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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第四章
115/125

過疎


 ゲームしない日が増えていった。仕事や家事、義実家との付き合い……などなど。沢山の事をこなしていく日々に、自由に使える時間はどんどん減っていく。


「幸せだけど、なんか疲れたなぁ……」


 変わり映えのしない日々は、さながらモノクロームの世界といった所か。待ち望んでいた幸せを掴んだというのに、人間というのはなんとも欲深いものだ。


「ゲーム……しようかな」

 

 一時間くらいなら遊べるかもしれない。あそこに行けば地雷戦士として楽しい時間が過ごせる。

 少しの時間でもいい。私は期待を膨らませ、ゲームの電源をつけた。


「……あれっ? 誰もいない」


 仲間は誰一人としておらず、賑やかな会話もなく、なんだか静かすぎる印象を持った。

 皆、私と同じで忙しくて来れくなったのかもしれない。

 それにゲームの人気も下火になってきたから、ログイン自体をしなくなった人もいるだろう。


「そりゃ、当たり前だよな」


 どんなゲームでも辿っていく未来だ。仲間達は『さよなら』なんて言わない。言う人もいるけど、だいたいはなんとなく『さよなら』になっていく……。


「もっと話をして、感謝の言葉を言えば良かった」


 ゲームをしてみたけど全然楽しくなくて。みんながいたから楽しかったんだと……再確認した。

 凄く不思議なんだけど。現実世界の幸せを夢見ながらゲームしていた日々が……輝いて見えた。


「そろそろ、落ちようかな……」


 ログアウトしようとすると、そのタイミングでログインしてきた仲間が声をかけてくれた。


「地雷さん、お久ぶりです」

 

「あっ! ライルン、お久っ!」


「なかなかお忙しそうですね。良い事です」


 良かった。ライルンと会話出来ただけでもログインした甲斐があるというものだ。


「ログインしたの一カ月半ぶりくらいかなぁ」


「おぉ……もう、そんなにたつんですね」


 毎日毎日、ログインして……ゲームして……ドンチャン騒ぎしていた日々が思い出される。


「……そるとちゃんに会った?」


「会いましたよ。三ヶ月前くらいですかね」


「そっか〜」


 そるとちゃんも忙しいのかな?生活環境変わってきたみたいだし。後は違うゲームとかもやってたりするかもしれない。


「連絡……とってないんですか?」


「今はあまり。正月と誕生日くらいかなぁ」


「そうですか」


 今まで連絡を取る時は『何かやらかした時』だった。彼氏に騙された時、彼氏に殴られた時、彼氏にお金を盗られた時……とか。確か彼氏が怖くてトイレに何時間も篭った時……とかもあったっけ。うん、ホントロクなもんじゃないな。


「あっ……あはは〜……」


「どうされました?」


「いや、なんか黒歴史思い出してきた……」


「…………」


 きっと何かにすがっていたかったんだと思う。今ならすぐ別れればいいのにって思うけど。藁をも掴む思いってこの事だな。

 あぁ……そるとちゃんに泣きついて何時間も愚痴を聞いてもらったっけ。彼女は翌日仕事なのに睡眠時間削って私に寄り添ってくれた。それを何年も何年もだ。もぅ……頭が上がらない。


「どうかされたんですか?」


「えっ?」


「なにか気に病んでいた様に見えたので」


「…………」


 さすがライルンだなと思う。ライルンはいつも察しがよくて、色々とフォローしてくれるんだよなぁ……。


「いや、なんかさ……ちょっと寂しくなっちゃって。ゲームから離れてしまうと仲間との繋がりもなくなってしまうし……」


「まぁ……そうですよね」


 そるとちゃんは大事な人だった。私の相方であり、人生の恩人だった。大切な事は彼女から教わったと思う(たまにちょっと我儘だったり、間違ってるなって思う事もあったけど)だから死ぬまで仲良しだと思ってた。

 でも、私が連絡をとったら彼女はまた心配してしまう。『何も連絡しない』それが、彼女の為でもあるのだ。少し……いや、かなり寂しいけど。


「なんて言うんでしょう。でも……それで良かったと思いますよ」


「……えっ?」


 ライルンはそう言うと、淡々と話を続ける。


「それが成長したって事なんだと思います。きっと……そるとさんも安心したはずですよ」


「そっか。そう……だよね」


 これから先、関係は気薄になっていくだろう。でも、私は彼女の事を忘れない。絶対絶対、忘れない。大事な大事な私の……師匠だ。


「おっと、いけない!! 夕飯作らないといけないんだった!! 明日の準備もあるし……」


 久しぶりにライルンと会ったのも嬉しかったし、話が楽しくて……時間を気にするのを忘れてしまった。


「また今度、時間ある時一緒に遊ぼ!!」


「えぇ。一緒にイベントでも行きましょう」


 正直、次はいつ会えるかなんてわからない。でも、やっぱり『さよなら』って言いたくないな。


「地雷さん……」


「うん?」


「たまに立ち止まって後ろを振り返る事もあると思います。でも、少し立ち止まったら後は振り返らずに前を向いて歩いて下さい。それで……それでいいんですよ」


「うん、わかった。わかったよ。ありがとう、ライルン」


 考えてみればそるとちゃんに変わってそばにいてくれたのって、もしかしたらライルンだったのかもしれないな。

 

読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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