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明日は檜になろう  作者: 夜空雷流
第三章
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結婚報告1


 俺は現実世界に帰る為、マタメンテエルフと結婚式を挙げる事になってしまった。今日は地雷さんに結婚式の事を伝えるつもりだが、憂鬱で仕方ない。


「地雷さん、ちょっといいかな?」


「あっ! チートさん。うん、いいけど……」


 なんだか返答がぎこちないし、心なしか目が泳いでいる。やはり俺の部屋に入った事は間違いなさそうだ。

 人気のない場所に地雷さんを呼び出すと、マタメンテエルフを呼んで三人でたわいのない話を始めた。


「ねぇ、ライルさんってなんで死神って呼ばれてるの?」


「ライルンは死神プリンスなんだよ。顔を見てしまうと魂を抜かれてしまうんだ!!」


「そっ、そうなんだ……」


 そういう設定なのかな?地雷さんの中二病はだいぶ重症だ。ライルさんも言ってたけど、こりゃ治らないな。


「おっと、こんな話をしている場合じゃなかった。マタメンテエルフ、腕輪外してくれ」


「あいよ〜」


――ポンッ!!


 マタメンテエルフが腕輪を外すと、煙の中から人間の姿になったマタメンテエルフが出てきた。


「あっ……マタメンテエルフさん。大きくなれるんだね」


「どう? なかなかイケメンでしょ?」


「…………」


 人間になっているマタメンテエルフを地雷さんは俺の部屋で見ているからな。リアクションはそんなに大きくない。


「ほんでさ! 地雷ちゃん!! 話があるんだけど」


「……んっ? 何??」


「実は俺達!! 結婚する事になったんだ!!」


「…………はっ?」


 マタメンテエルフは俺の肩に手を置くと、自分の方に引き寄せた。芝居だから仕方ないってわかってるけど凄く気持ち悪い。なんか鳥肌たってきたし。

 くっつく俺達を見て、地雷さんは目が点になっている。まぁ……当然そういう反応になるよね。


「…………」


「…………」


 なにこれ、なんか凄い気まずい。……っていうか間が持たない!!それよりも何よりも……速攻でマタメンテエルフと離れたい!!


「じゃっ、じゃあ……そういう事だからよろしくね地雷さん」


「俺達、これからデートなんだ! またなぁ〜!!」


 伝える事は伝えたのでこの場を去ろうとすると、後ろから凄い叫び声が聞こえてきた。


「ちょぉおおっと待ったぁあああぁああああ!!」


 後ろを振り向くと、凄い形相でこちらに向かって来る。そして、その勢いのままマタメンテエルフに声をかけた。


「ちょっとチートさん借りるよ!! いいっ??」


「おっ……おう」


 地雷さんの迫力が凄くて、マタメンテエルフもタジタジだ。


「チートさん、ちょっと付いてきて」


「うっ……うん」


 言われるまま地雷さんに付いて行く。なんだか怒っているみたい。地雷さんは凄いスピードでズンズン歩いていくけど……一体、どこまで行くんだろう??

 そう思っていたら、ある壁際で地雷さんが止まった。


「ちょっとここに立ってくれる?」


「あっ、うん……わかったよ」


 言われた通り壁際に立つと、地雷さんが真剣な眼差しで俺を見つめてくる。


――ドンッ!!


 地雷さんは壁際に手をつくと、静かに話し始めた。


「逆なら良かったのに。ずっと夢見てたのに!! 私の理想の壁ドンと違うぅぅうう〜〜!!」


「…………」


 そうか。これが正規の壁ドンというやつか。嫁がやる壁ドンは異例なんだろうな。人をブン殴って壁に穴を空けるなんてきっと嫁だけだ。


「そんな事よりチートさん……奥さん、どうするの??」


「…………」


 なんとなく予想はしていたけど……やはりか。もしかしたら地雷さんはそこをつっこんでくるんじゃないかと思っていたよ。

 だから俺は……困らない様にそこだけは答えを用意していたんだ。


「んっ? 奥さん?? あぁ……嫁の事かな??」


「そうだよ!! お嫁さんの事だよ!! 残念ながらこの世界は一夫多妻制じゃないよ??」


 異世界転生で一夫多妻制ってメジャーみたいだしなぁ。だが……ゲーム世界も、現実世界も、ここは一夫一妻だ。


「ごめん、ごめん。俺の嫁ってさ。チワワの事なんだ」


「えっ? チワワ??」


 キョトンとする地雷さん。よしっ!!ここでいっきに地雷さんを畳み掛けるんだ!!


「凄く可愛いんだよ。機嫌悪くて怒ると怖いし、気分屋みたいな所もあって。でも……キャンキャン言って寄ってこられるとなんだか許しちゃうっていうか。まさに俺の嫁だったよ〜!!」


「…………」


 地雷さんと話す時はほとんど聞き役だったからな。嫁の話はそんなにはしていなかったはずだ。

 地雷さんごめんね。本当は犬なんて飼ってない。


「ワ……ワンちゃんだった??」


 地雷さんはつぶやくとその場にヘナヘナと座り込んでしまった。きっと……ショックだったんだろうな。


「地雷さん、大丈夫?? ごめんね、なんか誤解させちゃって……」


「ううん、大丈夫。それならいいの」


 地雷さんはそう言うと、フラフラしながら立ち上がった。


「なんか調子悪そうだけど、平気??」


「あっ、うん……部屋に帰って休めば大丈夫だと思う」


「辛そうだし送ろうか??」


「大丈夫、大丈夫!! マタメンテエルフさん待ってるし行ってあげて!! 結婚おめでとう〜……」


 そう言うとフラフラしたまま寮の方へ消えて行ってしまった。送ってあげたかったんだけど、この状況で俺がいても辛いだけだしな。


「早く地雷さんの心を返してあげないと……」


 きっと今は辛いけど、地雷さんの為でもあるんだ。もう少しだけ……我慢していてね。

 

読んで頂いてありがとうございます!!楽しい作品になるよう頑張っています!!良かったら、評価とブックマークよろしくお願いします!

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