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驚く程の成長


「な、なんじゃこりゃ!!?」


 ドラゴンと遭遇し、死を覚悟した翌日。

 コータは以前にも増して体の調子が良かったり、移動する時に掛かる時間が短くなっている事に気が付き、自身のステータスを確認し驚愕していた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 コータ

<ステータス>

 レベル:28 (+22)

 HP:237 (+165)

 MP:0(固定)

 腕力:109 (+72)

 脚力:199 (+142)

 魔力:0(固定)

 防御:58 (+36)

<スキル>

 鑑定【4】 回避【2】 剣術【3】

 整備【5】 鍛冶【3】 彫金【2】

 魔法無効【-】 木工【3】 合成【1】

 気配察知【4】 採取【5】 恐怖耐性【2】

<呪い>

 魔封じ

<称号>

 異世界人

 転移者

 女神リリーエルの慈愛

 封じられし者

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 異様にレベルが上がり、それに伴ってステータスも軒並み上昇していた。

 スキルの方は、剣術と気配察知が1つずつ上がっている。更に、恐怖耐性が新たに生えていた……それもレベル2で。

 どう考えても、心当たりは小鬼の討伐とドラゴンとの遭遇しかない。しかし、小鬼はレベルも低かったので余り関係は無さそうだ。となれば、ドラゴンとの遭遇だが……。

 と、そこまで考えたコータは、そう言えば戦闘していなくてもレベルが上がっていたなと思い出す。それはつまり、何も討伐等で魔物を斃すだけが経験値を得る手段ではないという事だ。

 ドラゴンとの遭遇は、戦闘とも呼べないものだったのだが、あのプレッシャーやブレスを浴びた事で大量の経験値を得られた事になる。いったいどれほど格上だったと言うのだろうか……。

 コータは、心の整理が未だにつかないものの、取り敢えず剣術が3になっていたのでレベルボーナスを調べる為に鑑定を続けた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 剣術

<詳細>

 短剣・長剣・両手剣・双剣装備時に動きに補正が掛かる。

 レベルに応じて戦闘時の疲労が軽減される。

<スキルアーツ>

 レベル1:スラッシュ

 レベル2:回転斬り

 レベル3:カウンター【切り返し】

<レベルボーナス>

 レベル3:アーツ使用後の硬直時間が5%軽減される。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 改めて剣術を鑑定し、コータは初めて“スキルアーツ”の存在に気が付いた。

 これは何ぞ? と思ったコータは、更にそれぞれの鑑定を行う。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 スラッシュ

<詳細>

 正面の敵を横一文字に斬りつける。

 分類が剣の武器を装備している時に発動可能。

 ダメージは武器の攻撃力・切れ味を基準にして25%上昇する。

 技後硬直は1秒。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 回転斬り

<詳細>

 自身が回転し周囲の敵を切りつける。

 分類が剣の武器を装備している時に発動可能。

 ダメージは武器の攻撃力・切れ味を基準にして30%上昇する。

 技後硬直は2秒。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 カウンター【切り返し】

<詳細>

 正面の敵からの攻撃に対しカウンターを行う。

 分類が剣の武器を装備している時に発動可能。

 相手から受けるダメージを技発動から1秒間無効にする。

 技後硬直は1.5秒。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



(もっと早く知りたかった……)


 コータはそう思ったのだが、これまでろくに討伐依頼も受けておらず、魔物と遭遇しても隠れてやり過ごしていたので意味は無い。

 それに、例え知っていたところで、ドラゴンと対峙した場合にはだからどうしたと言わんばかりの結果に終わる。カウンターは発動後1秒間は無敵だが、昨日コータが浴びたブレスは余裕で1秒以上もの間吐かれ続けていた。

 結果は変わらなかったであろうし、寧ろ近接攻撃をしたところで、ドラゴンから物理的な攻撃をされれば即死していた筈だ。

 一通り確認したコータは、色々と試しておいた方が良いと判断し、取り敢えずは今日も依頼を受けに行こうと冒険者ギルドへ向かった。



「――おい! 続報どうなってんだよ!?」

「――ふざけるなよ!? 俺らは未だ依頼完了してねぇんだぞ!!」

「――おら! 邪魔だどけぇ!!」

「――納得できるか! 責任者出て来いヤァ!!」


 冒険者ギルドへ入ると、いつも以上に騒がしかった。

 コータがギルド内を見渡すと、依頼ボードにも近づけない程に人の波でごった返していた。

 仕方なく、コータは入口近くにある待機場の椅子に腰掛けた。


(いったい何があったんだろう……)


 何にせよ、今はあの中へ突入する気が起きないコータは、大人しく待つ事にした。


「ん? おぉ!? コータじゃねぇか! 無事だったのか!!」


 声のした方を見ると、そこにはガイアが居た。

 その後ろにはリュウとミーシャもおり、他に2人初めて見る人達も居た。

 恐らくは、以前言っていた残りのパーティーメンバーだろう。

 それは兎も角として、コータはガイアの言葉に首を傾げる。


「無事? ってのはどういう事?」

「んあ? ああ、そうか。その様子だと、コータは関係無かったみたいだな」

「……えーっと?」

「おお、わりぃわりぃ…そうだな、あの騒ぎを不思議に思ってんだろ?」


 言いながら、ガイアは喧騒の酷い集団を指さす。


「え? うん、そうだね」

「なんでもよ、昨日ドラゴンが目撃されたらしいんだが―――」

(!!?)


 思いっきり当事者な気もしたが、コータは自分からは言わなかった。


「――どうやらその目撃された場所が、コータが依頼で行ってた方向らしくてな。……何人か犠牲も出たっつーんで、ひょっとしたら…コータも巻き込まれてんじゃねぇかと思った訳よ」

「あ…ああ、それで……ん? 何で俺が受けた依頼を知って―――」


 ガイアの言葉に、納得と心配を掛けて申し訳ないという気持ちが芽生えたコータだったが、ふと疑問に思い聞き返そうとしたのだが……。


「――偶然な!? そう! 偶々、偶然、コータが受付に色々聞いてんのを目撃してよぅ!!」


 食い気味に返答するガイア。

 その勢いに、コータも「お、おおぅ」とたじろいだ。

 ガイアの後ろでは、ミーシャがやれやれといった様子で頭を振っている。


「んで、あの人だかりはだな、緊急の報せがあると依頼ボードに緊急依頼と一緒に貼り出される訳なんだが……」


 途中で言葉を切り、ガイアは一度集団を振り返る。


「当然だが、その目撃情報のあった周辺の依頼は一旦取り下げられる。ドラゴンともなれば、国が軍を動かすレベルの脅威だ。他の依頼が遅れてでも対処しなけりゃ、犠牲は増える一方なのさ」

「……じゃあ、あそこに集まってる人達は依頼が取り下げられた事が不満な人って事?」

「ん? ああいや、そうじゃない。いくら何でも、冒険者は命あっての物種だからな。依頼の取り下げそのものが不満な訳じゃねぇんだ。…問題は、今回の緊急依頼だ」

「内容がダメなの?」

「おう。いつもなら……つっても、前回ドラゴンが出現したのは何年も前なんだが……その時は目撃地点周辺の依頼取り下げと、国が軍を寄こすまでの間の時間稼ぎと準備が依頼として出されたんだ。まあ、時間稼ぎっつっても、俺らが体を張る訳じゃなくて、家畜とかを利用して人が襲われないよう誘導するくらいなんだがな……。んで、準備は鍛冶屋総出で、討伐軍が来た時の分と俺ら冒険者や傭兵の分の武具を揃えておく。討伐軍は移動を優先するってんで、武装は最低限で来るらしいからな。ドラゴン討伐用の武具は、現地か最寄りの町が用意すんのが通例らしいぜ。………しかしだ、今回の緊急依頼には、時間稼ぎこそいつも通りの内容なんだが、準備の方がどうにもおかしいんだ」

「おかしい?」

「おう、そうだ。鍛冶屋への依頼はさっき言った通りだが、他がな……。俺らにも武具を供出しろと言ってきてんだよ。それも、取り下げる必要の無い場所の依頼まで取り下げてな………」

「え? 供出って、冒険者に?」


 供出という事は、差し出せと言ってきているのだろう。しかしそうなると、冒険者は討伐には参加できなくなってしまう。

 ……誰がそんな馬鹿な事を?

 コータのそんな疑問に気付いたのか、ガイアは続ける。


「どうやら傭兵ギルドからの要請らしいぜ」

「……は?」

「はぁー……。だよな、そんな反応になるよな?」


 当然だ。

 国からであれば兎も角、何故一応は対等な関係のギルドからそんな要請が出てくるのか、コータには理解できなかった。


「まああれだ……。今の傭兵ギルドは、どこぞの貴族の坊ちゃん(ボンボン)が頭をやってんだよ。しかもだ、そいつはドラゴンの脅威を知らないときてる。んで、功績を上げたいっつー貴族にはありがちの野心からか、今回のドラゴン討伐は傭兵ギルド主体で行おうっつー事らしい」


 つまりは、冒険者に活躍されたくないから、その武器を取り上げてしまおう。ついでに、防具やなんかも取り上げて、より傭兵の生存率を上げてしまおう。

 そういう事らしい。

 コータは呆れた。

 それはもう、取り繕う気が起きない程に呆れた。


「そんな表情(かお)すんなよ、俺等だって不満なんだ。……その結果があれだ」


 ガイアはうんざりしながら、もう一度集団を指さした。


「まあうん。理由と状況はわかったよ。でも、武具の供出には従う必要無いよね?」

「あー…まあ、そうだな。従う必要は無いんだが、緊急依頼として出ているからな。評価に響く可能性くらいは頭に入れとけよ」

「え? 何で?」

「冒険者に明示されない評価項目。…多分だが、あれも入ってる。“要請”ってなってるのは大抵の場合、冒険者の自主性に任せられるんだが……だからこそ、その行動によって評価も変わるもんだ」

「………そっか」


 であれば、今あそこで不平不満を洩らしている人達はどう評価されるのだろうか……とコータは思った。


「まあそれはそれとして……ついでだし、コータに紹介してなかった2人を紹介させてくれ」

「ああうん、良いよ。と言うかお願いします」

「そう畏まんなよ。…おい、スウェン、シータ、こいつが前に話してたコータだ」


 ガイアが声を掛けると、初見の2人が前に出てくる。


「スウェンだ、宜しく」

「やっほ~、シータだよ。コータくん、ボクと名前似てるね。仲良くなれそうだよ」


 スウェンからは寡黙そうな雰囲気を感じた。暗めの色合いのローブを纏い、顔も殆ど隠れている。

 逆に、シータからは軽い印象を受けた。と言っても、フレンドリーなだけで軽薄という意味では無い。しかし、名前が似ているから仲良くなれそう…と言うのは如何なものかとコータは思う。

 それぞれと握手を交わし、コータも名乗る。

 そのついでに、最近は癖になっている鑑定を行った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ガイア

<ステータス>

 レベル:33

 HP:288

 MP:48

 腕力:122

 脚力:216

 魔力:30

 防御:72

<スキル>

 剣術【9】 盾術【7】 重量軽減【2】

 採掘【3】 物理耐性【2】

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 リュウ

<ステータス>

 レベル:31

 HP:260

 MP:52

 腕力:156

 脚力:210

 魔力:32

 防御:69

<スキル>

 剣術【8】 腕力増強【5】 重量軽減【4】

 気配察知【2】 基礎魔法【2】 物理耐性【2】

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ミーシャ

<ステータス>

 レベル:30

 HP:224

 MP:180

 腕力:38

 脚力:88

 魔力:118

 防御:59

<スキル>

 光魔法【10】 聖魔法【4】 風魔法【5】

 魔力増強【3】 MP増加【3】 基礎魔法【7】

 祈祷【9】 瞑想【7】 魔法耐性【2】

<称号>

 女神リリーエルの信者

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 スウェン

<ステータス>

 レベル:32

 HP:208

 MP:80

 腕力:90

 脚力:205

 魔力:45

 防御:60

<スキル>

 気配遮断【8】 逃げ足【8】 短剣術【4】

 気配感知【2】 投擲術【4】 採取【2】

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 シータ

<ステータス>

 レベル:31

 HP:190

 MP:162

 腕力:88

 脚力:118

 魔力:122

 防御:57

<スキル>

 火魔法【10】 火炎魔法【2】 水魔法【7】

 土魔法【6】 魔力増強【4】 MP増加【2】

 杖術【5】 基礎魔法【10】 瞑想【3】

<称号>

 魔の探究者

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



(鑑定が通った……)


 いつの間にか、コータのレベルはガイア達に追い付きつつあったらしく、今回の鑑定は失敗しなかった。

 最後のシータが持っている称号も気になったコータだったが、スキルにも色々と気になるものを見つけた。先にそちらから確認を……と思ったところで、ガイアから思わぬ言葉を投げ掛けられる。


「なあコータ。今日はもう依頼も受けられねぇだろうし、いっちょ模擬戦でもどうだ?」

「………え?」

「いやな…前に見た時よりも、コータの実力が上がってる気がしてよ。ギルドの奥に、ランクD以上なら無料(タダ)で使わせてもらえる訓練場があんだよ。……どうだ?」

「ちょっと、いきなり何を言い出すんですか。コータさんはギルドに登録したばかりなんですよ?」


 急な事に驚くコータであったが、ミーシャから横槍が入る。


「しかしよぅ…明らかに実力が上がってんだぜ? 今がどんなもんか気になんだろう?」

「常識の問題です!」


 言い分的にはミーシャの言う通りなのだろうが、コータには少し思うところがあった。


「ちっ、わーったよ」

「あのー……」

「んあ? おおコータ、どうした?」

「訓練…という形だったら、お願いしたいんだけど……」

「お? おお! そうかそうか! そうだよな! 今の自分の実力も気になるよな!!」


 それはそうなのだが、コータの思惑は別のところにある。

 相応の行動で経験値が入る。

 そしてスキルにはそれが如実に表れ、確実に身になるのだ。

 実戦が最も成長が早いのかもしれないが、模擬戦と言うからには実戦に近しい効果が期待できる。

 ある意味打算からのお願いだった。


「でも、俺はランクFなんだけど……」

「ああ、それは大丈夫だ。俺らの同伴って事にすれば問題ねぇよ。別に嘘でも無いしな」


 あっはっは……と笑うガイア。

 リュウとミーシャは心配そうにコータを見るが、スウェンは無関心に、シータは興味深そうにコータを見ていた。


「コータさん、大丈夫ですか?」

「え? あ、うん。多分……?」

「こう言ってはなんですが、ガイアは手加減とか器用な事はできませんよ?」

「あー………ま、まあ、何とかなりますよ」

「そうですか……。怪我をしたら、私が治しますね」


 ふんすっ……と聞こえてきそうな気合を入れるミーシャ。

 光か聖魔法にヒール系があるのだろうとコータは納得した。


「おう、さっさと行こうぜ!」

「…あいよ」

「へーい」

「全く……」

「……………」

「あはは……」


 待ちきれなかったのか、急かすガイア。

 苦笑しながらも了承するリュウ。

 軽い返事をするシータ。

 3人の様子に苦い顔をするミーシャ。

 沈黙で返し、そのまま付いて行くスウェン。

 それらを見て、空笑いが洩れるコータ。


 未だに喧騒の続く集団を横目に、6人は訓練場へと向かうのだった……………。


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