のハウジングだからとても楽しみだ。
ワクワクしながら扉を開けると、開けたすぐそばに大きいキッチンと小さいテーブルと椅子があった。凄く狭い空間だ。
「えっ……嘘でしょ?」
ハウジングを始める前はあんなに広々してて、がらんとした印象だったのに……嘘みたいだ。
その他の部分は、見事に壁で埋め尽くされていた。正確に言うとキッチンスペースの横に壁が立てたけられた入り口が何個もあり、手の込んだ迷路になっていた。
ガチ勢が作ったので完成度が凄まじく、下手に動かすのは勿体無い位のダンジョンだ。
「お……俺の家が、俺の家が……ダンジョンに……。うはは〜……」
サブリが呟きながら後ろにひっくり返った。
「ちなみにベッドとタンスは三階にある」
淡々とぽたんちゃんが説明した。いつも白目をむきながら立っているサブリが三階に到達出来るのだろうか?
「どうだ地雷戦士!! 素晴らしい出来栄えのハウジングだろう??」
リュウさんが興奮しながら地雷に言う。凄く完成度は高いし、本当に素晴らしい出来だけど……この狭い中、チーム集会が出来るんだろうか?
「……うん。本当に凄いよ」
「そうだろう! そうだろう!」
リュウさんはとても楽しそうだ。壁を見ながら『俺のセンスは最高だ!!』とか言っていた。
ガチ勢は嬉しそうだが、地雷は少しサブリが可哀想に思えてきた。
せっかくなのでキッチンスペース横の入り口から迷路に挑戦してみた。辺り一面、壁だらけで本当に壁ドン祭りが出来そうだった。
「もう一回、壁ドン出来るドン!!」
……まぁ、イケメンいないけど。
一人でふざけてたら案の定、迷子になった。入り口から近いんだか遠いんだかよくわからない。
「地雷、迷子になっちゃった! 助けて〜!!」
地雷が叫んだらサブリの声が聞こえてきた。
「大丈夫か!? 今行く!!」
どうやらサブリも迷路に入ってきたみたいだった。サブリの声が遠くなったり、近くなったりした。
訳もわからずウロウロしていたら、キッチンスペースの部分に到着する事が出来た。
「地雷、入り口に戻れた!」
「そうか!! よかったよかった!!」
それっきりサブリの声が聞こえなくなった。どうやらどこかの迷路の途中で寝たらしい。
「こんちは〜。 弟、回収しに来ました」
「あっ、リウルさん……」
いつもみたいにリウルさんがサブリを回収しに来た。
「あれっ? 弟は??」
「……えっと。この中のどこか」
地雷が指差した迷路を見て、リウルさんがひっくり返った。その姿がなんだかサブリと一緒で、不謹慎だけど笑ってしまった。やっぱり兄弟だ。
◇
チーム集会は予定通りサブリの家で行われた。だが、家の中にチムメン全員が入らない為、外で実施する様になった。
チムメンの何人かが気軽な気持ちで迷路ダンジョンに入り痛い目を見て、あまりサブリの家に入らなくなったのも大きい。
そのため、なぜか私達のチーム集会を見学に来る冒険者達もちらほら出てきたりした。
「見て見て! あれが有名な変わり者が集うチームよ〜」
「何で大きい城みたいな家があるのに中に入らないのかしら……?」
「さぁ? やっぱりみんな変わってるからじゃない?」
暑い日も寒い日も基本的に外だが、雨の日だけは隣のリウルさんの家に鮨詰め状態でチーム集会を行う。
コンパクトサイズのリウルさんの家に集まるので、ギュウギュウでおしくらまんじゅうが出来そうな感じだ。新しいメンバーが増えた時にリウルさんの家に収まるかどうかが悩みの種になっている。
「何故だ! 何故家に入らない!?」
リュウさんがサブリに向かって話している。最近サブリは迷路ダンジョンの圧が凄い為か調理以外はリウルさんの家にいるらしい。
「いや……。本当に凄いハウジングでとても感謝しているんだけど……」
少しためらいながらサブリが話始めた。
「あの壁の圧が凄くて……。トラウマなんだ。あんな高い壁を俺は乗り越えられないって思ってしまったりして……」
するとリュウさんがじっとサブリの目を見て言った。
「いいか! 肝心な事を言う! 壁を乗り越えようと思うから辛いんだ!!」
「まぁ、そうだけど」
サブリがうつむきながら答える。
「壁の向こう側に行く方法は沢山ある。下から潜ったり、回り込んだり……だが一番簡単なのは壁を壊す事だ!!」
「壁を……壊す?」
「そうだ! 自分の常識や枠組みという壁に囚われるんじゃない! ピンチの時は壁を壊せ! お前なら出来る!」
一方的にリュウさんがサブリに力説すると、用事があるみたいで帰ってしまった。サブリは限界だったみたいでそのままいつもみたいに倒れる様に眠りについた。
「リュウの言いたい事、なんとなく、俺もわかるんだけどな……。どうしたもんか……」
サブリを回収しながらリウルさんが呟いた。
 




