プロローグ：精霊の儀①
今日は、毎月開催されている精霊の儀の日である。
先月７歳になった子供達が、各主要都市、または大きめな街にある教会に集まる日である。
王家、大公、5大貴族、そして多くの上流貴族は、精霊の儀の後に子息子女のお披露目を行うため、上流階級の精霊の儀は秘密裡に行われる事が習わしとなっていた。
王都の教会には、多くの竜騎士、騎士を排出する家系で、現騎士団団長でもあるマクレーン家の嫡男、リオンが精霊の儀を受けるため両親と共に訪れていた。
司教が、リオンの父であり当主のマクレーン大公に深々お辞儀をしてする。
「マクレーン大公様、本日はようこそおいでくださいました。」
リオンの父親が厳格な面持で挨拶をする。
「うむ、今日は我が息子の精霊の儀だ。 司祭、頼むぞ。 リオン挨拶を」
そう言われたリオンは7歳となったばかりだというのに、しっかりとした貴族の礼をする。
「司祭様、私がマクレーン公の嫡男、リオン・マクレーンと申します。 本日はよろしくお願いします」
これを見た司祭は、微笑み、そして何かを期待した感じになる。
「これは、これは、将来が有望なお子様ですな。 準備が整うまでこちらでお待ちください。」
そして、案内された場所は、豪華な装飾がほどこされた応接室であった。
「精霊の儀は、女神様のご機嫌を悪くしないためお子様おひとりで向かっていただきます旨ご理解ください」といい礼をして、一度退室司祭の姿があった。
＿＿応接室にいる、リオンと両親。 リオンは緊張し、下を向いたまま俯いていた。
そんな、緊張しているリオンを察したのか、リオンの母親が優しい声でいう。
「リオン、緊張しているのね。 あなたのこの銀髪、そして焦げ茶色の瞳は、私の先祖で最強とまで言われた竜騎士のライナス様と同じなのよ。 きっと、素晴らしい精霊に出会えます。 ねぇ、あなた」
リオンの頭を優しく撫でてている母親。 そんな優しい母とは真逆な父であるマクレーン大公は、常に厳格で厳しい。 貴族として、大公としても、常に1番である事を望み、常に体裁を気にする。
「わが家の恥にならないようにな。 最上級精霊以外の精霊は認めん。」
「はい、父上」と居直り、そうしか言えないリオンである。
リオン父親は、最上級精霊と契約している。そのため、それ以外の精霊との契約を認めない父親だった。 母は、上級精霊と契約している。 そんな父親の発言に気になっているが、当主であり、精霊の階級も上であるため、何も言えないのである。
すると、司祭がドアをノックし入室するのである。
「お待たせいたしました。 リオン様、参りましょう」という言葉で、リオンは立ち上がり司祭の所へ行き、両親には「父上、母上、いってきます。」と礼をして司祭を共に退室するのであった。
司祭に案内されて、入室した部屋には太陽光が射し、そして一面真っ白な壁でとても静寂した部屋であった。 部屋の中央には、水晶がきらびやかな台の上に鎮座してある。 司祭が口を開く。
「リオン様、中央にある水晶に手をあてて魔力を流してください。 水晶の色が変わると精霊様が起こしになりますので、そこで契約完了です。」
司祭に促されて水晶に魔力を流すリオン。
...しかし、水晶は光るが色は変わらない。。そして、ステータスカードだけが水晶からポトリと落ちる。
その様子をみていた司祭が「まさか！」と叫び、ステータスカードを拾い、汚い者でも見るように、リオンの手を引き両親のまつ応接室へ強引にそして乱暴に連れていかれる。 リオンは、精霊の階級うんぬんの前に自分が契約できなかった事を理解して”なんでなんでなんで”と絶望していた。
司祭から、応接室でまつ両親に、リオンが精霊と契約できなかった事が告げられる。
その言葉とリオンのステータスカードを見た、父親の表情は明らかに変わり、それは嫌悪だ。。 だが、それを受け入れたくない、信じたくないリオンは、救いを求める。
「ち、ち父上... お、おれは」
「違う！」
救いを求めたリオンを拒絶する言葉を吐き捨てる。
「おまえはもうマクレーンの者ではない! 我が家から無能者をだすわけにはいかないからな。 お前は恥だ！」
そして、怒鳴られたリオンがビクと怯えると、容赦なくその場で殴る倒す。
殴られ、壁に激突する。 頬に激痛が走るリオンは、「ち、父上、な、なんで」と涙を流し、自分の父親を見るが、そこにはあるのは、嫌悪と拒絶で歪んだ表情をしている父親の顔だ。
自分を見る目は息子を見る目ではない。
それからは、「違う！」「この無能者め！」と怒鳴りながら、殴る、蹴るの暴力をふる。
それは、母親が止めようとするも聞く事なく、リオンが倒れ動けなくなるまで続く。
顔は腫れ上がり、着衣は乱れ、体中に痣ができ、血がついている。 辛うじて骨折はしていない。。
「。。こんな無能者のために、私の手を汚す必要はない」と吐き捨てるのだった。
「司祭、この無能者を例の場所へ。 ステータスカードも破棄しろ。 おい、いくぞ」といって、リオンの母親に共に退室を促す。
「私にだって、この無能者に言いたい事がありますわ」といって優しい母親の信じられない声が聞こえるリオン。 殴られ目を開く事ができないリオンは、声だけが聞こえていた。 母親からも拒絶されたのだ。。 もう救いはないと、自然に涙だけが流れるリオン。
が、「代々受け継ぐ腕輪を胸のポケットにいれたわ。 ライナス様しか使う事できなかったといわれる腕輪よ。 きっと、あなたを助けてくれる。 生きるのよ」という母の優しい声が耳元で小さく聞こえるのだった。 その後、乱暴に床にたたきつけられるリオン。
「あたな、もういいわ。 行きましょう」といって、両親が退室していく音だけが耳に入る。
「無能者が！ 無能者の行く場所だ」と罵しる司祭の怒鳴り声が聞こえ、蹴り上げられたのか、腹部に激痛が走りプツンと自分の意識は途絶える。
その日、その場所から司祭が軌道して転移魔法陣により応接室からリオンの姿は消えるのであった。
