イベント
暗闇の中……見知った顔が手招きしながら私を呼んでいる。ここは一体、どこだ??なぜ、私はここにいる??
彼は私が近づくと、慣れ親しんだ声で話しかけてきた。
「予想通り、よく状況がわかっていない状態ですね。お忙しい中……呼び出してしまってすみません」
「えっ? ライルン?? 私、ログインしたっけ?」
「ログインですか? してませんよ」
今までこんな事なかったからびっくりした。やっぱりゲームを起動した訳じゃないんだ。……って事は、何の為にライルンはここに呼び寄せたんだ??
そういや『イベント、一緒に行きましょう』とかってライルン言ってたな。まさか……。
「もしかして……イベント??」
「はい。イベントです」
そんなに私とイベントしたかったの!?そりゃ、私だってライルンとめっちゃ遊びたかったけどさぁ!!でも、遊びの為に神の力ってヤツを使っちゃったら職権濫用とかになるんじゃ……。
私の心配をよそに、ライルンは淡々と説明を続ける。
「あぁ、ちなみに言っておきますけど。時間は凍結された状態です。なので、時間を気にする必要はありません。安心して下さい」
「なるほど。仕組みはよくわからんが、時間を気にしなくていいならありがたい」
いつのまにか周りを見渡すと、慣れ親しんだゲーム世界の街中にいた。神の力って凄いなぁ……。
出来れば息抜きも兼ねて一カ月位遊ばせてくれないかしら。最近は分単位でスケジュールを立てる事もザラになってきたし。
「じゃあ……一カ月位遊んでもいい?」
「何言ってるんですか。ダメに決まってるでしょう」
「…………」
だよねぇ〜。ライルンならそう言うと思ったよ。遊び目的で無闇に力を使ったり、私を呼び出したりする訳ないか……。
「また……何かあった? ゲーム世界の危機とか??」
「おや、察しがいいですね。当たりです」
「やっぱり」
まぁ、安定のいつものパターンってやつかな??どうせバグの根源でしょ??毎回毎回……よくもまぁ飽きずに聖剣を狙ってくる。
「バグの根源でしょ??」
「いいえ。違います」
「違うんだ!?」
このゲーム世界で問題起こすっていったらバグの根源しかいなかったけど……今回は違うのか。
「とりあえず歩きながら話しましょう。見えますか?? あの、紫色の渦が……」
「うん……見えるけど」
「あれがイベント会場の入り口です」
「あれが……入り口??」
運営さん……手ェ、抜きすぎじゃないですか??毎回毎回イベント会場の移動手段は、なんかよくわからない台風みたいなワープゾーンからだよね。
ライルンは黙々と歩き続け、私はよくわからないままその後を付いていく。
「あっ! 創造主様! お待ちしておりました!」
「おぉ! ラスボスじゃん、久しぶり〜」
ワープゾーンの近くでラスボスが手を振っている。なぜここにラスボスがいるのかは不明だが、どうやらライルンと待ち合わせしてたようだ。イケメン二人に囲まれて……ハーレムパラダイス状態、気分は……いい。
「創造主様、実は私達の住む世界が……新たな侵略者に乗っ取られようとしているんです」
「私達の住む世界?? 新たな侵略者??」
何言ってんだ??まだ、魔王になりきってるのかな??
頭からハテナマークを出しまくっていると、ライルンがラスボスに話しかける。
「あの。彼女はあなたをプレイヤーとして見ているので、困惑しているのかと……」
「あっ! そっかぁ!! 忘れてた」
ラスボスはこっちに向き直ると、再び私に話しかける。忘れてたって、どういう事だろう??
「いいですか? 創造主様、あそこに悪いヤツがいるんでブッ倒してきて下さい!!」
「あっ、うん……わかった」
「私はプログラム上、現実世界に干渉がまだ出来な……じゃ、なかった」
「んっ?」
「私は用があってどうしてもブッ倒せないので、創造主様お願いします!!」
「あっ、わかったよ」
詳しい事はぶっちゃけよくわかんないままだけど。要は悪い奴を成敗すればいいって事ね。オッケーオッケー。
「聖剣の力を狙う者が現実世界の方でも現れたという事です。今まではゲーム世界のみの出来事でしたが、今回は現実世界……規模が違います」
「えっ!? 現実世界でもそういう悪い奴っているの?? 悪霊みたいな感じ??」
「えぇ……まぁ。詳しく話そうとするとややこしくなるし、話が長くなるのでそう思ってもらうのがわかりやすいかもしれません」
「ふむふむ」
「イベント会場をワープすると、現実世界とゲーム世界の狭間……要は二つの世界を繋ぐ入り口の様な空間になっているのです」
なにそれ〜……なんか複雑〜……そういう難しいっていうか、よくわからない話って私の頭では理解出来ない。
「あと、助っ人を呼びました」
ライルンはそう言うと、私達が歩いてきた方を向いて手を振り始めた。
「チートさん! こちらです!! こっちこっち!!」
遠目に、長いローブを着た人物がキョロキョロしながら声の出どころを探している。
あれは……チートさんだ!!懐かしくて、嬉しくて……大歓喜でチートさんの名を叫んだ。
「チートさぁあああぁああ〜〜んんっっ!!」
クソデカボイスで叫んでみたら、街の人達が一斉にこちらを見る。もちろんチートさんも……。
「ちょっ……声! 声、デカすぎ!!」
周りを気にしながら小走りでこちらの方にやって来た。なんだかちょっと女性の姿じゃないから不思議な感じがする。マゼンタ学院ではネカマだったし。
「地雷さん! 元気そうでなにより!!」
「チートさんも!! めっちゃ元気そうで良かった!!」
こうして男性姿のチートさんの笑顔を見ていると、なかなかイケメンな気がする。そういえばマタメンテエルフさんとはよろしくやってるんだろうか?
「チートさん、お待ちしておりました。あなたは地雷さんの大事なサポート役ですからね。頼りにしています」
「あっ……はい。えっと……状況がよくわかっていないんですけど。どういう事なのでしょう? あっ! ラスボスさんも!! その節はどうも……」
「チートさん、あの時はありがとね〜!!」
こうしてイケメン三人がなにやら真剣な顔をしながら話し合いを始めた。あぁ……いい。実にいい。現実世界で、日々の生活に追われていてこういうの忘れてたよ。アドレナリン出てくるわぁ〜……。
「ちょ! 地雷さん!! 鼻血鼻血!!」
「うはっ……うははっ……」
どうやら鼻血が出ていたみたいで、チートさんが一生懸命ハンカチで拭いてくれた。
ハーレム状態……最高だぁ!!天国だぁ!!でも、いい男をはべらすって……本当はそるとちゃんみたいに容姿端麗な人の方が絵になるんだよなぁ。
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