第一話 親父の死
鬼滅の刃くらいの時代観、世界観でお読みください。
「貴様は我々で処分される運命だったのだ。そもそもなぜここにきた?他にも在ると何故考えなかったんだ?」
「わ、、、、、わた、、しは、、、ただ貴様らのような、、、、悪に塗れた、、、存在を、、」
男は多量の血を喉から吐血しながら嘆く。
暗い闇に包まれ、静穏が生い茂る狭い空間には、二人の男が見合っている。片方の男は相手の死を待ち、もう一方は力の入らない右腕を必死にふりかざそうとしていた。
「わた、、しは、、貴様らを全員殺さなけれ、、ば、、、ならんのだ、、」
『バタンッ』
血だらけの男は地面に激しく倒れた。
相手の死を確認した黒づくめの男は何やら一言つぶやきその場を去った。
◇◇◇◇◇◇
「、、、親父!!親父!!!!!!」
親父は優秀な刀打ち(刀職人)で、いつものように町へ下りて、知り合いの鉄工所から不良の出た鉄をタダで譲り受けに行った帰りだった。背後から大きな爪で背中を切り裂かれ、片腕を食いちぎられてしまったらしい。
「わ、、、、わたしが、、もっと早く駆けつけていれば、、!!」
震える声でこちらを見ながら、涙をボロボロと流している。彼女、三上由紀は俺たち沖上家の世話役で、なかなか帰らない親父を心配して町へ様子を見に行ったところ、無残な姿でまだかすかに息のある親父を発見し、ここまで運んできた。彼女はその小さな体で500m以上離れた下町から巨漢な親父の体を引きづってきたのだ。
「親父!!、、親父、、、頼む、、」
もう夜も更けており、町医者を呼んでいる暇はない。かといって、俺たちに何ができるわけでもなかった。
「、、ツル」
血の泡を吹く親父の口から、言葉が漏れる。
「親父、、??、、何だ、、??、、、何ていったんだ?、、、」
「マ、、ツル、、、、 俺の刀打場に、、、お前に隠していたことが、、、ある、、、、」
沖上祭、俺の名前を確かに呼んだ親父は、自分の仕事場に"隠し事"があるとつぶやいた。
「隠してたこと、、?」
俺は困惑しながら問い返す。
「お前が、、俺の意志を継いでくれ、、、 ロウヤにはもう、、、」
「ロウヤ、、?兄貴のことか、、?意志を継ぐ?、、、なんのことだよ、、」
そう言って親父は力尽きた。
"ロウヤ"は俺が赤ん坊の時に家から失踪した兄だ。だが、その見た目も年齢も何もかも、親父が俺に話したことはなかった。
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あくる日、俺は親父の遺体を埋葬し、三上にあとのことを任せ、親父の仕事場に向かった。
仕事場に向かう途中、親父の死因について考えていた。昨日、三上は「背後から背中を切り裂かれたような傷」と話した。親父は素手でイノシシやクマを捕ることができるほどの巨漢であったことの他に、腰には自らが打った刀を所持していた。到底、普通の動物にやられたとは考えにくい。
おそらくだが
【災獣】だろう
噂程度には聞いたことがある。【災獣】とは、いわゆる妖怪や魔物、霊などのオカルトな存在の総称で、実際にはいない架空の存在として定義されている。
そう。架空の存在。でも、親父の近くで18年も過ごしてきた俺には直観的に分かる。
分かってしまうのだ。【災獣】は実在すると。
なぜなら
親父は普通の刀は打っていなかったから。
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