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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第三章
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いつもの日常


 朦朧とした意識の中、誰かが俺を呼んでいる。誰だ??誰が俺を呼んでいるんだ??

 

「ちょっと!! ゲームしたまま寝落ちしないでって言ってるでしょ!!」


「…………うぉっ!?」


 唐突に声をかけられて、持っていたコントローラーを落としてしまった。後ろを振り向くと、ご機嫌ナナメの嫁が仁王立ちで立っている。


「あっ……えと、起こしてくれてありがとう」


「どういたしまして」


 良かった。これ以上、機嫌が悪くなる事はなさそうだ。でも、一体何の用があったのだろう?


「何かあったの?」


「あなた宛に荷物が届いたのよ」

 

「荷物??」


「よくわかんないけど。リビングに置いたから早く持っていってちょうだい」


 嫁はそう言うと忙しそうに出ていってしまった。


「…………」


 誰もいなくなる部屋。なんだか不思議な感覚なんだけど……今まで長い旅にでも出ていた様な感覚がある。まぁ、きっと寝ぼけているだけだと思うんだけど。

 それにしても……荷物??ネットで何か買ったんだっけ??いや、つい最近は何も買ってないはずだ。


「何だろう?」


 独り言をつぶやきながら、まだ働いていない頭で階段を降りる。リビングの扉を開けると、とても大きい袋状の荷物が置かれていた。


「何このでかい荷物……」


「知らないわよ! 掃除するのに邪魔だからすぐ持ってって!!」


「あっ……うん」


 俺は荷物についている宛先のタグを確認した。


「なんだ店長かぁ〜……こんなでかい荷物送ってきてなんなんだろ??」


 『店長』は電気屋の店長をしている。機械のメンテナンスも出来るんだとか……なんとか。だからあだ名がそのまま『店長』だ。


「はぁ……部屋まで持っていくか。そんな重くないけど運びずらいな」


『店長』は一緒にゲームをしている仲間だ。つい最近、オフ会をやって更に仲良くなった。悪いやつじゃないんだけど……凄くうるさい。まるでラジオみたいにずっと喋っている。


「さて……開けてみるか」


 ゴソゴソと袋状の荷物を開けいくと、凄くでかいぬいぐるみが出てきた。とがった耳に、羽が生えてる人形だ。


「なにこれ? エルフ人形??」


 しっかし、この人形……見れば見るほどになんかムカついてくるな〜……。何でだろ??


「あれっ? 背中にボタンがある……」


 俺は近くにあったスイッチの電源を『ON』にした後、背中にあったボタンを押してみた。


『ギャハハハハハハハ!!』


「……なにこれ、キモっ」


 ボタンを押すとリアル店長の笑い声が聞こえてきた。ふざけた笑い声がイライラを更にかきたてる。


「こんなでかいぬいぐるみどうしろってんだよ……」


 狭い俺の部屋に、このぬいぐるみはでかすぎる。正直……置き場所に困るぞ。


「とりあえず、穴の空いた壁を隠してみるか」


 壁ドンで空いた穴を隠す様に配置してみた所、凄くいい感じに収まった。穴は隠れたけど……部屋が狭い。


「はぁ……まぁ、しばらくはいいか。穴も隠れるし」


 どこかの部屋にスペースが出来たら移動しよう。それまでは我慢だ。

 片付けようと思い、ラッピングされた大きい袋をたたもうとしたら、底の方に何かを見つけた。


「何だこれ? メッセージカードか??」


 どうやら店長が俺に宛てたものらしい。いつも話が長いから長文かも知れない。


『よう、チート!! 業者から貰ったんだけどせっかくだからプレゼントするよ!! 録音機能付いてたから俺の声入れといた!! ありがたく思えよ〜!!』


「…………」


 何だこれ??ふざけてんだろ。あいつ絶対、置き場所に困って俺に送りつけてきやがったな。


「ちくしょう……ログインしたら文句言ってやる!!」


 イラついた心を抑えながら独り言を言っていたら、下の方からヒステリックな声が聞こえてきた。


「ちょっと!! 一体これはなんなのよ!!」


 やばい、やばい、やばい!!あれは相当怒っている時の嫁の声だ。

 俺……なんかしたっけ??ヘソクリがバレた??それとも内緒でゲームソフト買ったのがバレた!?

 大きい足音がゆっくりと階段を上がってくると、俺の部屋の扉が凄い勢いで開いた。


――バンッ!!


「あなた!! これはどういう事か説明してちょうだい!!」


 鬼の形相で一枚の紙切れを俺に押し付けてくる。俺はそれを……恐る恐る確認した。


「えっ……ゲーム課金、五万円!? そんなに使ったっけ??」


「なにしらばっくれてんのよ!!」


 嫁には悪いけど本当に思い当たる節がない。でも、記憶を辿っていく時間は残念ながらなさそうだ。


「はぁああああぁあああぁ〜〜〜…………」


「…………」


 来るぞ壁ドンが!!タメの時間もあるからこの一撃は相当でかい壁ドンだ。逃げる術は100%ない。

 俺は嫁をなだめつつ、店長がくれたぬいぐるみの方へゆっくりと移動していく。


「ちょっ……落ち着い……落ち着いてぇぇええ!!」


「問答無用!! はぁアアァアア!!」


――バキッ!!


 鈍い痛みを感じたと思ったら俺はブッ飛んでいた。ブッ飛んだ俺を……ぬいぐるみが優しく受け止める。


『ギャハハハハハハハ!!』


 どうやら電源を切り忘れていたらしい。壁ドンの衝撃でボタンが押され……イラつく声が部屋に響く。


「三ヶ月はお小遣いなしですからね!!」


 嫁はそう言うと、ドスドスと凄い足音をたてながらリビングの方に戻っていった。


「三ヶ月小遣いなしって……きっつ!!」


 俺はつくづく思う。ラスボスとか、魔王とか、悪の根源みたいなのより、世界で一番……嫁が怖い!!


 〜第三章 完〜


読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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