今後の方針
「えっと……ライル様……」
「あの、大丈夫です。ライルと呼んで下さい」
ライルさんが穏やかな神様で良かった。とても話しやすい。ぶっちゃけ……神様とか現実世界で言われたら信じられないけど、ゲーム世界の中だからな。今なら神様を信じられる。
とりあえず……本題に入ろう。神様ならきっとなんとかしてくれるはずだ。
「ありがとうございます。ライルさん……お願いがあるのです。マタメンテエルフを助けてやってくれませんか? 俺がゲームクリアになると、誰もがマタメンテエルフの事を忘れてしまうんです」
ライルさんは静かに俺の話を聞いている。俺は引き続き話を続けた。
「そうなるとあいつは一人になってしまう。俺にとってもあいつは大事な友達なんです。なんとか……出来ませんか??」
俺の話を聞き終えると、ライルさんはゆっくりとした口調で話始めた。
「やはりマタメンテエルフさんの事が心配だったのですね。それについては僕もどうしようかと考えておりました」
「本当ですか!?」
「はい。今日はその事について話をするつもりで来ました」
神様はちゃんとマタメンテエルフの事を考えていてくれたって事なんだな。……良かった。
引き続き話をしようとしていたら、ナイスタイミングで当の本人が戻って来た。
「チート!! 早く!! ここから離れよう!! あいつが戻って来る前に!!」
どうやら上手くチャカさんを撒いたみたいだ。でも、ゆっくりする余裕はなさそう。
「ライルさん。急ですみませんけど場所を変えましょう」
「わかりました」
こうして俺達三人は急いで俺の部屋に戻った。部屋に入った瞬間……マタメンテエルフはヘロヘロになって机に倒れ込む。
「はぁ〜〜……助かったぁああ〜」
毎回毎回チャカさんの命中率は高いからな……相手する方も大変だ。
「あっ……お茶、淹れますね」
俺はそう言うとその場を離れた。とりあえずお茶でも淹れて一息つきたい。正直……まだ状況を完璧に飲み込めてないしな。ちょっと状況を整理をしたい。
でも、俺はその場を離れた事を後悔する事になる。お盆にお茶を乗せて戻ったら、マタメンテエルフの声が聞こえてきた。
「へぇ〜……あんたが俺を作った神様ってやつ??」
「まぁ、そうなりますね」
「いいよなぁ〜……神様ってやつは。力も権力も欲しいものは全て持っててさぁ。やりたい放題だし、人間とか俺みたいなの……見下してるんじゃない??」
俺は急いでドアの扉を開けた。まずいまずいまずい!!お茶なんて淹れるべきじゃなかった!!
「おいっ!! お前……言い過ぎだぞ!!」
「…………」
「…………」
シーンと静まり返る部屋。空気が……重い。そんな中、ライルさんはゆっくりとマタメンテエルフに話始めた。
「マタメンテエルフさん。あなたを不安にさせてしまって申し訳ありませんでした。あなたをそのままにするつもりはありませんでした。ただ、方向性を決めるのに時間がかかってしまって。でも、もっと早くあなたに伝えるべきでした」
「…………」
マタメンテエルフはライルさんの話を黙って聞いている。ライルさんは引き続き話を続けた。
「マタメンテエルフさん、僕と一緒に来ませんか?? しばらくは僕の下で働く事になりますけど……雷と電気なら相性も悪くないでしょう」
「それって……マタメンテエルフ、神様になるって事?」
つい、突っ込んで聞いてしまった。神様についていくって事は……そういう事だよね??
「まぁ、そういう事になりますね」
「俺が……神様??」
話を聞いていたマタメンテエルフが動揺し始めた。まぁ……急すぎる話だし当然の反応だと思う。
「ですがマタメンテエルフさん。神だからと言って……力も権力も欲しいもの全てが手に入る訳ではありません。そう考えると、神も人もあまり変わらないかもしれませんね」
「そうなのか?」
「はい。そう見られがちではあるんですけど……。むしろ沢山のものを持っている者の方が、一番欲しいものを手に入れられなかったりします」
「えっ!?」
「まぁ……色々な物事を見てきた統計上ではありますが。他を手に入れるって事は、何かを犠牲にするという事でしょうか……」
「…………」
少し黙った後、ライルさんは上の方を向いて話を続ける。
「でも僕はそれでいいと思うんですよ。一番欲しいものは手に入らないかもしれないけど、そうやって優しさとか強さとかを身につけるんじゃないでしょうか。あっ……話が脱線してしまいました。すみません」
「…………」
なんとなく、また部屋が静かになってしまった。よしっ!!ここは俺が空気を変えないと!!
「良かったじゃんか!! マタメンテエルフ!! ライルさんきっと優しいし、楽しく過ごせると思うよ??」
「…………」
マタメンテエルフは黙ったままだ。やっぱりまだ動揺しているのかな??でも、一人になる事はなくなったし……神様になれるなら良いんじゃないか??
そう思っていたら、マタメンテエルフはポツリとつぶやいた。
「……人間に、なれないかな?? チートやチャカさんや地雷ちゃんに……また、会いたいんだ」
「お前……」
そうか……神様になったら、なかなか俺達に会えなくなってしまうもんな。
「やはりそうなりましたか……。予想通りです」
マタメンテエルフのつぶやきに、ライルさんが答える。
「そう言うんじゃないかと思って人間になれる様にも手続きをしてきました。あなたは優秀そうでしたので少し残念です。ただ……人間になるには条件があります」
「条件?」
「はい。ご存知の通りここであった出来事は潜在意識の中に残る形になって忘れる様になっています。ただ、稀に思い出してしまう事もあるらしく……保険の為、あなた達は少し離れた所での関係性になります」
「……どういう事??」
「簡単に言うと、一期一会の関係性って事です」
「……なるほど」
仲良くなりすぎて、ここでの事を思い出してしまうからって事か。ちょっとせつない気もするけど……仕方ないね。
「それでもいい。俺は……人間になってまたこいつらと会いたい。例え、一期一会の関係で短い時間でしか過ごせなくても」
「……わかりました。では、その様に手続きをしていきますね」
「…………」
こうしてマタメンテエルフが人間になる事が無事決まった。一時はどうなるかと思ったけど、これでやっと安心出来るな。
「あっ……あと……」
「んっ?」
少し気まずそうにマタメンテエルフがライルさんに向けて言った。
「その……色々言いすぎたよ。ごめん……」
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