百六十六話 「生きるように恋いしたい」
恋の詩です
炎が、揺れた。
まるで最後の灯火みたい。
あなたに出会ったあの日。
あまりにも突然で、時間も短かった。
でも、その日の天気や匂いを全部覚えている。
あなたは私に声をかけてくれた。
きっとあなたは意識してではないだろうけど。
あの時の声はすごく優しかった。
寂しさを抱えていた私には本当に温かかくて
心にドクンドクンと入ってきた。
恋とは呼べないほどの
ささいなことかもしれない。
たとえこれが恋でも実ることはない。
私はそれをよくわかっている。
でも、その日から私の心の中は
あなたのことでいっぱいになった。
想うことをやめられないから
『恋』と呼ぶ気がしてきた。
仮に、恋にブレーキがついていたら
きっと誰も悩んだりしないから。
人を愛する気持ちは美しいものだ。
私は数日前に余命宣告を受けている。
だから、私の思いを相手に伝えることは
できない。いや、私はしない。
もうすぐ死ぬ女に告白されても
相手は困るだけだから。
あぁ、あの人にとっての流れ星になりたかったな。
もし私が普通の女性であったら
この恋は叶うことがありましたか?
仮定から始まるか弱い言葉が
口から次々にこぼれていく。
でも、あれが最期の思い出であったなら
私の人生は素敵だったと思える。
そっと目を閉じた時
あなたの声が聞こえてきた。
空耳かと思ったけど、あの温もりが確かにあった。
私の命の炎はまだ消えていなかったようだ。
頬を涙が一粒ゆっくりと流れていった。
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