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短い短編(童話・ヒューマンドラマ・現実恋愛など)

イライラしないイライラ棒


 おやつのじかんごろ。外はすごくあつそうで、とてもまぶしい。


 わたしはイライラしていた。


 ちょうど一昨日すごいねつが出て、今ねつが下がってて、でもまだにゅういんしているところ。


 いつもだったら、やった! マンガよもう! とおもうけど、今日は、わたしは、とてもイライラしながらしょんぼりしていた。


 どうしてイライラしながらしょんぼりしているのかというと、今日、学校で、なぎさこどもまつりというのがあったからである。


 どんなおまつりかというと、クラスのみんなでだしものをして、それで、このまちのお客さんがたくさんくるおまつり。


 私たちのクラスはたからさがしゲームをするクラスだった。


 そして、ほかのクラスは、ボウリングとか、おばけやしきとかをしていて、それにあそびにもいくつもりだった。


 だけど、わたしは今日、一日中ベッドに一人でいた。


 一年に一回のおまつりをのがしてしまって、かなしい。


 さびしい。


 けど、もうおわってしまったおまつりに、行きたいって言っても、いみないよね。


 わたしはだから、ねることにした。


 ベッドはすごくやわらかくて、イライラしている私でも、ぜんぜん、がりがりとかいわない。


 目を閉じてしばらくすると、わたしがねむりにつくよりもはやく、声がした。


「ななねちゃん~!」


 おともだちのこえだった。


 わたしはそんなたくさんおともだちがいるわけじゃないし、びょういんまで来てくれる人がいるとはおもってなかった。


 けど、きてくれるなら……


「あ、ななねちゃんだ! ゆうみのとうじょうです!」


 ゆうみちゃんしかいないかもとおもった。そしてゆうみちゃんだった。


「ありがと……きてくれて」


「ううん。あのね、きょうのおまつりでいっぱいゲットしたから、それであそぼうとおもって。あ、だけど、ここでわりばしてっぽうとかはあぶないかな……」


「あぶないかも」


 わたしはそうこたえながら、とてもうれしかった。なんでそこまでうれしいのかわからないけど、うれしかった。わりばしてっぽうはそんなにすきじゃないし、いちばんたのしみにしてたおばけやしきがここにいきなりできたわけでもない。


 けどうれしかったのはうれしかった。


「うーん。じゃあね。イライラ棒であそぼうよ」


「イライラ棒って、どんなの?」


 はじめてきいた。


 ……さっきまでのわたしみたいじゃん。


「これ!」


 ゆうみちゃんはなんか出した。ぐにゃぐにゃした棒。


「これ、あそびかたはどんなかんじなの?」


「えーとね。この棒の先のわっかを、このぐにゃぐにゃした棒にさわらないように、とおしてすすめるの。ゴールまでとおせたらクリア。とちゅうでどこかにさわると、ここがひかる。そしたらゲームオーバー」


「なるほどね。わかった」


「これむずいよ。すっごいイライラする。だからイライラ棒」


「そうなのね」


 わたしはゆうみちゃんからイライラ棒をうけとって、すぐにやってみる。


 ぐにゃぐにゃした棒にさわらないように……あっ。


 もうさわっちゃった。さわったしゅんかん、ピカって光った。オレンジの小さな光が。


 もう一回やろう。


 あっ。またさわっちゃった。


 ぜんぜんクリアできないよ。これじゃ。


「ね、イライラするでしょ」


「……しない」


「え? しないの? ななねちゃん、おとなだね!」


「ううん。おとなじゃない」


 おとなじゃないからイライラしないんだとおもう。


 おとなのことわかんないのに、わたしはそうおもった。


 そしても一回やってみる。


 またすぐさわちゃった。


 でもやっぱりイライラしない。


 これ、イライラしないイライラ棒なんだ。


 わたしは気づいた。


 ゆうみちゃんがここにもってくる間に、イライラしないイライラ棒にへんしんしたんだ。


 だから何回やってもイライラしなくて、わたしはたくさん、ゆうみちゃんとあそんだ。

 

 けっきょくクリアできなかったけど、すごくたのしくて、うれしかった。

およみいただきありがとうございます。


もしよろしければ、評価などをしていただけたらうれしいです。

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