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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第四章
114/125

プロローグ


 地雷戦士の人生はなかなか手強い。一つの問題がクリア出来たと思ったら、新たな問題が出てくる。やっぱりこの先一人でいるって……寂しいんだよねぇ。

 

「地雷と一緒に棺桶に入って頂けませんか?」


「お断りします」


 そるとちゃんに速攻で拒否された。無理もない。ゲームを通して10年近く面倒を見て貰ったのだから棺桶の中ぐらいゆっくりしたいだろう。仕方ない、諦めよう。


「どうか一緒の棺桶に!!」


「いやぁ〜……ちょっときついわ」


 仕事して働く様になり、会社の人とか、知り合いとか、沢山の人に聞いてみたけど良い返事は返って来ない。

 ヤケクソになってお世話になってる女の先輩にも聞いてみる事にした。


「先輩!! 私……そんなに性格は悪くないと思うんですよ!! 身なりも牛丼の並盛りレベルだし!! もし……私が男性だったら一緒に棺桶に入ってくれますか??」


 まくしたてて言う私に、先輩は優雅にミルクティーを飲みながら足を組んで質問に答えてくれた。


「…………私、馬鹿な男って嫌いなのよね」


「ぐっはァアアアア!! ドSなお返事!! ご褒美!! ありがとうございますっっ!!」


 こんな感じなので薄々……もう一人で黒歴史と棺桶に入るしかないと思っていた。腹を括るしかないと。

 でも……諦めきれない自分がいた。まるで息を吸う様に棺桶に勧誘する日々。


「棺桶に!! 棺桶に!! どうか私と棺桶にぃぃぃーー!!」


 まるで棺桶のセールスだ。葬儀屋に就職してもいいかもしれない。その日もいつもの様に棺桶セールスに励んでいた。


「どうか私と棺桶に!!」


「えっ、いいけど?」


「へっ?」


 よく聞こえていなかったのかもしれない。意味をわかっていなかったのかもしれない。……だがしかし、そんな事はどうでもいい。


――ドンッ!!


「ほんじゃあ、お言葉に責任持って頂きましょうか??」


「…………えっ?」


 気付いたら壁ドンしていた。私の理想とはまったく違う壁ドンになってしまったけれど。

 まぁ、いい……棺桶に入ってもらえるなら。それにしても前にもこんな事あった様な……。


「あの……そういえば、年上ですよね??」


「うっそ!! 年下なのォオオオ〜〜!?」


 しっかりしてそうだったから年上かと思っていた。私は年上がタイプだったのだ。でも最近、自分より年上の人が少なくなった気がする。


「違う……そうじゃない」


「何が??」


 問題ばかり起こして万年問題児で……いつまでも少女の気分でいたら、気付いたらおばさんになっていたのだ。


「認めたくないものだな!! 若さゆえの過ちというものをぉおおお〜〜!!」


「もしもし?? 話、聞いてます??」


 まったく会話にならない地雷の事を、困惑した表情で男性は見つめていた。

 そしてそのまま一緒になった。まさかプロポーズみたいな言葉が『棺桶』になるなんて思ってもなかった。

 それによくよく考えたら……一緒に入るのって棺桶じゃなくて墓だよね。





 結婚して何年かの月日が流れた。結婚生活は綺麗な部屋で美味しい料理を作り、優雅な時間が流れる日々……なんて事はなく。

 物がごちゃごちゃした掃除の行き届かない部屋で焦げ焦げの料理を作り、新幹線みたいな時間が流れる日々だった。


「理想と現実の違いが凄すぎる……毎日毎日、タスクをこなす日々……辛たん……」


「どうでもいいけど早く飯作って貰えます? これから夜勤だし寝たいんで」


 いつもの様に冷めた目で見ながらツッコミをしてくる旦那。時々、その表情がそるとちゃんと被って見えた。

 たまに思ってしまう。料理が上手な訳でも、掃除がマメな訳でも、若くもない……取り柄のない私だ。この人にはもっと良い人がいたのでは??


「ねぇ……なんで私と結婚したの? 仲良くなってそんなに長い時間過ごしてないしさぁ」


「えっ……何? 急に……」


 そう言うと旦那はどこか遠い目をしながら淡々と語り出した。


「地雷だってわかっていた……むしろ、特大級の爆弾だと思っていた。でも、俺が拾わないとコイツ一人だろうなって思ったらかわいそうになってしまった」


「なるほど」


 確かに良心に付け込んだ部分はあったのかもしれない。そるとちゃんもそんなタイプだったな……。


「あぁ〜……若いねーちゃんにしておけば良かった。なんで俺はこんな前世お笑い芸人みたいな奴と一緒になってしまったんだろう」


「残念だね! もうクーリングオフ出来ないし」


「本当だよ……嫁をクーリングオフしたい」


 ため息をつく旦那が少し可哀想になったので代案を出す事にした。


「もし……私が先に逝ってしまったら、新しい人と新しい人生を歩んでもいいよ」


「えっ!? マジ!?!?」


 目を輝かせながら旦那は話を続けた。


「出来るだけ早く頼む!! 後、死亡保険かけてからにしてくれよな!!」


「……………」


 なんだか腹が立ったのでやっぱり長生きする事にした。


読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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