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7 ご招待

「やっぱり、朝先生が言ってた小学生って……」


「確実に、あやかしの被害者ですね」


 ホームルーム後から、学校であったことは殆ど覚えていなかった。授業も受けた、弁当も食った、前島の長ったらしい語りも聞いたはずなのに、記憶だけがすっぽりと抜け落ちた感覚だ。


 放課後になった今も、新宮が声をかけるまでずっと、何もせずにぼおっと一点だけを見つめ、席に座っていた、らしい。


 夕日が海に潜りかける。もう俺たち以外、学校に残る生徒は殆どいないだろう。


「すみません。休み時間に説明しようと思ったんですが、なんせ人目が多いもので……」


「あ、うん……」


 新宮の言葉すら、すぐに消えてしまいそうになる。どうしてだろう……誰だか知らないが、喰われた小学生はきっと、俺の人生には何の影響のない人間なのに……どうしてこんなにも、死を重く受け取ってしまうのだろう。


「……被害者が出るのは仕方がないことです。勿論、ゼロに抑えることが私の仕事ですが」


「うん……」


 新宮さんが頑張っているのは分かっている。彼女を責めるつもりなど一ミクロンもない。


 ただ……受け入れきれない、だけ。恐怖が心を縛り上げている、だけ。


「言い訳をするつもりはありませんが、あやかしを見つけるのは妖怪より難しいんです。あやかしと妖怪の違いは力だけではない。あやかしは妖力が少ないせいで、食事以外では実体を維持できないんです」


「……どういう、こと?」


「空気と同化している、という表現が一番分かりやすい且つ適切だと思われます。正直あやかしは妖術師にとってクソ雑魚……例えるならば、レベル九十九のプレイヤーがスライムを狩るようなものですが、そこに至るまでが困難なんです」


 ま、またゲーム……俺、ゲームなんてスマホの軽いアプリでしかしたことないからあまりピンとこないんだけど……。


「空気はある、ということは分かりますが、直接見えませんよね?」


「まぁ、うん……」


「それと同じであやかしも普段は見えない、その上妖力も薄いゆえに感知しにくい。実態が現れるまで、私たちは彼らを祓うことが出来ないのです。反対に妖怪は常に実態がある。あやかしより比較的楽に見つけられますが、能力は桁違い。優秀な妖術師でも、死闘が予測されます」


「あのさ、昨日も聞いたけどその妖力者と妖術師って何が違うの……?」


「ああ、説明がまだでしたね……しかしここはいつ誰が来るか分かりませんので、移動しましょう」


「い、移動ってどこに……?」


 古びたスクールバックを肩にかける彼女に問いかける。誰もいないとなると、浜辺とか山? いや浜辺は道路に面しているから意外と人が通る。山は遠い上にクマが出る。新宮なら熊くらい退治できそうだが、危険は少ない方がいいに決まっている。


「私の家、です」


「分かった。新宮の……え……?」


 またまた心臓が強く震える。これまでの比ではないほど、強く。


 新宮の家……ですか……?


 ゴクリと喉を鳴らす。持ってはいけない期待が、緊張となり、身体をこわばらせる。


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