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穴掘り爺さん

作者: 熊宏人

 近所に穴を掘り続けていることで有名な穴掘り爺さんという人がいた。私はかつてその爺さんに質問したことがあった。

「どうして穴を掘っているのですか?」

 掘る手を止めた穴掘り爺さんは土で茶色く汚れていた。

「穴を掘ることが自分の使命のような気がするからさ」

「何かが埋まっているのですか?」

「さあ、わからない。何かが埋まっているかもしれないし、何も埋まっていないかもしれない。でもそんなことは関係ないんだ。掘らなきゃいけないと感じるから掘るんだよ」

 穴掘り爺さんは私にそう答えると再び穴を掘り始めた。

 数年後、穴掘り爺さんは穴を掘ることをやめていた。

「どうして穴を掘ることをやめたのですか?」

「穴掘りから逃げたかったのさ。今は穴掘りとは別のことをしているよ」

 それからまた数年後、再び彼に会うと穴を掘っていた。

「どうしてまた穴を掘っているのですか?」

「気づいたんだよ。やっぱり私には穴掘りしかないとね。穴掘りが私の人生なんだ」

 その後毎日穴を掘り続けた爺さんだったが、ある日穴の中で倒れているところを発見された。穴掘り爺さんは病気で亡くなっていたのだ。

 穴掘り爺さんは遺書を残していた。非常に長い遺書だった。数百枚の紙に紐を通した束が一つあった。その遺書には、

「私はついに見つけた。穴掘りの先に私が生まれた意味があったとは。もう満足だ。いつ死んでもいい」

 と書いてあった。

 私はページをめくり遺書に目を通した。そしてそれに書かれていることを実際にやった。すると途端に私は生きているのがつまらなくなった。生まれた意味を知って満足してしまったのだ。

「これを読まなければ、私はもっと長生きしただろうに」

 ぶら下げたロープに首を入れ椅子を蹴ると——

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