地雷さんだけが使える聖剣1
待ちに待った満月の夜がやってきた。でも、一体どうするつもりなんだろう。あれから何も連絡なかったし、こっちから地雷さんの部屋に行くべきか……。
「チート殿。地雷殿は何をするつもりなのだ?」
部屋に来ていたチャカさんが俺に質問をしてきたけど、俺にもよくわからない。っていうか、チャカさんはなぜここにいるんだろう……。
「正直、俺もよくわかってないんだ。とにかく地雷さんの部屋に行ってみて……」
――コンコン!!
「チートさん……いる??」
来た!!地雷さんの声だ。扉を開けてみると、黒いマントを身にまとった地雷さんの姿がそこにあった。顔色は良さそうみたいだな……良かった良かった。
「えっと……学院裏に来て欲しいの」
「わかった。学院裏だな」
聖剣の力を使うから人気がない場所が良いのだろう。俺達は急いで学院裏に向かった。
学院裏に着くと、地雷さんは聖剣を取り出して剣先で地面に何かを描き始める。
「ちょっと離れていて。この模様を消さない様に……」
「わかった」
地雷さんは自分を中心に円の様なものを描くと、まわりにミミズみたいな文字を書き始めた。もしかしてこれは魔法陣か??
「なぁ……マタメンテエルフ。あの模様って何の模様なんだ?? 魔法陣みたいだけども」
「悪いけどよくわからないよ。初めて見る」
マタメンテエルフでもわからないのか。つくづく不思議な魔法陣だ。
「これで良し!……っと」
どうやら準備は整ったらしい。その後地雷さんは模様の中心で踊りを始めた。よくわからない踊りを黙って見守る俺達。
だいぶ時間がたったけど、いつまで続くんだろう……。そう思っていたら突然、後ろ向きの状態で地雷さんの動きが止まった。聖剣を空に掲げて叫び始める。
「生と死を司る我らが神よ!! 聖剣……ライルンバーの名の元に……我に力を与えたまへ」
地雷さんが叫び声を上げると、魔法陣が光出した。一体……何が始まるっていうんだ!?
「地雷さん!! これは何なの!? 大丈夫なの??」
「力を解放するから……伏せて!!」
「……えっ!?」
そう言った瞬間!!光っている魔法陣から突風が吹き荒れて、後ろに倒れそうになる。
「いでよ!! Death god Prince!!」
なになになに!?降霊術!?召喚魔法!?地雷さんの使う聖剣ってそういう類いな訳??聖剣ライルンバーとかDeath god Princeとか……よくわからない!!
「おい……チート、落ち着いて聞けよ? Death god Princeっていう事はだな……」
「まさか……死神!?」
地雷さん!!まさか死神を召喚する気なのか!?死神って、死神って……大丈夫なのっ!?!?
俺が焦っていると、魔法陣から出ていた光が消えて突風が止み……いきなり静かになった。
「…………なんだ??」
目の前が真っ暗になってびっくりしたけど、段々時間がたって目が見える様になってきた。少しずつ落ち着いてきたぞ。地雷さんは後ろを向いたままだ。
「名は死神としておこう。君達の魂を管理している者だ。間違っても私の顔を見ようなどとは考えない方が良い。魂を吸い取ってしまうぞ? ハハハハ!!」
今までに聞いた事のない男性の声が聞こえた。まさか地雷さん、本当に死神を……召喚したのか!?!?
地雷さんはゆっくりと身体をこちらに向け始めた。あの顔についているのは……眼帯??
「駄目だ! 目を見るな!!」
マタメンテエルフの叫び声が聞こえたけど……遅かった。地雷さんと目があった瞬間……意識が遠くなるのを感じる。
「あっ……」
霞ゆく意識の中で……仲間達の声が聞こえる……。
「チート殿!? チート殿!? どうしたのだ??」
「おいっ!! チート!! 目を開けろ!!」
「いやぁああぁあ!! チートさん!! サンダーストーン!!」
――ゴッ!!
凄い激痛が俺の中に走った。どうやら地雷さんのサンダーストーンがあたったらしい。
「…………いって!!」
「あっ! チート殿、起きた」
「ナイス! 地雷ちゃん!!」
「…………」
地雷さんは何も喋らない。もしかして地雷さんの身体の中に……死神が宿っているというのか??
「今回は事故だったので魂を返してやろう。二度目はないぞ……」
この声……死神だ!!間違えなく本物の死神だ!!地雷さんが石を投げてくれなかったら俺は……魂を抜かれていたんだ!!恐ろしい……。
「地雷さん! 大丈夫??」
「…………」
やっぱり地雷さんは喋らない。恐る恐る地雷さんを確認すると下を向いたまま……眼帯の方の目を抑えている。
どうしようか迷っていると再び魔法陣が光りだし、なんと今度は地面が揺れ始めた。
「……なんだ? 地震か!?」
「気をつけろ! 何が起こるかわからないぞ!」
あたりを気をつけながら地雷さんを見守っていると、再び死神の声がした。
「今、隠された力が暴走している!! ぐぁああぁああ!!」
隠された力ってなんだ!?大丈夫なのか!?ダメだ……もうよくわからない。
「……もう、ダメ」
地雷さんの声が聞こえたと思ったら、地雷さんはバタッと倒れてしまった。
「地雷さんっ!!」
――ガラガラピシャーン!!
俺達が地雷さんの元に駆け寄ろうとした瞬間……今度は落雷の音が聞こえた。思わず空を見上げると……黒い何かが満月に照らされて、ゆっくり降りて来ているのが見えた。
「……まさか、死神?」
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