3.室長、パン屋の娘を採用する
ベルシュタイン室長は現在26才の若さではあるが、調薬に関する数々の特許を取得し、今までにない成分を発見していた。彼はこの功績で、従来治療不可能とされていた病気の治療薬を作り上げたすごいお人なのだ。
彼はその頭脳に加え、非常に端正な顔立ちをしていることでも有名だった。
サラサラのストレートの髪は、ショートヘアなのに長めの前髪がいつも美しく揺れ、銀色の髪は光があたると紫に光る不思議な色をしている。
身長の割に顔は小さく金色の猫のような瞳とフサフサの銀の睫毛が彼の美しさを助長していた。
「はい、じゃこれ雇用契約書。サインして持ってきてね」
「あ···有り難うございます」
「お礼はいいから、初勤務から君の家のパン毎日持ってきてよ」
「···ぱん···?」
「君、『パン屋フレンツェル』の娘でしょ?その桜色の髪、店で見たことあるよ」
「そうですが」
「俺さあ、あそこのパン好きなんだよね。ああ楽しみ。じゃあ、来週から宜しくね」
にこりと笑って、首を少し傾げると彼の左耳の長いピアスがシャラシャラと揺れる。
そのままひらひらと手を振ってベルシュタイン室長は部屋から出ていたった。