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僕達は指で話し合おう  作者: 憲十
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第2戦 新たなる誕生

どうも、憲十です。

最近たこ焼きに目覚めました。

美味しいですね、アレ。

それはそうと今回で2話目です。

登場人物の名前が多く出てくるのですが、作品の性質上入れ替わりが激しいので混乱しないように設定集でも作ろうと思っております。

-大丈夫。君は僕が守るから、安心して。-


尚登がかけてくれた言葉。正直、そんな言葉だけでは安心出来ないのが本心だ。

だが、ここで尚登を信用しないのも自分を守ると誓ってくれた尚登の好意を踏みにじるようだったし、現状頼れる人がこの人しかいないので一応の信頼を置くことに決める。

一つ手前を歩く尚登の背中を見つめる。彼の背中は自信に満ち溢れてて、数々の戦闘を潜り抜けてきた威厳を醸し出していた。

「あ、あのっ。」

黙っているのもいけないと思い、声をかける。

「どうしたのかい?緊張がほぐれる魔法でもかけてあげようか?」

「あ、いや、大丈夫です。その…。」

「あぁ、尚登でいいよ。で?」

「分かりました。尚登さんのチームのメンバーはどんな人達なんですか?」

「正確にはチームじゃなくて戦闘群なんだけどね、まぁいいよ。メンバーに関してはもうすぐ分かるはずさ。多分もうみんな、北海道本部へ行くためのエアキャラバンに乗っているはずさ。そこで紹介しよう。」

「わ、分かりました。」

どうやらエアキャラバンなる乗り物があるらしい。北海道本部へ行くためのってことは空を飛ぶ移動用の乗り物なのかな?

そんな考えを巡らせていると

「さぁ、着いたよ。ここがエアキャラバンターミナルだ。各本部には必ずある施設だよ。これから、ここの東京本部から北海道本部までひとっ飛びするからね、気を引き締めていこう。」

そういうと尚登はスタスタと38の看板が付いた搭乗口へ向かう。そして控え室らしき部屋には入らず、そのままエアキャラバンへ乗り込む。

エアキャラバンの見た目はヘリコプターに車を合わせたような感じだ。中は予想以上に広い。

「遅れてすまない。新人君のエスコートをしてきた。」

「よ、よろしくお願いします。新入りの望月武士です。まだ何も分かっていませんが、よろしくお願いします。」

その瞬間、メンバーの視線が僕に集まる。

最初に長身で細身の男が口を開く。

「よろしく、長崎悠人だ。スナイパーをやっている。バックアップは任せてくれ。」

すると今度は長い髪を三つ編みにした女が続ける。

「私は青山飛鳥、衛生兵よ。前線には出ないけど後衛から支援するわ、よろしく。」

最後に運転席に腰掛けた小柄な男が話しかけてくる。

「小暮大翔、メカニックだ。戦闘にはほとんど関わらないけど一応メンバーだ、覚えておいてくれ。」

「よし、一通り自己紹介は終わったな。時間が惜しいから移動しながら戦闘について説明する。大翔、出してくれ。」

「了解。第38戦闘群、出発。目的地、北海道本部戦線。戦闘目標、ロシア軍からの防衛戦。エアキャラバン、発進!」

機体がふわっと浮いたかと思うと一気に高度が上がる感覚が体に伝わる。

「さて!戦闘についてだが、今回は防衛戦だ。北海道本部を制圧されたらこちらの負け、逆に撤退させたらこちらの勝ち、と言えるかな。んで、新人君の使う獲物はこれ。」

そういうとハンドガンと長モノを一つずつ出してくる。

「これらはどっちも日本軍公式の銃。ハンドガンの方は『椿』で、長モノの方は『村雨』だよ。」

「な、なんだかどっちも日本刀みたいな名前ですね…。」

「確かにね。でも、戦闘で刀を使うのは相当極めている人くらいだから、銃に日本刀みたいな名前をつけても大丈夫ってことになったらしいよ。」

適当だな…

「よし、それじゃあ作戦を確認しよう。僕と新人君で前線を張って遊撃、悠人が狙撃で援護、飛鳥はヒールダーツや支援能力で後衛を、そして大翔はエアキャラバンでバックアップを頼む。」

なるほど、的確な作戦だな。だが…

「少し待ってください。ヒールダーツと支援能力ってなんですか?」

「あ、説明してなかったね。ヒールダーツってのは衛生兵が基本的に扱うもので、遠距離から傷の自己再生の促進をしたり解毒などが出来るものさ。だけどヒールダーツを撃ち出すヒールガンの扱いは難しくてね、適正相性が低いと撃ち出すヒールダーツの効果も薄まったりするんだ。その点、飛鳥は優秀な衛生兵だよ。」

と、いうと飛鳥は少し照れたのか顔を俯かせる。

「べ、別にそこまで凄いって訳じゃないよ。私は人と戦うのが怖いからみんなに任せているだけだよ。」

「そんなことないよ。飛鳥のおかげでみんな生き残ってる、ありがとう。」

尚登が言うと、いよいよ飛鳥の顔は真っ赤になってしまった。尚登は天然たらしタイプなのだと密かに思う。

「それと、能力についてだね。能力っていうのはこのウォーエリアに来た時から備わっている力のことを言うんだ。能力は人それぞれで、身体能力を強化するものから強力な攻撃を繰り出すもの、味方を支援するものなど色々ある。だけど全員が能力を持っている訳ではなく、能力を持っていない人も多い。うちの戦闘群では僕、それから飛鳥が能力者だね。」

能力…そんなものもあるのか。味方にいたら有利だが、敵にいたら相当厄介になりそうだ。

「あの、どうやったら自分に能力があるか分かるんですか?」

「うーん、僕と飛鳥の場合はここに来る前に研究者のような男に会ったんだけど、そいつからお前には能力がある、って言われたから分かったって感じかな。新人君は何か言われた?」

「い、いえ…何も。」

と、言うことは自分は何も力は無い、ということだ。

「大丈夫だよ。能力が無くても悠人みたいに腕利きならば活躍出来る。これからの努力次第さ。」

能力が無いならば、能力が無いなりに努力するべき、ということか。間違ってはいないが…、なんというか、持つものと持たざるものの違いというものが顕著に出てきて、それも生き残りに関係してくるのでは無いかと考えると背筋が凍る。

「それじゃ、一通り説明し終わったね。そろそろ着く頃合いだし、戦闘準備を開始しよう。もう前線では戦闘が始まっているはずだ。」

尚登がそう言うと、みんなは防弾のチョッキのようなものを着込み、各々の獲物を手にし始める。僕も見よう見まねで服を着て、貰った銃を手にする。ガンマニアであった為、銃の撃ち方や扱いは理解している。

「目的地、北海道本部到着。2時の方向で戦闘が開始されている模様。戦闘中の戦闘群、39と40と41、敵兵の数は約12個戦闘群の模様。」

「おぉ〜派手にやってるね。今回は敵にロシア軍の有力な能力者であるアンドレイ・ドヴラーコフ、通称『雪原の覇者』と呼ばれている怪物がいるんだ。彼の能力はあまり公表されていなくてね、対策の取りようが無く、無残にやられてしまうらしいんだ。彼の獲物の特徴は腰に下げた小刀だ。目立った武器はこれくらいしかないのに異常な強さを誇っている。奴とコンタクトした場合は無理せず逃げるか僕を呼んでくれ。」

「「「了解しました」」」



遠くで爆音が響く。すぐそばを鉛玉が飛んでいく。

まさに、そこは戦場であった。



「くそっ!負傷したやつが出た!衛生兵!早く援護を!!」

「敵の弾幕が突破できない!狙撃手!何人か落とせないのか!?」

「もう少し粘れ!41戦闘群を応援に呼んでいる!」



北海道戦線は予想以上の押され方をしていた。一方的とも思えるような攻撃に日本軍は後退を強いられている。このまま行けば1時間も持たないだろう。

そんな中、僕は尚登と最前線にいた。

「流れ弾に気を付けてね。頭を出すときは気をつけるんだよ。」

何故かこの人はのんびりしている。ただでさえ余裕がないのにこんなにもゆったりしていられるものだろうか?

「さて、もうここには38戦闘群は誰もいないね…みんな後衛とかバックアップだからね。」

そう言うと尚登の目つきが変わる。

「あのさぁ、新人。お前なんて戦闘もまともに出来ない屑なんだからさ、特攻してきて1人くらい刺し違えてこいよ。俺はその間に周りの奴を殺してやるからさ、お前の死は無駄にはしないぜ?」

えっ…何を言っているんだろう…

「な、尚登さん?」

すると尚登は僕のこめかみに椿の銃口を押し付けて


「早く行けよ、ノロマの屑が。」


その瞬間、僕ははっきり感じた。

恐怖を。

今まで見ていた尚登はなんだったのか?

ここで僕の命を握っている尚登は誰なのか?

どれが本物で偽物なのか?

分からない

ただ、怖い。

死にたくない。

「お前に言ってきた御託は全部嘘だよ。新兵は新兵らしく俺らの足手まといにならないようにせいぜい特攻して来いって言ってるんだよ。どーせ銃撃っても当たらないんだしさ、早く行けよ!」

特攻をしろと強要してくる尚登。

行かないと殺される。この人の目は本物だ。

だが特攻してもどうせ殺される。

足が動かない。苦しい。息が出来ない。

だが僕は本能的に敵陣に向かって走り出していた。

死ぬ。

殺される。

嫌だ。

こんな、誰にも悲しまれない様な死に方で尽き果てるのか?

嫌だ

嫌だ

嫌だ!!

「ああああああああああ!!!」

精一杯走る。

そしてどのくらい走っただろう、僕の疾走は大きな塊にぶつかることで止められた。

「む?日本兵か、貴様」

そこにいたのは、情報に聞いた通りの大柄な男、『雪原の覇者』であった。

まずい、殺される!そう思ったが彼は不敵に笑うと

「ハッハッハ!ここまで被弾せずに突っ込んできた奴は初めて見た!相当運が良いのだろうな!気に入ったぞ。」

何故か彼は、敵兵であるはずの自分をすぐには殺さなかった。

「お前、新兵だろう?覇気が全くない。力も弱っちかったしな。だが、その瞳。」

そういうと僕の目をぐっと覗き込んで

「きっと死にたくないって強く念じて、そしてここまで来たんだろう?お前に宿ったその気持ち、忘れるなよ。」

そう言うとニカッと笑った。

「あの、何故僕を殺さないんですか?」

「なんだ?殺してほしいのか、クソガキ」

「いや、そうじゃなくて…僕は敵兵なのに…普通ならここでサクッと殺るはずじゃ…」

「俺はお前の目を見て確信した。こいつは強くなる。そして、いつか俺を殺しにくる。だからそれまでは生かしておいてやるよ。」

これが強者の余裕というやつだろうか。

絶対的な自分の強さに自信があるからこそ、自分を打ち破る者の登場に期待する。

僕とは真逆だ。僕は、いつも弱者だった。

いつか僕も、彼のような強さを手に入れることができるのだろうか?

「よし、それじゃ攻略に戻るか。おい、お前。名前はなんて言うんだ?」

「も、望月武士です。」

「そうか、タケシ!お前はまだ踏ん切りがついてないみたいだからな。ちょこっと現実を見せてやるよ。」

そういうと狙撃手のような男が近付いてくる。

「ルーク、そいつに俺の視界を貸してやれ」

そういうと僕の脳に自分の視界だけでなく、もう一つの視界の情報が送り込まれる。

「うちの狙撃手の能力、『レンタルアイズ』だ。視覚を共有することが出来るという使いどころによっては便利な能力だ。さて、俺はこれからホッカイドーの本部を制圧する。見方が殺されていく絶望を見ながら、自分が生き残り、強くなるという覚悟を決めるんだな。」

そう言い残すと物凄い速さで前線へ向かっていく。もう一つの視界は、目を閉じても鮮明に情報を伝えてくる。

まず見えたのは尚登の姿。必死に銃を構えているが視界が曇ったと思ったその刹那、銃が真っ二つに切断される。そして手元の小刀が伸びたかと思うと何かを叫んでいると思われる尚登の首を刈り取った。

あまりにも早かった。そして残酷で、どこか儚く、美しかった。

飛び散る鮮血が土で汚れた雪を朱に染める。

そして同じ様に後ろで構えていた悠人の腹を斬り捨てる。

怯えていた飛鳥の胸を貫き、大翔の待機しているエアキャラバンを手榴弾で木っ端微塵に吹き飛ばす。

その一連の作業は3分もかからなかっただろう。第38戦闘群はたった1人の能力者に滅ぼされたのである。


その覇者の顔は、笑っていた。


そして、僕は確信した。

こいつは、楽しんでいる。

死ぬことに怯えて、生きることに恐怖して、なんでこんな理不尽を受けなくてはいけないんだろうとずっと考えていた。

だが、違う。

そんな理不尽さえも生きる力に変えて、この世界を楽しんでいる。

だったら、変わってやろう。

俺は、こいつを超えて強くなる。


そうしてこの世界での俺が

産声をあげた。


「ぐっ、大丈夫か!?望月!」

その声と共に敵陣に現れたのはなんと、尚登と険悪な関係であったあの高嶺であった。

彼は肩に被弾している様子で血を垂れ流している。

「生きていやがったな!よし、撤退するぞ!閃光弾を使うから目を閉じろ!」

そうして俺を掴むと閃光弾を弾けさせた刹那、近くに止めてあったエアキャラバンまで走りこみ、すぐに出発する。

そうして俺と高嶺さんは戦場から生き残った。

だが、今回の戦いで出動した兵士のうち、生き残ったのは…

…たったの3人だけであった。

それだけでなく北海道は虚しく、ロシアに占領されてしまったのであった。

お読みいただきありがとうございます。

ここら辺はあまり大切でないので少し駆け足になってしまうのですがどうかご愛嬌を…。

もう少ししたら加筆なども考えておりますので今しばらくお待ちください。

さて、2話を読んでもらった時に一部の人は明らかに「ん?」と感じる部分があったと思います(気付いてない方はぜひ探してみてください)。その部分は誤植という訳ではなく意図的なもので、今後も多用する事となる予定ですので注目して読んでいただけると面白く読めるのではないかと思います。

それでは長くなってしまいましたが、また次話でお会いしましょう。

ご意見、ご感想お待ちしております。

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