プロローグ
19××年7月
北・北海道大会3回戦
●美徳館学園 VS 青春台高校
スコアボード
///|1|2|3|4|5|6|7|8|9|計
美徳館|0|3|2|0|2|0|0|3|4|14
青春台|0|0|0|0|1|0|0|3| |4
誰が見ても勝敗の行方は明らかだった。
九回表を終わって14対4の10点差。反撃のチャンスも九回裏を残すのみ。
青春台高校の勝ち目は99%…いや100%ないに等しい。
八回裏までに4点を取り返したものの、それは全て4番・高藤のホームラン。
まさに風前の灯。
五回表を終わった時点で、すでに7点差。
その5回裏に、かろうじて一矢を報いたのが高藤の一発。
だがソロホームランのため、点差は1点縮まったのみ。
そして6点差のまま八回に突入するが、美徳館が更に3点の追加点。
絶望的な9点差になり、まさにコールド負けのピンチ。
それでもその裏、意地の攻撃が始まる。
青春台はやや疲れの見え始めた美徳館の先発ピッチャー・北条を攻める。
ランナーを二人出したところで高藤の3ランが飛び出て再び6点差。
コールド負けの屈辱だけは免れた。
だが、青春台のエース・一橋もついに九回表に力尽き、ダメ押しの4点を奪われ、この試合最大の10点差で九回裏を迎えることになった。
更に、とどめを刺すと言わんばかりに、美徳館学園はここでエース・羽柴を投入。
完璧な必勝態勢。誰もがそう思った。
この物語は、ミラクルを信じて最後まで戦った、青春台高校野球部員の9回裏の攻撃だけにスポットを当てた逸話である。
(続く)