now loading
今日はミユキさんの豪華なお家にチムリと遊びに来ていた。ほんと金ピカでゴージャス!!そして迷子になりそうなくらい広いお家だった。
「えっ? チムリさんのお家が消えた!?」
「そうなの! 手伝ってもらいながら魔法の練習してたらなんかマジックみたいに消えちゃったの!! 眠っていた地雷の力が暴走して!!」
「さすが地雷ちゃん!! 絶好調ね!!」
話ながら中二病のキメポーズをする。ミユキさんは地雷の話を楽しそうに聞いていた。隣でチムリが思い出した様にうなだれる。
「あぁ……あの家マジで頑張ってお金貯めて買ったし、気に入ってたんだよなぁ〜……」
その様子を見て、ミユキさんがある事を閃いた。そして、面白い提案をチムリに投げかける。
「ねぇ……じゃあちょっと賭けをしない??勝ったら賞金出すから」
「マジで!?」
「私の知り合いと勝負をして勝ったらだけどね!」
ミユキさんが顔の横で手をパンパンってやったらボディーガードの人達が来た。ボディーガードに説明をすると彼らはダッシュで何かの準備にとりかかる。
ボディーガードの人達がカーペットみたいなのを二枚ひいてその上に機械を置いた。
「……何コレ?」
「ランニングマシーンよ」
「この世界にそんな物あるの?」
「私にかかればなんでもアリよ☆」
この人は運営警察ともつながりがあるのかもしれない!それ位のマネーパワーを持っている!!
コンコンコン!
ノック音が響いて扉が開くと、威勢のいい赤髪の男性がやって来た。
「よぅ! デートの誘いか? 夜の誘いか?」
「賭けの誘いですよ」
「賭けかぁ〜」
なんだかちょっと残念そう!?ミユキさんとは凄く仲が良さそうだ。
「この人はチームリーダーのレストさん! こっちは防具鍛冶をしてるバンさん!二人に勝負して貰います」
勝負の内容は単純で、お互い体力に自信がありそうなフレを呼んで競ってもらうとの事だった。
バンさんと呼ばれる人は一人の少年を連れて来た。少年は賭けの内容を聞くと気合い十分な感じでランニングマシーンに乗った。
「俺は後衛だけど!! Now loadingと呼ばれる程、毎日毎日走っているんだ!!絶対負けない!!」
変わった名前だなぁ。Now loadingって……。ゲームのロード画面の事かと思ってた。
チムリは無敵の魔法使いを呼んだ。……はっ!!もしかして薄着になるから素顔が見れる!?!?地雷はそこに密かな期待をしていた。
だが、魔法使いは事情を聞くと、そのままの格好でランニングマシーンに乗った。
「ちょっとあんた!! まさかその格好のままで走るつもり!?」
魔法使いは顔を帽子で隠したまま少年に謝る。
「すみません。僕は顔や身体を見られるのがあまり好きではなくて……この格好でないと走れないのです」
「でもあんた……汗かくし暑くなると思うよ?」
「僕は普通の人ではないので大丈夫です」
マジ普通の人じゃない!!みたいな顔をする少年。うんうん、それが普通の反応だ。
「せっかくの賭けだし、俺達も持ち金を賭けようぜ!」
バンさんはチムリに提案する。きっと様子を見て勝てると踏んだのだろう。バンさんは大金をチムリに提示した。
「まぁ……払えなくはないけど」
「なんだよ〜! お前は仲間を信じられないのか?」
「……わかった! 俺は仲間を信じる!!」
バンさんにふっかけられて、賭けに応じるチムリ!なんだか面白くなって来た!!
そしていよいよ勝負が始まった。ゆっくり歩くスピードからスタートだ!!
「あんた、マジでその格好で大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。心配していただいてありがとうございます」
歩きながら魔法使いを心配する少年。優しい子だ!勝負をしながらも相手を気遣ってる。
少しスピードがアップする
「うん、凄くいいウォーミングアップだ!」
「はい! ちょっと身体が温まってきましたね」
更にスピードがアップする
「はっ、はっ、はっ……」
「……」
更に更にスピードがアップする
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「……」
めっちゃスピードがアップする
「ひぃ〜、ひぃ〜、ひぃ〜」
「……あの、大丈夫ですか?」
足を高速で動かしながら声色を変えずに魔法使いが少年を心配する。魔法使いの体力はどうなっているのだろう……。
速度マックスになる
「……うわぁあああー!!」
「……」
速度がマックスになった途端に少年がランニングマシーンから転げ落ちた。少年が倒れた途端に魔法使いがランニングマシーンからジャンプして降り、手を差し伸べる。
「あの、怪我はないですか?」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
少年はしゃべれない様子だった。魔法使いが背中を優しくさする。しばらくすると息が落ち着いてきた。
「あ……ありがとう」
「いえ。こちらこそありがとうございました」
ミユキさんが二人を見届けて手を上げながら叫ぶ。
「勝者! レスト!!」
「やっ、やったぁああー!!」
「マジかよ!? 負けたぁああー!!」
それと同時にチムリとバンさんも叫んだ。二人とも泣いていた。涙の意味はそれぞれ違うと思うが……。
少年はバンさんに顔を向けると謝り始めた。
「すまん……負けちまって。俺は今日からNo loadingだ。Now loadingと呼ばれる資格なんてない……」
「別にお前悪くないだろ。一文字草(w)がなくなっただけで、だいぶネガティブだなお前」
「また訳わかんねー事言ってんじゃねーよ!!」
バンさんにツッコミ(?)を入れた後、少年は魔法使いに向き直って問いかけた。
「俺はあんたをみくびっていた。そんな服で俺に勝てる訳ないと思っていた。完敗だ……。最後に、参考にしたいから普段している事を教えて貰っていいか?」
「僕のですか……?」
魔法使いは上を向きながら考えると答えた。
「普段は裁縫したり、読書したりしますね。あとは絵本や小説を書いたりしています」
めっちゃインドア……。っていうか創作するんだ!!そういう趣味があるのは知らなかったな。
少年の方はというと、愕然としていた。そりゃそうだよね。インドアの人に負けるなんて思わないよね……。
「あんたは俺のライバルだ!! 次は負けないからな!!」
少年が魔法使いにそう叫ぶと、扉に向かって走っていった。さすがNow loadingだ。彼はきっと目標に向かって走り続けるだろう。
「なぁ、物語書いてるのか!? 俺、見てみたい!!」
チムリが魔法使いにワクワクしながら声をかけた。でも、魔法使いはちょっと悲しそうな声色でこう言った。
「僕は……ハッピーエンドの物語を書けないんです」
――その夜、バンの防具鍛冶屋にて
「ごめんアキさん……俺、負けちゃって」
俯く少年にアキさんは優しく励ます。
「謝る事なんてないわ。いつも一生懸命頑張ってくれているじゃない! 今回だって! いつもありがとう」
少年にお礼を言った後、バンに顔を向けて叫んだ。
「てめぇ! 何勝手に店の金使ってんだ!! 4ね!!」
バンのケツを蹴っ飛ばす。やめておけばいいのに、バンはついつい出来心でミユキのボディーガードの真似をしてしまった。
「あっ、あっ、ミユキ様〜」
火に油を注ぎ、更に更に強い力でケツをもう一回蹴っ飛ばされた。
「いだだだだ!! マジでごめんなさい!! ホントごめんなさい!!」
ケツを蹴られながら、俺はミユキのボディーガードにはなれないと思うのだった。
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