百七十二話 「キューピットと恋」
キューピットも恋をする?
君は、もうその気持ちに気づいている?
今はまだ小さな光だけど
気持ちは、君の中に確かに灯っている。
あの子のことが好きなのだよね。
僕にはわかるのだから。
えっ、まさか本当に気づいていない??
空をぷかぷかと飛びながら地上を見ていると
たくさんの恋の芽を見つけられる。
僕はキューピット。
姿は子どもだけど、100歳を超えているのだけどね。
僕が持っている弓矢は特別製。
矢じりがハート型をした弓が刺されば
その人は瞬く間に恋心に気づく。
刺さっても痛みはないから心配しないでね。
僕は誰から構わず矢を打っているわけじゃないよ。
恋の芽がでていない人には効果がないから打たない。
そして、恋心を悪用しようとしている人には
絶対矢を向けない。恋心は神聖なものだから。
両思いだけど、なかなか踏み出せていない人には
一番積極的に矢を飛ばすよ。
恋の素敵さを、二人に早く知ってほしいから。
家に帰ると、「あなたは恋しないの?」と
母であるビーナスにまた聞かれた。
僕にだって気になる子はいるし、恋をしている。
でも、僕は恋の神様だから
自分の恋よりも他の人の恋を成就させたい。
お母さんは、「本当にまじめね」とほめてくれる。
でも、僕はこの仕事が好きだから全然苦じゃない。
僕の恋は、永遠に片想い。
えっ、今誰か僕に恋の矢を打った?
胸の鼓動がおかしなぐらい速くなったのだった。
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