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2.採用試験
彼は紫ががったの銀の前髪を揺らし、金色の瞳を猫のように細めて、私が浄化した水を食い入るように見ていた。
この人のことを、私は知っていた。
「調薬やめ!」
試験官の合図で一斉に受験者は手を下ろした。
「23番、うちの研究室で雇おう」
「38番はこちらに来れますか?」
次々と研究室の室長から受験者へのオファーがあるなか、案の定私には誰も声をかけなかった。
周囲が採用に向けて動き出した時、器具を片付け始めた私の元へ先程の研究員が声をかけた。
「これちょーだい」
私が浄化した水が入ったビーカーを手に取り満足げに笑う。
「どこの研究室からも声かからなかったの?」
「······はい。大失敗だったので」
「じゃあ、うちにおいでウサギちゃん」
「う···うさぎ?」
「来たくない?」
「いえ······光栄です!!ベルシュタイン室長!」
彼こそが私がこの仕事に憧れた理由。この国の新進気鋭の研究者にして、最年少でこの研究所の室長に就任したジークハルト・ベルシュタインその人だった。