舞台裏にて
いよいよ偽りのプリンセスコンテストの日がやってきた。気合いはバッチリだ!!
「地雷さん、これ……ライルさんから預かってきたから受け取って!!」
「んっ? ライルンから?? これは……腕輪??」
不思議そうな表情で赤い宝石がついている腕輪を見つめていると、チートさんが腕をまくって同じ腕輪を見せた。
「無線機みたいな役割になってるんだ。俺の声も届くし、地雷さんの声も聞こえる。二人の会話は、ライルさんにも伝わるようになっている」
「おぉ〜……さすがライルン。抜かりないなぁ」
仕事が早いっていうか、なんていうか……。まぁ、変わった事とか、困った事とかになったら腕輪から連絡って事ね。オッケーオッケー。
「地雷さん、ライルさんからの伝言だけど……この会場は沢山の力の制限がかかっている関係で、誰がプレイヤーなのか、ゲーム世界の人物なのか、悪しきモノなのかが全然わからないそうだ」
「えっ!? 現実世界の悪いヤツって……めっちゃ凄い力持ってない!?」
「あぁ……しかもなぜかあのライルさんですらも、聖剣の力を感知出来ないらしい」
「そうなのぉ!? なんだかよくわからない感じになってるんだねぇ!!」
恐るべし現実世界の悪いヤツ。それにしてもマジでこんなコンテストなんて開いて何したいんだろ??
まぁ、いいや!とりあえず私のお仕事はライルン召喚の儀式をやるだけだし!!
「じゃあ、受付すませて舞台裏行ってくるよ〜! また後でね〜ん!!」
「地雷さん!! 気をつけるんだよ!!」
「わかったぁー!!」
チートさんと別れた後、のんびりとした足取りで舞台裏の方へ行くと急に声をかけられた。
「あのっ……お姉ちゃん!!」
「んっ!? パステルちゃん!?!?」
パステルちゃんは月に一回くらいファンレターを届けてくれる可愛い女の子だ。私なんかより彼女がプリンセスコンテストに出た方がいいかもしれない。
それにしても……今だに私のどこを気に入ってくれてファンになってくれたのだろう。謎である。
「あれっ?? 眼帯に……黒マント!?」
「はいっ! お姉ちゃん大好きなのでお揃いにしてしまいました!! あの……嫌でしたか?」
「いやいやいや、そんな事はない!! むしろそんなに好きでいてくれてめちゃくちゃ嬉しいけど、よく私の格好がわかったね??」
「うふふっ! 私、エスパーなので!!」
「…………」
パステルちゃん、エスパーだったのか!!そうかそうかそれなら納得!!……な、訳はないけど。まぁ、そういう事にしておこう。
「お姉ちゃん! レッド応援団長が出来ない時は……私が応援団長補佐として頑張るので、安心して下さいね!!」
「……応援団長、補佐!?!?」
パステルちゃん……いつの間に『世界に花を届け隊』に入っていたんだろう。
「おっと!! そろそろ時間になっちゃうかな!? パステルちゃん!! また後でね!!」
「はい! 頑張って下さい!!」
手を振ってパステルちゃんと別れた後、舞台裏の方に入っていく。中にはきらびやかなドレスに身を包んだ美しい人達が沢山いた。
「……なんか、黒いマントで変な格好なの私ぐらいか」
そりゃそうだよな。プリンセスっつたら、やっぱりヒラヒラキラキラのドレスを着てんのが普通だわ。
「あっ、スタッフさん? 悪いんだけど何か飲み物を頂けないかしら??」
綺麗なお姉さんが私に話しかけてきた。どうやら舞台裏にいるスタッフと間違えているらしい。まぁ、黒いマント着てるし……黒子みたいなもんだよね。
「……なにがよろしいですか?」
「う〜ん……少し緊張しているから、気分を落ち着かせる様な飲み物がいいんだけど」
「かしこまりました!! 暖かい飲み物でもよろしいでしょうか??」
「構わないわ」
私が右手を上げて指をパチンと鳴らすと、可愛い小さいテーブルが現れた。黒マント効果スゲ〜!!
「まぁ!! 素敵なテーブル!! どうやったの??」
「うふふっ。それは……秘密です!」
なんだかめっちゃ気分がいい!!執事にでもなった気分。私は黒マントの中からフタのついたトレーを取り出すと彼女の前でフタを開けた。
「こちら……カモミールティーでございます。気分を落ち着かせる効果がありますよ」
「まぁっ!! 素敵っ!!」
フタを黒マントの中にしまった後、テーブルの上にティーポットとティーカップを置いた。
ティーポットを静かにゆっくりまわしながらカップにハーブティーを注ぐ。
「……どうぞ」
「ありがとう」
彼女はゆっくりとカモミールティーを何口か飲むと、静かにティーカップを置いて笑顔になった。
「ちょっと気持ちが落ち着いてきたわ。どうもありがとう!!」
「良かったです!!」
私ってハーブティーとか、紅茶とか、お茶って好きなんだよねぇ。こんな所でその知識が役に立つとは思わなかったけど。
よしっ!せっかくだし、他のプリンセス達にもお茶を振る舞ってこよう!!
「もしもし……お飲み物はいかがですか??」
こうしてプリンセス達に声をかけ、様々な飲み物を振る舞った。さっぱりとした口あたりのジャスミンティー、爽やかな気分になるミントティーやレモングラス……熱い飲み物が苦手な方には冷たいダージリンティーやブラッドオレンジジュース。
「おや……君は……同じチームの」
「あれっ? もしかしてローズさん!?」
声をかけられて後ろを振り向くと、相変わらずバックに薔薇を背負ったローズさんがそこに立っていた。プリンスコンテストに参加した時と同じ格好で、背景ではなく……肩パッドから薔薇が生えてる。
ある意味、ローズさんも私と同様……異様な存在かもしれない。まわりはドレス姿の人ばっかだし。
「ローズさん! プリンスコンテストの時は残念でしたね。とってもかっこよかったのに……」
「いや、いいんだ。参加賞のティッシュは貰ったし」
「…………」
まさかローズさん。参加賞のティッシュの為にコンテストに出てたとか……ないよね?
「ローズさんも、飲み物いかがですか?? 私のオススメは……こちらです!!」
指をパチンと鳴らしてテーブルを出した後、マントからトレーを出し、ティーセットをテーブルに並べる。
「おぉ……これは!! ローズヒップティーだな!!」
「さっすがローズさん!! ビタミンCたっぷりで美容にいいですよ!!」
「ありがとう! さっそく頂くよ!!」
美味しそうにローズヒップティーを飲むローズさんを見て、なんだか私の方も幸せになった。これですべてのプリンセスに飲み物を振る舞えたかな。
『地雷さん! 地雷さん! 聞こえる??』
左手の方からなにやら声が聞こえてきた。この声はチートさんだ!!
私は誰もいない部屋の角に移動すると、左手の腕輪に向かってしゃべりかける。
『聞こえるよ〜ん!!』
『おぉ! 良かった! 異常はない??』
異常……ねぇ。綺麗なお姉さんがいっぱいで、みんなドレス着てて、なんか私自身が異常っていうか……。
『う〜ん……とりあえず、ローズさんがいてぇ、後……みんなにお茶出したよ!!』
『ロッ……ローズさん!? 誰!?!? あと何……お茶ぁ!?!? 地雷さん、何やってんの!?!?』
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