この世界に花を届け隊2
「どうしてこうなったのだろうか……」
チムリがポツリとつぶやく。チムリは今!!ツインテールのかつらをかぶり、フリフリのピンクのドレスを着ている。スカートの部分には可愛いハートのモチーフがついていてプリチーだ!!
「レストさんの意外な趣味を見ました……」
回復のスペシャリストの先生がドン引きしている。笑顔だけど口元がピクピクしてて苦笑いだ。
「違います!!違うんですーー!!」
チムリの悲鳴を無視して、メイク上手なミユキさんが順調にチムリを可愛く仕立てていく。
「……あぁ、可愛いよ。チム子」
うっとりしてつぶやくミユキさんにチムリが言葉を返す。
「いや!! 全然嬉しくないですし!! その呼び方、一文字間違えたら大変な事になりますよ!?」
――そう、この世界は美しき世界。
汚らしい言葉、攻撃的な言葉、卑猥な言葉などは運営警察の魔法(?)によって封印され、お花として扱われる。そのような言葉を発する事は禁止されており、あまりに酷いと運営警察にお仕置きされてしまう。
実際に地雷がどういう事か説明しよう。とても簡単だ。
『チム子』の『ム』を『ン』に変えて発言するだけだ!!
「✳︎✳︎✳︎」
試しに地雷が一文字変えてつぶやいたら全力でチムリに止められた。
「言っちゃダメだ!!」
私達四人もカラーリング屋でしっかり防具をそれぞれの色にした。料金はミユキさんが払ってくれた。
「それでは、戦いの場に行きましょー!!」
今回は怪獣みたいなモンスターでレベル上げをする事にした。ちなみに仲間を呼ぶタイプの敵だ。敵が仲間を呼ぶ事により戦闘が長くなり、私達の活躍を長く披露する事が出来るからだ。
戦隊モノという企画なので他の冒険者も近くでレベル上げしているような人気の狩場にした。場所確保はきっとミユキさんがマネーパワーでなんとかしてくれるだろう。
案の定、ミユキさんが冒険者を札束でペチペチして狩場をゲットした。
「盛り上げ役も必要だからギャラリーが来るまで私が応援役をするわ。レベルカンストしてるし……」
こうして変わり者の美女達による即席レンジャーが爆誕したのである。世界の平和を守るため!!いざっ!!立ち上がる!!
怪獣にあたるとレッド以外美人なので不意をつかれて敵が見惚れた。
まるで女王様みたいなブルー(そると)が美しき剣裁きで敵を斬りつけ、癒し系少女のグリーン(ミミ)が仲間を補助し、セクシーなイエロー(ミユキ)がゴージャスな応援をして、プリチーピンク(チムリ)がハートのステッキで敵をラブズッキュンした。
レッド??そんな人いたっけ??
「なんか可愛い子達がいる!」
「レベル上げ頑張っているみたい!!」
「よし! 応援しに行こう!!」
案の定、近くにいた冒険者達がわらわらと集まって来てギャラリーになった。
セクシー、ゴージャス、ピュア、ラブリーな彼女達の華麗なる戦いにみんな釘付けだ!!
「凄い!! セレブアイドルのミユキ様もいるぞ!!」
「美人だっ!!美人ぞろいだ!!」
「グリーンの子!! 可愛い!! こっち向いてー!!」
だんだん、戦隊の中に異物が混じっている事にギャラリーが気付く。
「おい! そこのレッド!! ミユキ様と変われ!!」
「レッドはレッドカード!! 退場だ!!」
地雷はレッドカードになって退場になったのでイエローのミユキ様に変わった。ミユキ様が札束を紙吹雪にして更に会場が盛り上がる。
地雷は応援する側にまわったので一生懸命、チムリを応援する事にした。
「✳︎✳︎✳︎!✳︎✳︎✳︎!」
チムリを応援していたらまわりの人が彼女達を応援するフレーズなんだと勘違いした。そして、口癖に地雷の真似をしはじめた。
「✳︎✳︎✳︎!✳︎✳︎✳︎!」
「✳︎✳︎✳︎!✳︎✳︎✳︎!」
こうして、世界に華麗なる花畑が広がっていったのである。まわりの冒険者達は自分自身のレベル上げよりも、彼女達を持ち上げる事に必死になった。
✳︎✳︎✳︎!✳︎✳︎✳︎!✳︎✳︎✳︎!✳︎✳︎✳︎!✳︎✳︎✳︎!✳︎✳︎✳︎!✳︎✳︎✳︎!
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グリーンのミミちゃんがお花畑をキラキラした瞳で見つめながらつぶやいた。
「世界には……。世界には、こんな素敵なお花畑があるんですね!! 私……知らなかった」
「えっ……。あぁ。うん」
知らない方が幸せな事もある。純粋な気持ちの邪魔をしてはいけないとチムリは言葉を濁した。
「消されちゃう!! 消されちゃうわ!! 運営警察に消されてしまうわ!!」
ブルーのそるとちゃんが顔を青くして何かを叫んでいた。顔色まで青くしなくてもいいのに……。
「ゴージャスイエロー、セクシーで最高!!」
「ブルーの女王様!! 踏まれてもいいっ!!」
「ピュアグリーン!! 可愛い!! 癒される!!」
「ラブリーピンク!! 可愛くてハートが萌えるぜ!!」
ギャラリーから口々と推しのセリフが沢山聞こえてきた。レッドの名前が出てこないかと地雷は耳をすまして聞き入っていた。
……案の定、レッドのレの字も聞こえない。さすがの地雷もショックを隠しきれずにいた。思わず下を向いてつぶやいた。
「ねぇ……レッドは?」
隣にいた回復のスペシャリストの先生がかわいそうに思って言った。
「じゃあ、僕、レッドで……」
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