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百七十三話 「渇望」

私の気持ちではないので、安心してください。

ゴミ箱に捨てられ、圧縮されたあの日のゴミが死んでいた。

「これは私だ」

そんな言葉が自然と出てきた。

私はいつから死んでしまったのだろう。

そんなことももはや思い出せない。

個性は殺した。本当の私を出してもいいことなんてない。

笑顔も、悲しそうな顔も全て作り物。

これがみんなが求める姿でしょ?

こんなまがい物をみんなは褒める。

それが滑稽で笑おうと思ったけど笑い方はもうわからない。

偽物にいつの間にか人格を奪われていた。

もう誰かに捨てられたい。

ごみ収集車に投げられて一瞬で粉々になりたい。

生を感じなくて、ゾクゾクするから。

私はぞんざいに扱われたいのだと思う。

ためらいのない死の世界が

本当の私がいる場所だったのかもしれない。

そういえば、あの日のゴミは捨てた時はまだ死んでいなかった。

いつ死んでしまったのだろう。

臭いを放ち、汚い液をだしたら死んだということだろうか。

いや、違う。死はそんな単純なものじゃない。

希望をへし折り、諦めを積み上げ救いを求めなくなったからだ。 

私は死んでいるのに誰も迎えに来てくれない。

自ら死に向かうことは許されないこの世のルールが憎らしい。

どうして神様はそれを禁じたのだろう。

あぁ、愛したかったな。自分自身を。

いや、死を待っている程度だから死ねないのか。

死とはこちらの都合は関係なく

やってきて、一瞬で全てを奪っていくものだから。

まだ私は完全な死人にはなれないようだ。

お読み頂きありがとうございます。


暗い話ですが、フィクションです。


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