(^ω^)【タンポポ】のようです
('A`)「ここは地元で一番綺麗な丘の上」
('A`)「まだ時期じゃないが、春には色とりどりの花が咲くんだ」
('A`)「木陰に佇むベンチからは、育った盆地の小さな街が一望できる」
('A`)「さて、そろそろ死ぬか」
(^ω^)「ちょいちょい」
('A`)「?なんだ?誰か居るのか?」
(^ω^)「ここだお。ここ」
('A`)「どこだよ」
(^ω^)「足元の芝だよ。目ン玉見開いてよく見ろや」
('A`)「タ、タンポポ!?」
(^ω^)「せやせや。俺々、タンポポ」
('A`)「なんでまたこんな季節に?」
(^ω^)「もう3月だで。それに、俺はせっかちなんだ」
('A`)「あ……そうか、もうそんな時期か」
(^ω^)「タンポポが喋る事は気に留めんのかい」
('A`)「は……はぁ」
(^ω^)「ま、ええわ。俺と喋れる奴は大体そんな感じだからな」
('A`)「まじかよ。俺以外にも居るんだな」
(^ω^)「おう、みんな陰気な顔しとったわ」
('A`)「これから死のうとしてる奴に話しかけるなんて、
いい趣味してるな」
(^ω^)「いや、趣味悪いだろ。自覚しとるわ」
('A`)「嫌味だよ」
(^ω^)「人間の考えることは分からん。はっきり言やいいのに」
('A`)「それができたら苦労はしないさ」
('A`)「で?何のようだ」
(^ω^)「なんで自分から死を選ぶ?」
('A`)「止めようってのか?お前に何の得がある?」
(^ω^)「徳を積むのさ」
('A`)「徳?」
(^ω^)「俺は元々お寺の境内で生まれてねぇ。坊さんの説法がよく聞こえたんだ」
(^ω^)「暇だったもんで聞いていたら、
徳を積めば人間に生まれ変われるって言うじゃあ無いか」
(^ω^)「でも、こんな身体じゃ自分から何かをすることはできねぇし」
('A`)「だから、悪いことをする奴を止めようってのか」
(^ω^)「おっと、俺は止めるなんて出過ぎた真似はしない」
(^ω^)「聞くだけだよ。自殺なんて、草には普通理解できないだろ?」
('A`)「いや、知らんが。それで徳が積めるのか?」
(^ω^)「多分な。つーことで聞かせちくり」
(^ω^)「なんで自分から死を選ぶ?」
('A`)「いや、別に理由は無いけど」
(^ω^)「無いんかいっ!」
(^ω^)「『金が無い』とか『人生に疲れた』とか」
(^ω^)「他の人間はそう言っていたぞ?」
('A`)「そんなの死ななくてもいいじゃん」
('A`)「金が無いなら稼げばいい。
疲れたなら休めばいい」
('A`)「単純だろ?」
(^ω^)「うん。まあそれは理解できる。草は単純だからな」
('A`)「敢えて死を選ぶ理由なんて何処にも無いんだよ」
(^ω^)「じゃあ、何故お前は自殺を選んだんだ?」
('A`)「だから選んでないんだって。
強いて言うなら楽だからかな?」
(^ω^)「楽?」
('A`)「人生は選択の連続なんだ。
でも選ぶのって面倒くさいだろ?
実際面倒くさかったりもしたんだ」
(^ω^)「人間なんだから、少しは考えろよ」
('A`)「めんどくせぇんだよ」
(^ω^)「とんだダメ人間だな」
('A`)「そうだよ。運良く人間になっちまっただけだ」
(^ω^)「前世が知ったら泣くだろうな」
('A`)「今生が望んで無かったんだ」
('A`)「来世は草になりたいな」
(^ω^)「お?成るか?草生も楽じゃねぇぞ?」
('A`)「そうなのか?参考までに聞いておきたいね」
(^ω^)「まず、ずっと立ち仕事」
('A`)「仕事じゃねぇだろ」
(^ω^)「雨の日も風の日も、ガキに踏まれても、立ちっぱなし」
(^ω^)「お前みたいなモヤシにはできっこないね」
('A`)「モヤシは草じゃん」
(^ω^)「次に、根を伸ばして水を吸う」
('A`)「仕事じゃねぇじゃん」
(^ω^)「は?食い物を手に入れるのが生命の仕事だろ?」
(^ω^)「人間の価値観でモノ語ってんじゃねぇぞ」
('A`)「す、すまん……」
(^ω^)「で、最後は受粉。まぁ子作りだな」
('A`)「……そうか、それも仕事か」
(^ω^)「1ヶ月もすれば、俺はフワッフワの綿毛になって、
盆地の街まで子どもたちを飛ばすのさ」
('A`)「ああ、子供の頃、よく飛ばしたっけ」
(^ω^)「どうだ?人間からすれば大変な仕事だろう?」
('A`)「ん?なんでだ?」
(^ω^)「だってお前ら子供作らねぇんだろ?」
('A`)「生む人は生むよ。最近は減ってきたけど」
(^ω^)「やっぱアレだな。つがいが必要な生き物は面倒だな」
('A`)「ほんとにな」
(^ω^)「こっちは気付いたら花粉が付いてるからな」
('A`)「なんかキモいな」
(^ω^)「生命の神秘なんだが?」
('A`)「生々しい」
(^ω^)「苦手なのか?あ、そうかこれから死ぬんだもんな」
('A`)「……つーか、もういいか?」
(^ω^)「ん?ああ、死ぬのか?」
('A`)「おう」
(^ω^)「でもさっきの話だと、別に死ななくてもいいんじゃないか?」
(^ω^)「お前は人生は選択の連続だと言っていたけど」
(^ω^)「のらりくらり適当に生きていけばいい」
('A`)「適当に……か」
(^ω^)「そう。思うに、人間は何でも自分のせいにする」
(^ω^)「稼げないのは能力が足りない。
結婚できないのは魅力がない。
事故で死んだら不注意が悪い」
(^ω^)「俺達は違う。水が足りないのは太陽のせいだ。
根腐れするのは雨や土のせい。
茎を引きちぎられるのは動物のせいだ」
(^ω^)「な?楽そうだろ?」
('A`)「そうだな。俺もそんな風に生きてきたよ」
(^ω^)「は?」
('A`)「じゃあな。ちゃんと徳を積めよ。思うより人生は大変だ」
(^ω^)「おい、ちょっと」
('A`)「結局、隣の芝生は青く見えるんだよ。地球とか」
【13ヶ月後】
(^ω^)「フワッフワの綿毛になったぜ」
( ・∀・)「先輩、めっちゃアフロじゃないスか。かっけぇス!」
(^ω^)「だろ?」
( ・∀・)「そういや、先輩って結構歳っすよね」
(^ω^)「ああ。もう15歳くらいかな」
( ・∀・)「強え!俺も先輩みたいに長生きしたいっス!!」
(^ω^)「おう。よく光合成し、よく水を吸えよ」
( ・∀・)「うっす!」
「……あの~」
(^ω^)「?なんだお?誰か居るのか?」
「ここです。ここ」
( ・∀・)「どこだよ」
「隣の芝です。最近ここまで飛んできたタンポポなんですが……」
( ・∀・)「お、新入りか。なんだまだ若葉じゃねぇか」
「は……はぁ」
(^ω^)「なんだなんだ。モヤシみてぇな茎しやがって」
「いや俺タンポポだし」




